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2015.05.15

ペレ神話1「ペレの旅路」「オヒアレフアの伝説」

火山の女神ペレはカヒキで生まれ、ハワイ島キラウエア火山に住みついた

  • 火山の女神ペレはカヒキ生まれ
  • 故郷を追われ、ハワイ諸島を巡ってハワイ島キラウエア火山に落ち着いた
  • オヒアレフアの木&花はペレの滅ぼした恋人達の化身

「ペレの旅路」
火山の女神ペレはハワイ生まれではなく、もとはカヒキからハワイに渡ってきたそうです。女神ハウメアの太腿から生まれ、その父の名はモエモエともカネホアラニともされています。
 

カヒキはしばしばタヒチと訳されますが、本来は「海の彼方」「海外」を意味するハワイ語です。古代のチャントでは、タヒチのほかマルケサス諸島やサモアを指していることも。
 

なのでペレの故郷についてはタヒチに限定せず、「ハワイ外からやってきた女神」と解釈するのが正解でしょう(天上の島から来たとする伝説もあります)。以下が、ペレがハワイに終いの棲家を見つけるまでの物語です。

女神ペレが住むとされるキラウエア火山ハレマウマウ火口

…昔々のその昔。ペレは兄で鮫の神であるカモホアリイなど、兄弟や姉妹を引き連れて、カヒキを出立しました。なぜカヒキを離れたかについては諸説があり、一説によると姉で海の女神のナマカオカハイの夫を誘惑したためとか。そのためナマカオカハイと仲違いし、カヒキを追われたのだそうです。
 

一行は最初にハワイ諸島最北の島に到達しました。ペレは住居として、永遠の炎を燃やし続けるための深い穴が必要です。そのため、ハワイ北西諸島からニイハウ島、カウアイ島、オアフ島、モロカイ島、カホオラヴェ島、マウイ島と島々を巡り、穴を掘り続けました。
 

ですが姉のナマカオカハイがペレを執拗に追いかけたので、せっかく掘った穴も、海水で満たされてしまうのでした。
 

こうしてペレが掘ったという巨大な穴が各島にあり、オアフ島のダイヤモンドヘッドやパンチボウル、マウイ島のハレアカラ火山の火口もその名残り。ペレが巡ったという伝説の地が各島に残っているのは、そんな理由からです。

やがてマウイ島ハナまでやって来ると、ついにペレとナマカオカハイは激突。ナマカオカハイが勝利を収めました。ハナにあるカイヴィオペレの丘は、その時にズタズタにされたペレの遺体の跡なのだそうです。
 

ペレはこのようにマウイ島ハナで一度死んだのですが、その魂は身体を離れると、ハワイ島キラウエア火山にたどり着きました。キラウエア火山は海から遠く離れています。今度はナマカオカハイに掘った穴を水浸しにされることなく、無事、永遠の炎を燃やし続けることができました。
 

こうしてペレはキラウエア火山のハレマウマウ火口に、定着することに。ハレマウマウ火口は、ペレの終いの棲家なのです。

女神ペレとポリアフの戦いのシーン(ハーブ・カネ作。
キラウエア火山内ジャガーミュージアム内展示より)

「オヒアレフアの伝説」
乾ききった溶岩の上にも芽を出す、生命力溢れたオヒアレフアの木。ハワイ固有の植物で平地や森林地帯でも見られますが、火山地帯、特にハワイ島キラウエア火山周辺でたくさん見ることができます。一見、黒くごつごつした男性的な木なのですが、その花は真っ赤でそれは可憐。幹の部分とはあまりに印象が違う美しい花を咲かせます。その背景として、悲しい伝説が知られています。
 

昔々、オヒアというハンサムな男性とレフアという美女がいました。2人は仲のよい恋人同士でした。ところが女神ペレが、オヒアに横恋慕。長い黒髪の美しい女性となってオヒアの前に現れ誘惑しましたが、誠実なオヒアはペレに心を惑わされることはありませんでした。

そこでレフアに猛烈に嫉妬し、同時にオヒアへの怒りに燃えたペレ。火山の女神としての本性をむき出しにし、ある日、何の罪もない恋人達を焼き殺してしまいます。ところが一時の憤怒による浅はかな行いを周囲から責められ、ペレ自身も深く後悔する結果に。2人を生き返らせることはできませんが、その代わり、2人を1本の樹木に変化(へんげ)させることにしました。
 

こうしてたくましいオヒアは幹に、美しいレフアは花になり、1本の樹木として永遠に結ばれました。そう、オヒアレフアは、ペレが滅ぼした恋人達の化身なのです。
 

今でもキラウエア火山には、レフアの花を摘むと雨が降る…という言い伝えがあります。その雨は離れ離れにされた恋人達の、涙なのだそうです。

恋人達の化身、オヒアレフア

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  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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