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ノニ
ノニ
ノニの実は内部にすき間があり、水に浮きます。そのため海流に乗って広く分布しました。また、フィリピンやタヒチではノノ、サモアではのノヌと呼ばれるように、ノニは多くの文化に浸透し、古くからその情報を共有したことが名前からもわかります。それらがポリネシアの島々に定着したのは2000年以上も前で、ハワイにはポリネシア各島からの入植者が持ち込みました。樹皮と根は黄と赤の顔料になり、カパの染色に用いられました。葉と実は食用になりました。ノニがポリネシアの文化に深く浸透し、さまざまな形で利用されていることは、キャプテン・クックの報告にも記載されています。
花と若い果実
完熟の果実はアンモニアに似た臭気がありますが、薬として多くの効能があります。また、頭痛の際の湿布薬になるほか、若い果実は塩と混ぜて切り傷や骨折の治療に用いられました。原産地の東南アジアでは6000年も前から果実や葉を食用や薬用に、根や幹を染色に用いられました。
すり潰した樹液は糖尿病、心臓病、高血圧に効果があり、今日でも医療用の原料として用いられるほか、蛋白質、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類を抽出し、栄養ドリンクから医薬品までさまざまな商品が作られています。
ハワイの集落では建物と海岸の中間に植えられ、樹木は日除けとして利用されました。ノニの実は薬として利用されたため、集落の救急箱的存在とされました。今日でも消化促進として食事前に果汁を水で割ったものを飲用します。また、飢餓の際には代用食物となりました。
完熟した果実の断面
ハワイ名:Noni
学名:Morinda citrifolia / アカネ科ヤエヤマアオキ属
英名:Indian mulberry
和名:ヤエヤマアオキ
原産地:東南アジア~オーストラリア/ 伝統植物(外来種)
特徴:常緑の低木で、樹高は3~6m。花のサイズは0.7~0.9cmほどです。海岸や低地に生育し、枝は節が多く、ざらざらとしています。光沢のある葉はとても大きく、条件がよいと40~50cmほどになります。通常はひとつの葉にひとつの実をつけます。花は果実(子房)の先端に数個付きます。花弁は5~7枚で白色、わずかですが芳香があります。果実は最初は明るい緑色をしていますが、熟しはじめると洗ったジャガイモのような色に変わり、完熟したものは手で軽く触れるとすぐに崩れるほど柔らかいです。完熟した果実はアンモニア臭の混ざった臭気があります。果実は種子を持つブロックが合体したもので、それぞれ五角形、もしくは六角形をしています。
樹木の全体
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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