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外来植物とは
ハワイに移り住んだ人たちはさまざまな植物を持ちこんだ
- ハワイのイメージを形づくる花の多くは外来の植物。そのなかには在来の自然を破壊する有害なものもある。
- 外来植物ではあっても、先住のハワイ人たちが持ちこんだ植物は「伝統植物」として区別する。
◆在来植物への脅威
ハワイの植物イメージといえば、ハイビスカス、プルメリア、ブーゲンビレアなどが思い浮かぶことでしょう。しかし、これらはいずれも外来の植物です。
18世紀初頭から今日に至るまで、ハワイ諸島には2万を超える外来種が持ち込まれました。これに対してハワイ固有の植物は1000種ほどにすぎません。したがって今日、私たちが都会やその周辺地域で目にする植物の大半は外来の植物なのです。
外来種のなかには繁殖力がとても強く、在来の自然を駆逐するものも少なくありません。タケやカヒリジンジャー、ストロベリーグァバ、ランタナ、ハリエニシダなどがハワイ諸島各地で分布域を広げた結果、在来の植物は絶滅したり絶滅の危機に陥ったりしました。
美しさと香りの良さで高い人気を持つプルメリア
◆外来植物の役割
外来の植物は、美しく香り豊かな観賞用を中心に、果樹、食糧、建材、街路樹など、社会に有用な植物も少なくありません。とくに観賞用の植物についてはリゾート地を美しく飾り立てるために欠かせないものとなっています。
ハイビスカスやプルメリア、ブーゲンビレアの他にも、ピカケやティアレ、ゴールデンシャワーツリー、ホワイトジンジャー、ジャカランダなど、花色の鮮やかさや美しさだけでなく、香りも秀でた植物は数多くあり、住宅の庭や庭園、街路に植えられています。
プルメリアはラオス、 ピカケはフィリピンやインドネシア、ティアレはタヒチ、ゴールデンシャワーツリーはタイ、ジャカランダはアルゼンチンの国花でもあります。ハワイの景観を形づくるこれらの外来植物の多くは、この地に移り住んだ人たちの母国に対する想いが込められていると言 えるでしょう。
赤い苞(ほう)を持つブーゲンビレア。この他にもさまざまな色合いがある
◆外来植物のコントロール
繁殖力が弱ければ在来の自然に悪影響を与えることはありませんが、強ければ景観を一変させます。外来植物のなかには在来の植物を駆逐してしまう有害な植物がいくつもあります。そのため、ハワイ州ではそのような植物を有害指定し、法律を施行して排除に努めています。しかし原生自然を破壊するスピードは速く、対応が追いついていないのが現状です。
※先住のハワイ人たちが持ちこんだ植物も外来の植物ですが、これらについては「伝統植物」の項をご覧ください。
春の訪れを知らせるジャカランダ
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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