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フリヘエ宮殿
ハワイ島カイルア・コナの海沿いに佇む王家の別荘
ハワイ島カイルア・コナにあるフリヘエ宮殿はハワイ州に存在する王家の3つの宮殿の一つで、その中で最初に建設されました。その次がクィーン・エマのサマーパレス、そしてイオラニ宮殿という順になります。
ハワイ島のカイルア・コナは当時、王国のアリイ達(首長)が好んで住居を建てたことで知られていました。この地に1838年に完成したのがフリヘエ宮殿です。
建築者はジョン・アダムス・クアキニであり、ハワイ島の首長で、またハワイ諸島を統一しハワイ王朝を作ったカメハメハ1世の従兄弟に当たります。
残念ながら、フリヘエ宮殿の築造工事に関する資料はほとんど残されてなく、確かな事は1837年に工事が開始され、まずは地下室を作った事、完成は1年後の1838年だったということが記録されているだけです。
下記の資料は、当時フリヘエ宮殿に訪れた人たちの記録に記されている宮殿の様子になります。
カイルア・コナの海岸に佇むフリヘエ宮殿
フリヘエ宮殿は石造りの2階建てで、両階とも3つの部屋があります。内装はマホガニーくらい上質とされるコア(ハワイの固有種)の木をふんだんに使用しています。当時のクアキニ首長によると、内装には多量のコアの木を使用したため、工事全額は建設費がそれほど高価ではなかったと述べたようです。
また、当時ハワイ諸島はサンドイッチ諸島と呼ばれていましたが、その中でも一番の建物であり、美しい柱廊玄関、コアの木の内装が豪華と言われているなど残されています。 根太や梁にはオヒアの木を使い、はめ板にはコアの堅木を使用しました。今では希少価値のあるコア材を使用している内装は豪華なものとなっています。
宮殿はクアキニの死後、養子のウィリアム・ピット・レレイオホクに受け継がれました。レレイオホクの死後は、妻であり、カメハメハ王朝の末裔ルース・ケエリコーラニ王女に引き継がれました。ルース王女は宮殿の裏に頑丈な草葺屋根の家を建て、寝室にしました。また当時は宮殿を王家の一族などがハワイ島に来たときの別荘として使用しました。
入り口を入ると貴重なコア材で作られた階段などが見事です。
2階の広間。カメハメハ王朝とカラカウア王朝の肖像画が飾ってあります。
フリヘエ宮殿の外観?ツアーの入り口
ルース王女がフリヘエ宮殿を管理している間、カメハメハ4世と妻エマ王妃はたびたび訪れました。宮殿内には家具も調度品も数少なかったため、エマ王 妃は写真、絵画、花瓶などを飾り、カメハメハ4世はホノルルからダイニングテーブル、椅子、ピアノ、ソファーなどを送りました。
ルース王女が亡くなったあと、宮殿はバーニース・パウアヒ・ビショップ王妃が財産を相続しましたが、後、以前は訪問者であったカラカウア王が1885年に宮殿を購入しました。
カラカウア王は購入後、宮殿の大きな改築工事に着手しました。
むき出しだった外壁が石壁だけではなく、宮殿内の塗装もされ、海側のラナイの部分も拡張、パビリオンを建築、炊事場などの配置を直したりと大掛かりな改装 工事となりました。世界外交を行った最初の王であったカラカウア王は、世界の文化の影響を受け、絨毯を敷いたり、日本式の湯のみを使ったり、サテンのクッ ション、ビクトリア調様式の装飾品などを取り入れ、豪華な王家の宮殿となりました。現在のフリヘエ宮殿はドーターズ・オブ・ハワイが引き継いでから備え付 けた外の階段以外は、カラカウア王の大改修のままの状態で保たれています。
宮殿の門に掛けられた王家の紋章
1891年カラカウア王が亡くなると、宮殿の相続は妻のカピオラニ王妃になりました。
カピオラニ王妃の死後は甥のデイビッド・カワーナナコア王子 とジョナ・クヒオ・カラニアナオレ王子に相続されました。二人は15年ほど宮殿の維持をしていましたが、ホノルルでの仕事や生活に忙しく、1914年にバ スシェバ・アレンに売られました。売却までには宮殿内の家具や調度品は処分されていたと言われています。その後1921年頃まで誰も住まない状態が続き、 宮殿は荒れ果て草木が茂るような状態になっていたようです。
そこで1924年にドーターズ・オブ・ハワイが宮殿を購入し、1927年から復興の 為の工事管理が始まりました。その頃のハワイは歴史的文化財の保存などには全く関心がないという状態でした。非営利団体ドーターズ・オブ・ハワイの努力に より、ハワイの貴重な教育機関となった博物館が維持され、カイルア・コナに広大な公共用海岸が保存されました。1953年には二度目の大きな改修工事が行 われたり、たびたびの地震による津波などの被害にあったりしましたが、1973年には国家歴史的保存物として指定されました。
現在では宮殿内の見学ツアーも催行されています。
コナ湾から見たフリヘエ宮殿
フリヘエ宮殿(Hulihee Palace)
75-5718 Ali`i Drive
Kailua-Kona, Hawai`i 96740
電話:(808) 329-1877
時間:火曜日〜土曜日の午前10時〜午後3時
休み:アメリカの主な祭日
料金:$10〜。
ガイドツアー:毎日時間により催行
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藤原 小百合 アンAnne Sayuri Fujiwara担当講師
【インタビュー動画あり】
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。メリーランド大学学士号取得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。ハワイ、日本でのレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。15年以上、パシフィックリゾートの「キルトパラダイス」(http://www.holoholo.world/kawaraban/category/quilt/)を連載中。 日本でハワイアンキルト本を数冊出版。2006年よりホノルルフェスティバルにおける伝統的ハワイアンキルト展を毎年開催。2013年よりイオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを始め、現在ハワイ在住31年目。