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所用時間5min
2015.10.11

ナウパカ

山のナウパカは、先祖である海のナウパカから進化して新しい種(しゅ)となった。

  • 半円形の花弁を持ち、海と山とに種分化した

ナウパカ・カハカイ
 ナウパカには海岸に生育するものと山間に生育するものと、2つの種類があります。ハワイには人が暮らす前から海岸のナウパカがありました。ナウパカ・カハカイ(海のナウパカ)は、半円形で幅広の花弁を持ち、白い実をつける灌木です。塩害に強く、たいていは砂防用として植えられます。熟した白色の果実(1cmほど)から採れる果汁は充血時の目薬として用いたり、髪を洗ったあとの香料として用いました。
 海のナウパカは、山のナウパカより花弁が広く滑らかで、葉は大きく柔らかく明るい色をしています。果実は、前者が白色なのに対し、後者は黒色をしています。海のナウパカの亜種にドワーフ・ナウパカ(矮小種のナウパカ)があり、こちらは10~20cmほどの高さしかなく、多肉系の葉を持ちます。

ナウパカ・カハカイ

ナウパカ・クアヒヴィ
 海のナウパカの一部が山間部に移って種分化したものをナウパカ・クアヒヴィ(山のナウパカ)と呼びます。海のナウパカはハワイ諸島を含む広範囲に分布していますが、山のナウパカはハワイ諸島にのみ生育するハワイ固有種です。島々でさらに特徴が分かれ、今日では7種が確認されています。花弁は海のナウパカよりも細身で黄味を帯びています。果実は腫れ物や打ち身の治療に用いました。いずれのナウパカも半円形の花の反対側からマイクロフォンのような花柱が伸び、虫がとまると背中がこの花柱に触れて、花粉を運んでもらう仕組みになっています。
 

伝承
 ナウパカには多くの伝承が残されています。昔、愛し合っていた若い男と女がいましたが、双方の親に結婚を反対されたため、ふたりとも命を絶ってしまいました。そして女は海のナウパカに、男は山のナウパカに姿を変えたのです。ふたつのナウパカの花の、半円の部分を合わせると雨が降るとされます。それは、再会を喜んだふたりの流す涙なのです。

ナウパカ・クアヒヴィ

海のナウパカ(クサトベラ科クサトベラ属)
ハワイ名:Naupaka Kahakai, Aupaka, Huahekili, Naupaka kai
学名:Scaevola sericea, S.taccada, S. glabra
英名:Beach Naupaka
和名:クサトベラ
原産地:世界の熱帯・亜熱帯地域
特徴:
1~3mの低木で、花のサイズは1.5~2.5cm、葉は5~20cm。山のナウパカに比べて大きく多肉質であるのが特徴。花は薄い紫の筋が入った白色で、花後に白い実をつける。ハワイでは1年を通じて花を咲かせるので、花と実の両方をつけている場合が多い。
 

山のナウパカ(クサトベラ科クサトベラ属)
ハワイ名:Naupaka Kuahiwi
学名:Scaevola chamissoniana, S. gaudichaudiana, S. gaudichaudii, S. kilaueae, S. mollis, S. procera, S. coriacea
英名:Mountain Naupaka
和名:なし
原産地:カウアイ島、オアフ島
特徴:
ビーチナウパカが山間部に移って種分化したもの。葉はより小さく固くなり、実は黒い。1.5~3.5mの低木で、花のサイズは1.2~2.0cm。香りがある。葉は9~14cmで、海のナウパカよりも小さく細い。

 

※イメージ画像は海岸に生育するナウパカ・カハカイです。

  • 近藤 純夫
    Sumio Kondo
    担当講師

    エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
    フェイスブック・サイト https://www.facebook.com/kondo.sumio
     

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