講座詳細
伝統植物とは
カヌーで運ばれた重要な植物は長い航海を経てハワイに根づいた
- 故郷の島からカヌーで運んだ暮らしに不可欠な植物をカヌープランツ、または伝統植物という。
- これらの植物は生活を支える道具や素材としてきわめて重要だった。
- ここで紹介した以外にも、伝統植物とされる植物がいくつかある。
「関連資料」
『ハワイアン・ガーデン』『フラの花100』など(平凡社)近藤純夫著
◆伝統植物の定義
ハワイ独自の植物定義に「カヌープランツ」があります。6世紀から12世紀にかけてマルケサスやタヒチから移り住んだポリネシア人は、日常生活に不可欠なさまざまな物資をカヌーに積んで持ちこみました。これらの植物は、ハワイの伝統文化のなかで特別の意味を持つことから、単なる外来植物ではなく、カヌープランツとして別扱いします。先住のハワイ人たちは、未開の土地での暮らしに不可欠な素材や原料として、これらの植物を持ちこんだのです。これらの植物がハワイの伝統文化を支えたという観点から、ここでは伝統植物と呼ぶことにします。
コー(サトウキビ)Sumio Kondo
◆伝統植物の種類
暮らしを支える伝統植物は20数種が知られています。 ハウ、ミロ(アオイ科)、ノニ(アカネ科)、オヘ、コー(イネ科)、イプ(ウリ科)、カマニ(オトギリソウ科)、ワウケ、ウル(クワ科)、カヴァ(コショウ科)、アペ、カロ(サトイモ科)、アヴァプヒクアヒヴィ、オーレナ(ショウガ科)、ピア(タシロイモ科)、ククイ(トウダイグサ科)、マイア(バショウ科)、ウアラ(ヒルガオ科)、オーヒアアイ(フトモモ科)、アウフフ(マメ科)、コウ(ムラサキ科)、ニウ(ヤシ科)、ウヒ(ヤマノイモ科)、キー(リュウゼツラン科)などです。 以上の植物のなかには、カロ(タロイモ)やウアラ(サツマイモ)のように主食となったものをはじめ、ミロ(サキシマハマボウ)やハウ(オオハマボウ)のように薬剤やロープの素材となったもの、ククイ(ハワイアブラギリ)のように灯火や燃料、染料となったもの、ニウ(ココヤシ)やイプ(ヒョウタン)のように食器や楽器などになったものなど、伝統植物は暮らしの多くを支えました。現代人が無人島で暮らすときに必要であろう必需品の役割を、これら伝統植物は支えていたのです。
イプ(ヒョウタン)Sumio Kondo
◆植物に依存する社会
ハワイを含むポリネシアでは、陶器や金属などの文化は存在しませんでした。ごくわずかな例外として、マウナ・ケア山頂直下にある氷河の跡から硬く変質した岩石が採れたため、武器や工具が作られた程度です。ハワイの暮らしはほとんどのものが、伝統植物を中心とした植物から作り出されたのです。
カロ(タロイモ)の水田(ロイ)Sumio Kondo
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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