講座詳細
ハープウ(シダ)
草丈(葉身)が5メートルを超す大型のシダ
木化して幹のようにみえる部分(葉柄)の高さは1~2m、葉身(全体)の高さは2~6m。ハワイに自生する木性シダのひとつで、300メートル前後の低地から海抜1700mほどの乾燥した土地と湿り気のある森に自生します。なかでもキラウエア火山の群生がもっともよく知られています。当地では、ハープウはオヒアと共生しています。実生の(若い)個体は、ハプウプウと呼び、生長したものとは区別します。
特徴
シダは一般に湿気の多いところを好みますが、ハープウも森のなかの直射日光が当たらないところに生育します。木化した葉柄部分はイム(土のなかに埋めて焼く料理法)や、火山の水蒸気ガスが出ているところで蒸して食用にしました。味や食感はそれほど良くないので、カロやウルが不足したときの非常食的な役割でした。飢饉が訪れると人々は炭水化物の摂取をハープウに頼るようになりますが、口にするまでには多くの行程が必要でした。木化した太い茎を切り出し、イムの準備を行い、最低3 日はかけて蒸して毒性を抜きます。それだけの手間をかけても、得られるカロリーはそれほど多くありません。実生の(若い)茎部分からは帽子が作られたほか、屍体の防腐剤としても用いられました。若芽につく軟らかな繊毛は、枕やマットの詰め物として利用されます。これは今日でも利用されています。葉身の細い部分を編んでカゴにすることもあります。
アマウ(シダ)との違いは、葉が2回生(2度分岐する)であること。アマウは葉身(株のように見える部分)から大きな葉のように見える部分を直接出すのに対し、ハープウはもうひとつの葉身(茎のように見える部分)を出し、そこから葉のように見える部分を出します。
オヒアの森の林床(足元)に生育するハープウ
野ブタによる被害
アマウと同じく、野ブタが根茎を掘り起こして食べるため、数は減少しています。また、掘った後にできた穴に雨がたまり、蚊の大量発生を招くこともあります。鳥類に伝染するマラリアは蚊を媒体にしますが、大量の蚊の発生はハワイミツスイをはじめとするハワイ固有の野鳥たちに重大な脅威を与えているのです。
葉の拡大
ハワイ名:Hāpu‘u, Hāpu‘u pulu
学名:Cibotium glaucum, C. splendens タカワラビ科タカワラビ属(キボティウム属)
英名:Hawaiian Tree Fern, Male Tree Fern
和名:なし(タカワラビの近縁)
原産地:ハワイ諸島主要8島に生育する固有植物
ハープウの森を歩く
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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