講座詳細
現代のフラ
現代フラの発展に貢献する最大のもの、メリー・モナーク・フェスティバルとその歴史について
- ハワイで開催される最大のフラ競技「メリー・モナーク」が現代のフラの発展に貢献している
- メリー・モナーク・フェスティバルはハワイ島ヒロで毎年開催される
- フラ競技は1971年にスタート
- メリー・モナークの名前はハワイ国王カラカウアに由来する
メリー・モナークのはじまり
第1回メリー・モナーク・フェスティバルが開催されたのは1964年。1960年の津波の被害により大打撃を受けたヒロの街の経済を復興するために、観光客誘致を目的に計画されたのがはじまりでした。19世紀ハワイ王朝時代のリバイバルをテーマにしていた当時のフェスティバルにフラ競技は含まれていませんでした。伸び悩んだ観光客動員数を増やすために、フラの大会を開こう、というアイデアが出され、1971年に9組のハラウが出場した記念すべき第1回フラ競技が開催されたのです。
ハワイ文化の象徴としてフラが見直され、ハワイ文化復興運動が活発になった時代の機運もあって、フラ競技は年々拡大。1976年、それまでなかったカーネ(男性)部門が新たに設けられ、メリー・モナークは新しい展開を迎えることになります。エキサイティングでスピード感あふれる力強い男性フラのパフォーマンスによって、フラのスタンダードは塗り替えられていきます。それにあわせてメリー・モナークの観客動員数はどんどん増えていき、1979年、より多くの人数を収容できるEdith Kanaka'ole Stadium に会場が移されることになります。この5千人収容の会場で行われるフラ大会の熱気は、テレビ生中継によりハワイ全土の各家庭のリビングルームにも届けられるようになります。20以上の男女フラ・グループが出場する3日間に渡る競技として定着し、世界中からハワイ文化を愛する人が集まるフェスティバルとして現在に至ります。
メリー・モナークの名前の由来
フェスティバルの名前「メリー・モナーク」は英語でMerrie Monarch、つまり「陽気な王様」という意味です。ハワイ王国時代、19世紀の国王デビッド・カラカウアのことです。西洋諸国からの宣教師や実業家の影響で衰退していた「ハワイの言語や文化」を復活させ、先住ハワイアンのプライドを喚起させた王様として、ハワイアンに愛され続けています。国王の力を最大限に利用して伝統フラを復活させ、新たに西洋音楽を導入した新しいフラの流れを奨励し、フラを消滅の危機から救ったのが彼。音楽と踊りをこよなく愛したカラカウア王の意志を引き継ぐことを目的として、彼のニックネーム「メリー・モナーク」がフェスティバル名となったのです。フラを一言で表現した、カラカウア王の言葉です。
"Hula is the language of the heart and therefore the heartbeat of the Hawaiian people."
「フラは心の言葉、すなわちハワイ人民の心臓の鼓動そのものなのです。」
現代のフラへの影響
現代のフラの発展、独創性、ポピュラリティー、すべての面でメリー・モナークの果たす役割は大きい。メリー・モナークのステージでくりひろげられる、クムフラとダンサーたちの数ヶ月に渡る努力の結晶である踊りには、他では見られないエネルギーを感じることができます。クムフラには踊る歌に対するリサーチが課せられていて、その歌と歴史的背景への深い理解が要求されます。振り付け、コスチュームにも大変な知識と労力を要します。ダンサーたちはそのすべてをステージの上で表現するために徹底的に訓練をします。ステージ上の7分間のパフォーマンスのために、多くの時間と、体力と、精神力と、お金が注がれているのです。
メリー・モナークのフラ競技は審査基準がとても厳しく、また観衆の目も高いレベルのものを求めています。メリー・モナークの存在が、現在のフラのスタンダードを高めている、あるいは高いスタンダードを保たせている、と言えます。
メリー・モナークは、ハワイの伝統文化「フラ」の祭典であるのと同時に、「ハワイアンの誇り」を啓蒙する役割も担ってきました。特に古典、カヒコの踊りに、人々はハワイの伝統文化に対する思いを新たにします。古代ハワイの神々の存在、カプやならわし。伝説の世界、ネイティブ・ハワイアンの文化の真髄をフラ・カヒコに見出すのです。生命力にあふれた肉体的なパワーや性的エネルギーが、人の手におえない自然のフォースへの畏怖と敬意が、官能的な甘い魅惑が、メリー・モナークのステージで踊るハワイのダンサーによって表現されます。ハワイ系の人々にとってそれは、自らの歴史ある文化的背景を再発見する機会であり、ハワイ系でないローカルにとっては、誇るべき地元文化への再認識の機会となるのです。そして、フラを踊るということが、ハワイアンであることの誇りを示すアイデンティティーの象徴となったのです。
フラには流派があります。その流派は次世代へと引き継がれ枝分かれしていきます。伝統を引き継ぐことが大切であるのと同じように各クムフラが独自のスタイルを築いていくことも大切だという。伝統にできるだけ忠実であろうとするクムフラがいて、新しいスタイルをつくっていく革新的なクムフラがいる。競技会に参加することに積極的であるクムフラがいて、否定的なクムフラがいる。そしてこの魅力的な踊りはハワイ系ハワイアンだけのものではなくなってきている。ハワイのフラ教室にはハワイ系、ポリネシア系、日系、フィリピン系、白人系、さまざまな顔が見られる。さらにはハワイの外、海を越えてアメリカ、メキシコ、日本をはじめ世界の各地でフラを踊る人々が増えています。フラを通して、多くの人々がハワイの伝統文化に興味と理解を持ちつつあります。
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よしみ Nui だいすけDaisuke Yoshimi担当講師
【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
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