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イプ
イプ
ヒョウタンの一種で、ポリネシアの祖国から持参した伝統植物のひとつでです。ハワイでは釣り針や糸の貯蔵容器、カパの染料の保存容器、水差し、食器などに用いられました。また、ヘイアウ(神殿)では、供物台の脚にイプを使用してネズミ除けにしました。サメ漁をする漁師は水面をイプで叩いてサメを驚かせたと言われます。
ハワイでは家長の妻が亡くなると洞窟などに遺体を安置します。やがて臍からツルが伸び、イプが育つと信じられました。また、ハワイの創世神話である『クムリポ』によると、イプは聖なる香りを放ったり、人々を護る象徴でもありました。
生長中の実
若い種子は有毒ですが、種子の周りの果肉は下剤として、花は解毒剤として、樹皮は利尿剤として、果実は結石や吐き気予防・解熱などに用いました。少量の種子は虫下しとして、種子を茹でたものは腫れの手当に用いられました。現在も、この植物から抽出したものは抗生物質として用いられます。
ハワイではフラの楽器として重要な役割を果たしてきました。イプ・ヘケはフラでは重要な楽器です。イプを2つをつなぎ合わせて打楽器とし、儀式に用いました。単体のイプは、イプ・ヘケ・オレ(イプがひとつ欠けた楽器)と呼ばれ、2つ繋がったイプが完全な形とされました。オカリナのように穴をあけたイプ・ホーキオキオと呼ばれる楽器もあります。
イプで作られた楽器
フラ・ソング
He ipu nui! 大きなイプよ!
O hiki ku mauna, 山のように大きくなれ!
O hiki kua, 背中で背負って運ぶような
Nui maoli keia ipu! 大きな果実をつけてくれ!
葉
ハワイ名:Ipu
学名:Lagenaria siceraria (var.gourda) ウリ科ユウガオ属
英名:Bottle Gourd, Long Squash
和名:ヒョウタン(ユウガオの変種)
原産地:北アフリカ / 伝統植物(固有種という説もあります。)
特徴:つる性で茎の長さは20mほど。花のサイズは2.5~4cm。雌花と雄花があり、雌雄同株でほぼ同時に開花します。咲くのは夕方で、白い花をつけます。葉は丸みを帯び5裂します。葉のサイズは25~30cmです。交配によって大小さまざまな品種が作られており、高さ5cmほどのものから2mを超えるものまであります。ハワイでは乾燥した平地で育ちますが、野生の状態では、近くに樹木があってそれに巻きつくという状態でないと育ちません。イプはツルを伸ばしながらヒゲをつけ、これを他の植物にからめます。果実はニガウリに似て苦味があります。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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