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カマニ
カマニ
カマニは常緑の高木で、樹高は8mから20mほどです。しかし30 mを超す巨木となることもあります。後述するように、タヒチなどではこのような巨木を切り出し、航海用の大型カヌーを作りました。
カマニの枝は横に伸びるため、モンキーポッドのように、大きく傘を広げたように見えます。花のサイズは約2.5cmで、1箇所に4~8 個の白い花をつけます。花には柑橘類に似た甘い香りがあります。葉は10~20cmと大型で硬く光沢があり、革のようにしなやかです。学名はギリシャ語で「美しい葉」を意味しますが、葉の表面には油点と呼ばれるしみのようなものがつくこともあります。果実は緑色の球形で、熟すと黄色から褐色へと変化します。直径は2~4cmほどの外皮をはぐと、滑らかな実が現れます。カマニの近縁には、ハワイでもよく見られるオートグラフツリーや、甘い果実で知られるマンゴスチンがあります。いずれも葉がよく似ています。
甘い香りのある花
ハワイのカヌーの素材と言えばコアの木がよく知られます。しかし、コアはハワイ固有の植物ですから、ハワイに到来した人々の故郷にはコアがありません。タヒチなどソサイエティ諸島ではカマニの木を用いました。タヒチの伝統社会では、カマニはククイと並び、聖なる木として尊重されました。暮らしに欠かせないカヌーの素材として重要だったことに加え、多用途に用いられたからです。そのため、ヘイアウ(神殿)の周囲に植えられたりしました。この慣習は今日のハワイでも継承され、カウアイ島のホロホロク-・ヘイアウなどで見られます。また、モロカイ島でもククイと並び、よく見られる木のひとつです。
コアはカヌーの素材として貴重でしたが、独特の油臭を放つため、食器には用いられませんでした。しかしカマニの木はミロやコウに似てほとんど臭いがないため、ハワイでは食器などに用いられました。また、建材として、ニウ(ココヤシ)ともに用いられました。
さまざまな用途に使われた実
カマニは、大きく伸ばした枝に大振りの葉をつけるため、日除けとして植えられることもありました。油分の多い種子はククイの実のように、灯火に用いられました。香りを放つ花は髪飾りやカパ(タパ)の臭いづけとして用いられたほか、木工芸品の材料としてもコアの木と並んで人気がありました。またククイの実と同様、レイとしてもちられることもあります。
カマニはコアの木と同じく、材がしなやかなため、強風の吹きつけるような場所で生育すると真っ直ぐには育ちません。タヒチなどでは強い風が吹きつけないような場所でカマニを育て、カヌーの材料としました。
果実が熟して香りを放ちはじめた頃の種子から採れる油分は整髪料として用いられました。また、日焼けや肌荒れのアフターケアに、樹皮から採れる樹脂(カマニ油) が用いられました。カマニ油は、香料や石けん、灯火用となりました。葉を煎じたものは体調不良のときの滋養剤となったほか、タヒチではこの樹脂を傷薬として、ハワイではロミロミのマッサージ・オイルとして使用しました。
ハワイにはカマニの木によく似ているためフォルス・カマニ(ニセのカマニ)と呼ばれる木があります。和名をモモタマナと言い、外観はよく似ています。カマニは球形の実をつけますが、フォルス・カマニはひし形の実をつけ、完熟すると赤くなるのこと、また、穂状の花をつけるところが異なります。
カマニの実を使ったレイ
植物情報
ハワイ名:Kamani, Kamanu
学名:Calophyllum inophyllum オトギリソウ科テリハボク属
英名:Alexander laurel, Indian Lawrel, Lawrelwood, Ballnut
和名:テリハボク、ヒイタマナ
原産地:熱帯アジア、東アフリカ~タヒチ / 伝統植物(外来種)
※トップ画像は、ハワイ島ヒロの海岸に植えられたカマニの小木です。絶え間なく吹く海風のせいで、幹は曲がっています。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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