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グアバ
ハワイでグァバと呼ぶときは、コモン・グァバを指します。この他に、近縁種としてテリハバンジロウ(ストロベリーグァバ)やキミノバンジロウ(イエローストロベリーグァバ)などがあります。グァバは春ごろに白い花をつける常緑低木の植物で、世界の熱帯地域で広く栽培されています。薄緑色、あるいは黄色の果実には独特の芳香があり、タネごと生食するほか、ジュースやジャムなどに加工され販売されます。また、タンニンが多く含まれる葉は健康茶として流通しています。
ハワイの野山を歩くといろいろな植物に出会えます。おそらくだれもそのすべてを言い当てられないほど多くの植物があり、驚くべきことに、その種類はいまなお増加中です。そうした多彩な植物群のなかにあってよく目につくもののひとつにグァバがあります。ハワイでは、グァバをブレンドしたジュースはパッションフルーツともによく知られていますが、フィールドではそれ以上に大きな勢力を持ち、至るところで目にします。
和名をバンジロウ、あるいはバンザクロと言い、日本ではハーブティーとして知られます。ハワイ諸島には18世紀末にもたらされました。このグァバは、英語ではGuava(あるいはCommon Guava)と呼ばれます。グァバの仲間は100種近くが確認されています。
完熟したグァバの実
グァバの種名は guajavaと言います。これはスペイン語の guayabo(果実)に由来します。また、属名の Psidium はザクロを意味します。グァバの起源は紀元前800年のインカにまで遡るとされます。ハワイにはモントゴメリーにより、1851年にオーストラリアから導入されたとされますが、それ以前からあったことは間違いありません。1830年代にはすでに記載があります。ただし1851年までは野生種はなかったようです。
グァバはオヒアやユーカリと同じフトモモ科の仲間なので、それらと似たブラシのように長く雄しべをつけます。花弁は4~5枚で白色をしており、周年開花します。果実は楕円形のものがよく知られますが、この他にも洋なし型や球形のものもあります。果肉は淡いピンクから濃いピンクまでと、白色、クリーム色など、さまざまな色があります。また、タネなしもあり、多くの品種があります。グァバは成木になると8~10mの高さになります。グァバの仲間はサルスベリに似て樹皮が滑らかなのが特徴です。薄片を落とすので、表皮はまだら模様となっています。
房状をした白い花
非常に繁殖力が強く、しかも密生するので他の植物を駆逐してしまうことが少なくありません。そのため、地域によっては有害植物に指定されています。完熟した果実はショウジョウバエをはじめとする多くの昆虫や動物の餌になり、はき出したり糞に混ざって諸島各地に拡散します。しかし、ビタミン類の豊富な果肉は滋養分に富むので、1915年から農産物として栽培されています。グァバは加工品として栽培されますが、生食もします。
果肉は乳酸の香りが強く、完熟しないとそれほど甘みは感じません。完熟した果肉は酸味と強い甘みがあります。ジュースにして飲んだり、ジャムを作ったりして楽しみます。他の果実とミックスしたジュースを含め、ハワイではグァバジュースが広く流通しています。
グァバは白人文化がもたらされた後に入ってきた植物なのでハワイ固有の文化と結びついているわけではありませんが、薬用としての効果は、昔からポリネシアの一部で知られていました。もっとも多用されたのはグァバの若葉で、葉を絞った液を飲んだり、葉を直接かじったりして、胃痛や下痢止めとして使用しました。
グァバ農園
植物情報
学名:Psidium guajava
ハワイ語名:Kuawa
英名:Guava, Common Guava, Apple guava
和名:バンジロウ、バンザクロ
原産:熱帯アメリカ
特徴:低木、樹高は3~9m、花冠は2.5~3.5cm。果実は5~9cm。淡緑色とアイボリーの斑状をした滑らかな樹皮が特徴。果皮ははじめ濃緑で、熟すと淡黄色となる。果肉は熟すとピンク色になり、生食できる。強い芳香が長く持続するので芳香剤として使うこともできる。ハワイの多くのトレイルで野生のグァバを見ることができるが、栽培も行っており、ジュースやジャムに人気がある。ハワイでは1830年の栽培記録が残っており、それによれば、当時はまだ野生種はなかった。繁殖力が強く、ハワイでは有害植物に指定されている。
※トップ画像は熟しはじめた実と、まだ青い実です。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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