講座詳細
マーガレット・マシャード
ハワイの癒しの秘儀、ロミロミを世に広めたロミロミ・マスター
- ハワイアン以外にロミロミの秘儀を伝えたのは、アンティ・マーガレットが初めて。
- 今日のロミロミ施術者の多くが、アンティ・マーガレットの弟子、孫弟子に当たる。
身体と心、魂を癒すハワイ伝統のマッサージ、ロミロミ。古代ハワイではカフナ・ロミロミ(ロミロミを専門とする施術師)に選ばれた一部の弟子にだけ伝授される秘術、もしくは先祖代々、家ごとに継承される秘術とみなされていました。つまりハワイアンだけが知ることのできる、ヒーリングの奥義だったわけです。
そのロミロミが、今日のように人種を問わずハワイ中に、さらには日本をはじめ世界中に広まったのは、ロミロミ・マスター、マーガレット・マシャードの功績です。アンティ・マーガレットは93歳で亡くなる2009年まで、一族に批判を受けながらもロミロミの秘術を広め続けました。現在ハワイ内外のロミロミ施術師の多くが、アンティ・マーガレットの弟子、孫弟子とされています。
アンティ・マーガレットは1916年、オアフ島で出生。カフナ・ロミロミの家系に生まれましたが早くに両親を亡くし、キリスト教宣教師の家庭で成長しました。ですがハワイ島在住の祖父からヒーラーとしての後継者に指名され、西洋の教育とハワイ古来の伝統とのバランスを保ちながら、医療の道を歩くことになります。
高校卒業後、まずはホノルルの聖フランシス病院に看護婦として勤めながら、叔母からロミロミの技術を習得したアンティ・マーガレット。ロミロミ施術師としては初めて、1965年にハワイ州からマッサージ師免許を取得し、1970年代にハワイ島コナでロミロミの学校を設立しました。
なにせ数世紀にわたりハワイアン社会の外に出ることはなかったロミロミの秘術です。批判的な声も強かったようですが、アンティ・マーガレットは真摯に教えを請うものには、人種・国籍に関わらず門戸を開き続けました。亡くなるまで40年近くに育てた施術師は数えきれません。
ハワイアン以外にロミロミを教えることについて、アンティ・マーガレットが信条を曲げなかった背景には、西洋の教育の影響もあったよう。キリスト教徒として育ち、ハワイの伝統を大切にしながらも分かちあいの精神を強く持っていたことが、その理由の1つと言われています。
ロミロミはハワイのスピリチュアリティの象徴だ
(Photo Courtesy of HTA, Tor Johnson)
同じく西洋の教育の影響で、解剖学など西洋医学の知識も施術に生かしていたアンティ・マーガレットは、一方、ロミロミを教える上ではその精神性を何よりも強調していました。たとえば地元紙「ホノルル・アドバタイザー」の2009年の記事中で、娘のネリタは以下のように語っています。
「ロミロミとは愛とともに身体をタッチする施術。もしあなたの手が優しく愛に溢れていれば、患者は施術者の真心や、施術者を通じて身体に流れこむ神の愛を感じるはず。アンティ・マーガレットは生徒にいつもそう言って励ましたものでした」
この神の愛というのは、ハワイで一般にマナと呼ばれる神の力、霊的なパワーを意味すると解釈してよいでしょう。マッサージの型にとどまらず、ロミロミの神秘性という真髄を後世に伝えたアンティ・マーガレットの功績の大きさは、はかりしれません。1986年には、「ハワイの人間国宝」の称号も授与されています。
アンティ・マーガレットのお陰で、今ではハワイ各地にあるロミロミ専門サロンだけでなく、リゾートホテル内のスパ・メニューにも、必ずロミロミ・マッサージが含まれています。楽園ハワイの癒しの秘儀を、ぜひ体験してみてください。
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森出 じゅんJun Moride担当講師
【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex