講座詳細
島の誕生とその一生
削り取られる島々
誕生と消滅の生々流転
日本では小笠原諸島の西ノ島が噴火を続け、現在(2015年5月時点)も、島の面積を拡張し続けています。しかし、当初はほどなく消滅するだろうと見られてきました。たとえ直径が数百メートルに及んでも、波の浸食は強大で、溶岩の噴出が停止すれば、数年のうちに海面下に沈みます。ハワイ諸島もその例外ではありません。
島はなぜ削り取られるのか? ハワイ島のように次々と新しい溶岩が地上を上塗りするような場合は、島は海に向かって拡大を続けますが、直径数百メートル程度の小さな島は海食(波の力による浸食)で海岸が崩壊していきます。ハワイ諸島のようにある程度大きくなると、それほど簡単には削り取られませんが、溶岩は次第に風化し、岩から礫、砂、粘土と、風化によって次第に細かくなります。これらは雨や風、波によって次々削り取られるのです。たとえばカウアイ島のように、島全体が緑に覆われていても、浸食は避けようがありません。カホオラヴェ島のように土壌が露出している島では、さらに何倍も土砂が流出し続けます。
主要ハワイ諸島と北西ハワイ諸島
島の年齢と距離
ハワイ諸島は太平洋プレートに乗り、つねに移動を続けています。(※詳細は「4-1-1-1ハワイ諸島とプレートの移動」参照)たとえばハワイ島がこのまま移動を続けると、100万年ほどで地底から供給されていたマグマのパイプが切断されます。小さなパイプは、場合によってはその後さらに100~200万年ほど存在し続けますが、地上部の浸食の方が早く、島は縮小をはじめます。
マグマの供給を断たれた島は3000万年ほどで地上部が削り取られ、サンゴ環礁となります。その生き証人とも言えるのが、北西に2000km以上も離れたミッドウェーです。この島は海上に出現してからおよそ2800万年が経過しています。
ハワイ諸島はすべて単一のホットスポット(マグマ溜まり)が造り上げた島々です。太平洋プレートはつねに北西へ移動し続けるわけですから、遠くにある島ほど誕生からの時間(地質年代)は長く、ハワイ島は誕生してから50~60万年ほどなのに対し、カウアイ島は650万年ほど、北西ハワイ諸島の北西端にあるクレ環礁は3000万年ほど経過しています。
ハワイ島南東部の海岸に流れ出る溶岩
島の最後と新たな誕生
島はどのような最後を遂げるのでしょうか? ミッドウェー島やクレがサンゴ環礁であるということは、この島がほどなく海の底に消滅することを示しています。クレ環礁の最高地点は標高6mしかありません。サンゴが十分に発達する熱帯地域に位置する間は、これらの島もサンゴの増殖によって島の浸食をある程度食い止めることができましたが、温帯地域にある現在はそれほど増殖を望めません。浸食は勢いを増して進みます。
クレ環礁のさらに北西方面に島は見あたりませんが、海面下には天皇海山列の東南端にあたるハンコック海山があります。この海山の地質年代は約3300万年です。クレ環礁は今後100万年から200万年の間に海底に沈み、カムチャツカ半島へと続く天皇海山列に連なることになります。
そして、すべての北西ハワイ諸島はいずれもこの位置まで移動する頃にはサンゴ環礁となってその役目を終えることになります。その頃には主要ハワイは今日の北西ハワイ諸島に移動し、これまでの場所には新しい島々が出現していることでしょう。事実、ハワイ島南東の沖合35kmほどの海底下1000mほどのところには、ロイヒと名づけられた海底火山が活発な活動を続けています。
ハワイ島から見たマウイ島のハレアカラ
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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