講座詳細
絶滅種と絶滅危惧種(植物)
外来種の洪水は固有種を押し流す
- ハワイの固有植物は、その多くが外来植物の侵入で個体数を減らし、その一部は絶滅してしまいまいました。
絶滅してしまった在来の植物
ハワイ諸島に人が住み着くまでの数百万年間、動植物はきわめて安定した環境のなかで生育してきたことを「脅威に晒されるハワイの植物」でお伝えしました。安定した環境においては、動物は移動距離を減らし、余分なエネルギーを使わないようにするため、特定の場所にある特定の植物に依存するようになります。さらには花の形に合わせてクチバシが進化したりしました。その結果、在来の動物と植物は互いを必要不可欠な存在としてきたのです。何らかの問題が生じ、その一方が減少したり姿を消してしまうと、他方も減少したり姿を消すことになります。大陸の動植物に較べ、柔軟性を欠いた環境が構築されたということです。
ひとたび生態系のバランスが崩れると、力の弱い在来の植物は次々と姿を消していきました。絶滅してしまった植物は過去に留まりません。今日でも、この世から姿を消す植物は後を絶ちません。
マノア演習林にある絶滅危惧種の管理研究所
近年に絶滅した植物
アキランテス・アトレンシス(Achyranthes Atollensis)
ヒユ科イノコズチ属の仲間で、近縁に写真のエヴァ・ヒナヒナ(Achyranthes splendens var. rotundata)があります。海岸に自生する多年草で、最後に確認されたのは1964年。絶滅の原因は生育地の喪失と外来植物や外来動物の侵入によるものとされています。
エヴァ・ヒナヒナ(Achyranthes splendens var. rotundata)
ヒビスカデルフス・ボンビキヌス(Hibiscadelphus Bombycinus)
ヒビスカデルフス・ボンビキヌスはアオイ科のヒビスカデルフス属のひとつで、ハワイ島のコハラ半島にあるカヴァイハエの森に生息していました。しかし、1998年に最後の株を確認した後、消滅しました。近縁に写真のハウ・クアヒヴィ(hibiscadelphus distans)があります。
ハウ・クアヒヴィ(hibiscadelphus distans)
以上の他にも、ハウ・ヘレ・ウラの近縁で1888年に姿を消したアオイ科のコキア・ランケオラータ(Kokia Lanceolata)や、1919年に絶滅したモキハナの近縁のメリコペ・ハレアカラエ(Melicope Haleakalae)など、19世紀から20世紀にかけてもなお、数多くの固有植物が絶滅しています。
ハウ・ヘレ・ウラ(Kokia Drynarioides)
絶滅種からの復活
絶滅種と認定されるには一定期間を置き、なお再発見がない場合という前提があるのですが、それでも稀に「再発見」されることがあります。ハワイ島カイルア・コナでは、絶滅したと思われたオハ・ワイ(Clermontia peleana)という植物が再発見されました。
関係当局によれば、オハ・ワイは世界でもっともレアな植物のひとつだということです。この植物は1994年に絶滅したとされましたが、2011年にノース・コハラの森のなかで発見されました。オハ・ワイの成木30株と何株かの実生(小さな株)が見つかったのです。写真は近縁のオハ・ヴァイ・ヌイ(clermontia fauriei)です。
オハ・ヴァイ・ヌイ(clermontia fauriei)
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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