講座詳細
キアヴェ、コア・ハオレ
キアヴェ
キアヴェは乾燥に強い樹木であることから、1828 年にフランス・カトリック教会の神父が緑化用としてハワイ諸島に導入しました。今では延べ600 平方キロメートルもの森を出現させるまでになりました。降雨量の少ないカホオラヴェ島では緑化用として広範に植林されたが、現在は、ハワイ固有の植物環境を復元するため、砕いたものを土壌安定化用の土嚢にして再利用しています。
ニイハウ島には大群落があります。ニイハウ島では「キアヴェ炭」も作られています。乾燥地帯であるダイヤモンドヘッドやココ・クレーターは、山容のほとんどがキアヴェとコア・ハオレに覆われています。
蜜を採る花穂
キアヴェの花からは香り豊かな蜜が採れるため、1935 年にはキアヴェの蜜を加工したアルガロボシロップ(アルガロビーナ)200 トンが輸出されています。また、ハチミツもよく知られています。豆果にも蜜があり、乾燥していれば種子を含めて生食できます。この実は動物の飼料となるほか、シロップや酒、パン粉、アイスクリームの素材などに加工されています。
キアヴェの豆果
植物情報
ハワイ名:Kiawe
学名: Prosopis pallida マメ科プロソピス属
英名:Algaroba Tree, Mesquite, Huarango, American Carob
和名:なし(アルガロバ)
原産地:ペルー、コロンビア、エクアドル / 外来種
特徴:外来の中高木、樹高 8~20m、花序 7~10cm。ブラシ状をした淡黄色の花をつける。葉はマメ科によく見られる2回羽状複葉で小葉は対生する。一般にはトゲがあるが、大きさはさまざまだ。葉は、乾季には落葉する。豆果は16~30cmで、枝先にぶら下がる。
コア・ハオレ
コア・ハオレは荒れ地や乾燥地に強いため、キアヴェとともにハワイ諸島導入しました。コア・ハオレは荒れ地に適しているものの、土壌が安定した土地ではそれほど育ちません。溶岩が露出するダイヤモンドヘッドの崖地では低木状態のまま繁殖しています。
大きさも形もコアやユーカリに良く似た房状の花
コア・ハオレは日当たりが良く、乾燥した土壌を好みます。他の木よりも地下のかなり深いところにまで根を下ろし、そこから水を吸い上げるため、旱魃に耐えて生長を続けるのが特徴です。この木は根のなかに空中の窒素を固定する菌を共生させているため、栄養の乏しい土地でもよく成長します。しかし周囲に植物がある場合は毒液で駆逐する有害植物と化します。ミモシンという有毒アミノ酸を出すため、家畜が摂取し過ぎると脱毛や成長の遅れといった障害が起きるとされます。
コア・ハオレの繁殖力はきわめて強いため、途上国の一部では燃料として活用しています。コア・ハオレは落葉低木ですが、ハワイではあまり落葉せず、豆果は熟しても枝から落ちずに枯れます。
枯れても枝から下がるコア・ハオレの豆果
植物情報
ハワイ名:Haole Koa, Koa Haole
学名: Leucaena leucocephala マメ科ギンゴウカン属
英名:White Popinac, False Koa
和名:ギンネム、ギンゴウカン、タマザキセンナ
原産地:熱帯アメリカ(中南米) / 外来種
特徴:外来の中高木。世界中に移植され、熱帯・亜熱帯の土壌に分布している。日本では小笠原諸島と沖縄に移入され、帰化した。近年は南九州まで分布域を拡大している。樹高 2~12m 、花序 2~4cm。標高750mまでの乾燥地帯で生長する。白に近いクリーム色の花はコアの花によく似ている。和名のギンゴウカンは「銀合歓」と書くことからもわかるように、ギンネムの別読み。ネムノキのような白い花を咲かせることに由来する。西インド諸島では豆果(12 ~18cm)の種子を食用にした。きわめて乾燥に強く、ハワイでは広い範囲で野生化している。ハワイ名は、コアの花と本葉に似ていることから、「ハオレ(外国)由来のコア」と名づけられた。
※トップ画像は、豆果を下げたキアヴェの木です。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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