ハワイが誇るレジェンド・サーファーをご紹介しています。
3人目のレジェンドは、来年（2018年）に20回忌を迎える女性サーファーです。
 

クイーン・オブ・マカハ

オアフ島西部ワイアナエは、ハワイ系住民の貧困による犯罪、非行、ドラッグ、10代妊娠などの問題を抱えたエリアでしたが、素晴らしいサーフ･スポットとビーチに恵まれた場所でもあります。なかでもマカハ・ビーチはビッグウェーブの立つオアフ島屈指のサーフスポットのひとつ。
そんなマカハをホームとして活躍し、『クイーン・オブ・マカハ』と慕われた美しい女性サーファーがいました。
彼女の名前はレル・カポリオカエフカイ・サン。
少女のころからマカハの波に乗って成長した彼女は、スキンダイビング、スピアフィッシングにも人並みはずれたスキルを持つ優れたウォーター・ウーマンとして成長しました。
70年代に女性プロ・サーファーの草分けとなって、男性社会だったサーフィンの世界で女性が活躍できる新しい時代の扉を開き、1977年にはハワイ初の女性ライフガードに任命され、マカハビーチで働きます。
愛するホームタウンでありながら非行・犯罪の多い環境に育つ子どもたちに夢と希望を与えたい、そんな願いを込めてレル・サンがマカハ・ビーチで主催したのが、今に続く子どもたちのためのサーフィン大会『メネフネ・サーフィン大会』でした。

メネフネ・サーフィン大会2017のポスター

サーフィンの世界で活躍し、地域コニュニティーに奉仕するレルが、乳がんの診断を受けたのは32才のとき。
余命数ヶ月と告げられた彼女は、闘病生活をしながらもサーフィンを続け、さらに乳がん予防と乳がん患者のための活動にも精を出します。
レル・サンがこの世を去ったのは余命数ヶ月の告知を受けてから15年の後、1998年1月2日、47才でした。
葬儀が行われ、沖に出たカヌーからマカハの海に散骨された1月17日、ブラザーズ・カジメロが『エ・クウレイ』を歌い、その歌に合わせてフラが捧げられたといいます。

レルのハワイアン･ネーム「カポリオカエフカイ」は「海飛沫に抱かれた人」という意味があります。レルが生まれたとき海の夢を見た祖母が名づけたといいます。その名前の通りの女性になった彼女は生前こう語っています。
「海が怖いと思ったことはないわ。だって海は祖先が眠っている場所だから」
海に眠る先祖が守護神として常に自分を見守ってくれている、そう心から信じていたようです。
ハワイ先住文化、ハワイ的価値観への愛着とあくなき好奇心が、陸での彼女をフラへと向かわせていたことはあまり知られていません。
レルの友人のある女性サーファーは、「いったいいつフラを習う時間を持っていたのか知らないけど、彼女は誰よりも美しくフラを踊ることができた」と語っています。

存在そのものが「ALOHA」な人だった、といわれるレル・サンが『アロハ・スピリット』についてこんな言葉を残しています。
"The aloha spirit is real simple. You give and you give and you give . . . and you give from here (the heart), until you have nothing else to give."
「アロハ・スピリットはとてもシンプル。与え、そして与え、また与える。与えるときは心から、与えるものが無くなるまで。」

Stories of Rell Sunn: Queen of Mākaha（編纂 Greg Ambrose、出版 Bess Press )

ドキュメンタリーDVD "Heart of the Sea"