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火山活動と地形の特徴(丘陵・渓谷・砂丘)
火山活動と地形の特徴(丘陵・渓谷・砂丘)
ハワイ諸島は地球内部にあるマグマの噴出で出現しました。噴出したマグマは溶岩と名を変えます。この溶岩は流量や速度、粘性、温度などに違いがあり、滑らかな地形が広がる場所もあれば、ゴツゴツとした溶岩に覆われる場所もあります。
噴出が爆発的である場合、上空に噴き上げられた溶岩(噴石)は、落下して噴石丘(スコリア丘)を造ります。ハワイ島のマウナ・ロアのようにきわめて粘性の低い溶岩が流れ出した場合は爆発的な噴火が起こらず、水が吹きこぼれるように周囲を滑らかに覆いながらなだらかな山稜を形成します。このような形状は楯を伏せたように見えるため、楯状火山(シールド・ボルケーノ)と呼ばれます。一方、北側に接するマウナ・ケアは、マウナ・ロアの溶岩より多少粘性が高く、さまざまな場所で爆発的な小噴火を繰り返しました。そのため山体に多くの噴石丘を造り出しました。
ハレアカラ(マウイ島)のカルデラと噴石丘群
丘陵と渓谷、土壌
島は数十万年から数百万年の時が経つと、風雨や波の浸食を受けて形を変えます。なだらかな山体は次第に深いひだを造り、丘陵部(尾根)と渓谷とに分かれます。溶岩は風雨によるほか、水や空気に触れて酸化するなど、浸食を受けます。溶岩の大地は岩の塊となり、小石となり、さらに小さな塊で構成される土壌へと変化していきます。海岸の溶岩は波に砕かれ、小石から砂、さらにはシルトへと小さく分解されます。
ハワイの溶岩は玄武岩質で、多孔質なために雨が降っても浸透して地表にとどまりにくいという性質を持ちます。富士山もハワイ諸島と同じく玄武岩質なために雨は地下に浸透し、川ができません。ハワイ島に船が航行できるような川がないのは、溶岩が新しく、雨が浸透してしまうためです。しかし、溶岩の土壌が細かくなると次第に雨は浸透しにくくなり、川や滝、湖沼を作りはじめます。ちなみに、オアフ島の地下には広大な帯水層(真水)があり、その下に移行帯(汽水)、さらに下には海水(塩水)があります。この他に垂直に発達する岩脈水もあります。百万都市ホノルルの水はここから汲み上げて使用しています。
これに対し、地質年代の古いカウアイ島では土壌が細かく、水はけは悪くなります。その結果、いくつもの川が出現し、大きな船も往来できます。また土壌が安定的に水分を含むため、島全体を植物が覆うようになりました。カウアイ島がガーデンアイランドと呼ばれる背景には、このような土壌の変化があるためです。
ワイメア渓谷(カウアイ島)の浸食地形
赤土と砂丘
土壌の変化とともに景観も変化します。溶岩大地に生育する植物や動物は限られますが、溶岩が細分化されることで植物が繁殖し、共生する昆虫類や鳥類が出現します。溶岩は鉄分を含むため、土壌は酸性になります。また、鉄分は空気に触れると酸化して赤くなります。サトウキビ畑やパイナップル畑で見られる赤土の原野が広がるのは酸性土が原因です。一般に農作物は土壌が酸性の場合、生長が阻害されます。しかしサトウキビや(品種改良された)パイナップルは酸性に強く、ハワイの土壌に適しています。ちなみにハワイの主要産業のひとつであるコーヒーも火山性の酸性土を好みます。
土壌の分解がさらに進むと、細かな礫の集合体である赤土は粘土や砂となります。放棄されたサトウキビ畑やパイナップル畑で風に舞っているのはこのような粒です。これらが堆積すると砂丘を形成します。代表的な例としてモロカイ島北西端のモオモミ砂丘が挙げられます。モロカイ島が誕生してすぐに風雨による浸食がはじまり、今日までに広大な砂丘地帯を出現させました。
モオモミ砂丘(モロカイ島)
※トップ画像はラナイシティー(ラナイ島)近郊の赤土です。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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