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2015.07.11

ウクレレの歴史1

ハワイ音楽の象徴的存在として世界に認知されている楽器、ウクレレ。
この愛すべき楽器をハワイアンはいつから楽しんでいるのか。どのようにして生まれ、誰が広めたのか。

  • ウクレレの原型は19世紀後半のポルトガル移民が持ち込んだ小型弦楽器
  • ハワイで作られ「ウクレレ」と呼ばれるようになったのは1880年代

ウクレレとは何か?

小さなギターのような形で4本の弦を持つ楽器、ウクレレ。ハワイの音楽を支える特徴的なサウンドを奏でるこの楽器は、海を渡り時代を超えて今も多くの人々に演奏されています。ハワイの風のような軽やかで優しい音が、ジャンルを越えて多様な音楽に華を添えます。

 

ハワイ語でウクレレをʻUkuleleと書きます。ʻUkuleleをハワイ語辞書でひくと「ウクレレ。語源は跳ぶノミ。おそらく1879年にポルトガルから渡ってきた楽器を広めた男、エドワード・パーヴィスの身体が小さく動きの早いことからつけられたハワイ語のニックネームに由来する」と書かれています。
ウクレレのルーツについては、19世紀のハワイに渡ったポルトガルからの移民が持ち込んだ当地の楽器がもとになっている、というのが定説になっています。そのあたりのことも含めて、本格的なリサーチをもとにウクレレの歴史を詳しく紐解いた書籍「The ʻUkulele A History」がハワイ大学プレスから2012年に出版されたので、その内容を参照してハワイでウクレレがどのように広まったのかまとめましょう。

"The ʻUkulele A History" by Jim Tranquada and John King (University of Hawaiʻi Press)

ウクレレはいつ、どこで生まれたか。

ウクレレの始まりについては、こんなエピソードがあります。
1879年8月の暑い土曜日、イギリスのリバプールからやってきた船がホノルル・ハーバーに着きます。乗っていたのは、東大西洋のポルトガル領マデイラ諸島からの移民の一行、427人。
4ヶ月の航海を経てたどり着いたホノルル港の船のデッキで、喜びの歌を歌い始めた男がいました。ポルトガルの小型楽器Machete(マシェティ。カヴァキーニョ、ブラガ、ブラギーニョという説もあるが、すべて同類の小型弦楽器)をかき鳴らしながら歌ったのは25歳の青年ジョアン・フェルナンデス。この時ハワイの人々が目にしたのが、後にハワイの代名詞のような楽器となるウクレレの原型だという説です。

 

ハワイでウクレレを作ったのは誰か

音楽好きなポルトガル移民がホノルルの街で陽気なポルトガル音楽を歌い演奏する姿が多く見られるようになり、彼らが演奏する小さなギターの音色にハワイの人々が惹かれるようになります。やがて移民たちの中から家具職人たちが楽器の生産も始めます。5本の弦を持つ小型ギターは「タロパッチ・ギター」と呼ばれ、さらに小さな4本弦の楽器が「ウクレレ」と名付けられ、ハワイで作られ販売されるようになります。この時使われたのが、家具の材料として愛された高級木材、ハワイ原産のコアでした。最初のハワイ産ウクレレの生産者として名を残しているのが、前記の移民船に同船していた家具職人、マニュエル・ヌネス、ジョゼ・サント、オーガスト・ディアスの3人です。

 

センターの女性が持っているのがギター、左下がタロ・パッチ・ギター、右下がウクレレ

「ʻUkulele」という名前の由来

「ウクレレ」という名前が楽器を指す言葉として印刷された最も古い印刷物が世に出たのは、ポルトガル移民を乗せた船がホノルル港に着いてからおよそ10年がたった1888年でした。その間にポルトガルの小型ギターは、ハワイで新たな人生を歩み始めたポルトガル人家具職人の腕と、ハワイの木材コアによって、ハワイの楽器「ウクレレ」として生まれ変わったようです。


なぜ「飛び跳ねるノミ」という意味の言葉がこの楽器の名前になったか。
前出のハワイ語辞書の説明に出てくるエドワード・パーヴィスというのは、カラカウア王の側近だった人の名前で、彼は小さな身体で機敏に動くその特徴から'ukulele(飛び跳ねるノミ)というニックネームで呼ばれていたそうです。ポルトガル移民が持ち込んで楽しげに演奏するあの小型ギターを、カラカウアに紹介して弾き方も教えたのが彼だったことから、楽器の名前が後にウクレレになったというのが定説になっています。ウクレレと呼ばれるようになるまでは、もともとの名前Machete、その後Pila Liilii (小さな弦楽器という意味のハワイ語)と呼ばれていました。ʻUkuleleの名前の由来にはもうひとつあります。ハワイアンはこの「小さな弦楽器」の音色がとても好きになり、4本の弦を同時にかき鳴らす素早いストラム奏法で演奏を楽しむようになっていました。そんな彼らの手の動きが、まるでノミが跳ねるようだったことから、「ウクレレ」と呼ばれるようになったというものです。


いずれにしてもハワイにもたらされた新しい楽器ウクレレは、その後ハワイ中に広まります。そして、この流行にはフラと音楽を愛した王族たちの影響が大変大きかったのです。

  • よしみ Nui だいすけ
    Daisuke Yoshimi
    担当講師

    【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
    facebook: https://www.facebook.com/NuiDaisuke
    公式HP: http://www.yoshimidaisuke.com/

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