講座詳細
王家の霊廟、ロイヤル・モザリアム
ハワイの主要な王族53人が眠るヌウアヌの聖地
- カメハメハ大王とルナリロ王を除くハワイ王国の全君主が埋葬されている
- 主要な王族、そしてカメハメハ大王の参謀だったヨーロッパ人を含め53人がここに眠る
ホノルル港を見下ろすヌウアヌの高台に、ハワイ王家の霊廟、ロイヤル・モザリアムがあります。
ほかの旧跡に比べ知名度こそ低いかもしれませんが、カメハメハ2世~5世、エマ女王やカラカウア王、リリウオカラニ女王、カイウラニ王女など、実に53人の王族が埋葬された、ハワイの人々にとって大変神聖な場所がここ。王国の名残りともいえる、ハワイ指折りの重要な史跡といえるでしょう。
霊廟はハワイ王国時代の1865年、カメハメハ4世の治世に建設されたものです。王家の霊廟としては元々、ホノルル・ダウンタウンのイオラニ宮殿内に小さな墓所がありました。そこにはカメハメハ2世など21人の王族の亡骸が安置されていたのですが、カメハメハ4世&エマ女王の愛息、アルバート王子がわずか4歳で亡くなった1862年、その墓所が満杯で王子を埋葬するスペースがないとわかった時、4世とエマ女王は、王族のための新たな霊廟建設を計画しました。
カメハメハ王朝の墓碑
ところが、カメハメハ4世は霊廟完成前に逝去。奇しくも4世自身とアルバート王子が、ほかの王族に先駆けて新霊廟に埋葬されることになりました。わずか27歳で未亡人となったエマ女王は、2人の埋葬後、1か月間、霊廟横で野営しながら喪に服したそうです。
イオラニ宮殿の敷地にあった旧霊廟から王族の亡骸が新霊廟に移されたのは、1865年11月。現在は礼拝堂となっている建物が、当初は霊廟として使われていました。その後、手狭になったため、同じ敷地内に今度はカメハメハ王朝、カラカウア王朝と分けて墓所が造られることに。現在はパウアヒ王女と夫チャールズ・ビショップの墓所、カメハメハ一族の参謀だったジョン・ヤング(妻は王族でエマ女王はその孫)、ロバート・ウィリーの墓所も加えられ、敷地内に計5つの墓所&墓碑があります。
それぞれの墓碑の下の地下室に遺体が安置されていますが、今ではカラカウア王朝を除き地下に降りる階段は埋められ、墓所は永遠に閉ざされた状態です。カラカウア王朝の墓所だけは出入り可能とはいえ、一般人は入場禁止。フェンスの外からお参りすることになります。
霊廟への門。王国の紋章も飾られている
以上のように、歴史的・文化的・霊的価値が大変高い王家の霊廟です。そのため1898年にハワイがアメリカに併合され準州になった際には、ハワイ王国最後の女王、リリウオカラニ女王と、やはり王族の血筋でハワイ準州初の連邦議員だったロバート・ウィルコックが、アメリカ合衆国議会に請願。土地に関連するいかなる連邦法からも霊廟の敷地を守り、未来永劫、王族の霊廟とすることを保証してほしいと要請しました。
その陳情は聞き入られ、しかもここでは(州旗を掲げる際は必ずアメリカ国旗も掲げるという決まりからも除外し)ハワイ州旗だけを掲揚してよい、という特別許可も得ています。アメリカ政府も、ハワイの王族に敬意を示していることの現われでしょう。
現在、霊廟は週日、一般に公開されており、ふだんは施錠されている礼拝堂も霊廟の管理者、ウィリアム・マイオホさんに頼めば内部の見学が可能です(ちなみにマイオホさん自身もカメハメハ王朝の末裔です)。
また主な王族の誕生日にはここでセレモニーが行われるほか、毎年5月2日には、前日のレイデー・コンテストに出展されたレイを王族に捧げるセレモニーも開催。王族のセレモニーは、9月2日のリリウオカラニ女王、10月16日のカイウラニ王女、11月16日のカラカウア王、12月31日のカピオラニ王妃の誕生日など9回催されます。どうぞ敬意を持って王家の霊廟を訪れ、王朝の残り香を感じてみてください。
ロイヤル・モザリアム
所在地:2261 Nuuanu Avenue, Honolulu
電話番号:808-587-2590
開場時間:月曜~金曜の8時~16時
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森出 じゅんJun Moride担当講師
【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex