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イリアヒ
イリアヒ
イリアヒとはビャクダン(白檀)のハワイ名です。芯材と根をはじめ、あらゆる部位に芳香があります。ハワイではカパ(タパ)の香り付けや、ココナッツオイルに浮かべて香料にしました。現在でも薬用効果のある香料として人気があり、ロミロミ用オイルなどに使われます。
全体の様子
歴史
イリアヒは英名をサンダルウッドと言います。ペルシャ語の「Shandal」に由来し、サンスクリット語で「樹木」あるいは「芳香」を意味します。その名の通り、香木として知られます。インドや中国では宗教儀式に用いられました。ハワイには固有のサンダルウッドがあるため、カメハメハ1世の時代に原木の輸出が始まりました。また一部ですが、粉末にして香料を作ったりもしました。ハワイが国家として世界と交わることになった18世紀末、王国を資金的に支える加工品はありませんでした。収入を得る数少ない輸出品のひとつがイリアヒだったのです。中国やインドなどでビャクダンを香木として使用する需要があったことが、きっかけでした。
ハワイ王国は諸外国に較べて軍事的にも財政的にも不安定でしたから、輸出契約は相手の意のままに振り回され、思っていたほどの収益を上げることはできませんでした。とは言え、ハワイ王国の財政を支える重要な資源には違いありませんでした。ビャクダンの伐採にあたり、地面には大きな穴が掘られました。この穴は貨物船に一度に積みこめる木材量の目安となるもので、木材で満たされるとそれらを取り出し、人力で港まで運び下ろされました。
花と蕾
伐採には過酷なノルマが課せられため、島民たちは作業にかかりきりとなり、帰宅もままならなりませんでした。その結果、ロイ(カロの水田)は荒廃し、収穫が激減して飢饉が発生するほどでした。一方、ビャクダンの伐採については、十分とは言えないながらも一定のルールを作り、乱獲を防いでいましたが、1世の死後、膨れあがる王国の予算を補填するため、ビャクダンの伐採は加速しました。その結果、ほどなく資源は枯渇し、白檀貿易は終わりを遂げました。
実
ハワイ名:‘Iliahi / ‘Iliahialo'e
学名 :Santalum ellipticum / S. paniculatum / S. haleakalae / Santalaceaee
ビャクダン科ビャクダン属
英名 :Coast (-tal) Sandalwood / Sandalwood / Sandalwood
和名 :ビャクダン
原産地 :主要ハワイ諸島 / 固有植物(Endemic)
特徴 :ハワイには4種が知られていますが、ハワイ島に生育するもの以外は小木です。4弁花のサイズは4~7mm。外側が赤味を帯びるのが特徴です。花と葉は肉厚。葉は、若葉の一部が赤紫色をしています。長さは4~12cmで革のような質感があります。4種のイリアヒのうち、エリプティクムはもっとも広範に自生しています。パニクラツムは樹高20mに達する高木で、ハワイ島にのみ生育します。ハレアカラエの2種は、その名の通り、マウイ島ハレアカラ山麓にのみ分布します。樹高は2~14mです。
樹皮
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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