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パラパライ / パラアー
フラの女神に捧げられたシダ
- パラパライやパラアーは甘い香りが重視され、フラの祭壇に捧げられたり、フラの際の装飾として用いられました。
パラパライ
葉の色は明るい緑色ですが、青みを帯びた葉も見られます。茎の部分は赤黒く、それがパラパライの別名(パライ・ウラ)の由来になっています。レース状の丸みを帯びた葉の基部の、茎部分には繊毛が密生していて、外観の似ているパラアーとは、繊毛の有無で区別できます。
甘い香りで知られるシダですが、葉に鼻を近づけてもはっきりとした臭いはわからないでしょう。しかしパラパライの群生を歩くと、甘い香りが漂うことに気づくはずです。この香りは、フラの女神に捧げる植物として重要な役割を持っていて、パラパライもそのひとつして重要な役割を担い、女神ヒイアカに捧げられます。
パラパライはコバノイシカグマ科に属するシダで、和名の「カグマ」はシダの古い呼び名です。パライ・ヒナヒナ、パライ・ラー・アウなど、多くの亜種があります。いずれも名前の一部にパライが付きます。パラパライに似た外来のシダにも同じ名前がつけられることがあり、今日のハワイ諸島ではおよそ45種が知られています。
パラパライ
パラアー
葉はパラパライよりも複雑に分岐していて、レース編みのように細かな形状をしています。そのため、「刺繍のようなシダ」という別名があります。葉は淡緑色または緑色をしていて、パラパライよりも柔らかい点が特徴です。高所では気温が下がると紅葉することがあります。
ハワイでは、枯れて乾燥した葉に水を混ぜ、赤茶色の染料にしたものを、カパの染料としました。茹でたものは婦人病の治療に用いました。フラの儀式ではパラパライとともに、クーペエ(手首や足首に巻くレイ)やレイポー(頭に巻くレイ)などに用いました。
パラアー
パラパライ(コバノイシカグマ科フモトシダ属)
ハワイ名:Palapalai, Palai, Palai Ula
学名:Microlepia strigosa, M. setosa
英名:Lace Fern
和名:イシカグマ
原産地:ヒマラヤ~東南アジア~ポリネシア / 固有種(I)
特徴:
葉身のサイズは60~130cm。茎の断面は三角形に近い。日陰の湿った土地を好み、標高230~1830mの、冷涼で湿気の多い日陰に生育する。
パラアー(ホラシノブ科ホラシノブ属)
ハワイ名:Pala'ā, Palae, Palapala'āa, Pāʻū o
学名:Sphenomeris chinensis
英名:Lace Fern, Chinese creeping fern
和名:ホラシノブ
原産地:ポリネシア、東アジア / 固有種(I)
特徴:
葉身は約30cmで細長い。山中で見られるシダのひとつで、日当たりの良い乾燥した場所を好む。胞子嚢は葉の先端部につく。
※トップのイメージ画像は、パラパライの葉裏と、胞子嚢です。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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