講座詳細
キー(ティー)
キーはかつてタコノキの森に植えたとされます。その後、厄除けや幸運を呼ぶものとしてヘイアウの敷地の四隅に植えられるようになりました。今日では家を建てた際に、庭木として植えられます。英名の Good-luck Plant は、この慣わしが由来です。
フラでは、パーウー(スカート)やクーペエ(手首足首に巻くレイ)の素材となりました。キーは上記の意味のほかに、「浄め」としての意味も込められているためです。同じように浄め、治療を目的として、葉を水に浸け、人の体や特定の場所にその水を利用することもありました。葉は、喘息の治療に用いたり、冷水に浸けたものを肌に貼りつけて熱冷ましとして用いました。熱した石を葉で包んだものは、背中の痛み止めとして、若く柔らかな葉は包帯代わりとなりました。
花
キーは昔から特別なマナ(霊的な力)があるとされ、儀式のときは、アリイ(首長)やカフナ(司祭)だけが、葉を首の回りに巻きました。神々に捧げる供え物をハワイ語ではホオクプと言います。キーの葉を放射状に重ねて広げ、その中心に肉や魚どの供え物を入れて包み、神への恭順を示すものとして献げました。
アフプアアと呼ばれる領地で暮らす人々は、領地と領地の間にキーを植えて境としました。今日、登山道や道の難所に溶岩をキーの葉でくるんだものが置かれていることがあります。これらは安全祈願ですが、伝統的なものではなく、ホオクプに倣った今日の習慣です。
赤い実をつける
カウアイ島のアリイは、世継ぎを決めるときにキーの葉で小さな船を作り、流れる先を見て判断したと言います。また、ハワイ島のワイピオ湾には、かつてサメが生息しており、ここで泳ぎたい人はまずキーの茎を海に投げました。茎が沈んだらそこにはサメがいて危険だが、そのまま流れていけば安全だと判断しました。
キーは肉や魚などを包む素材としても使われます。地面を掘り、キーまたはマイア(バナナ)の葉を敷きます。その上に食材を乗せ、さらに葉を敷いてから熱い石を乗せて蒸します。このような調理法をハワイ語でイムと呼びます。葉に肉や魚を包んで蒸し、葉ごと食べるラウラウなどの料理は今日でも人気があります。
ホオクプ(お供え)
完熟したキーのイモ(根茎)はウアラ(サツマイモ)よりも大きく、甘くて味も良いです。根茎は繊維質が豊富で果糖を多く含み、成長すると100kg以上になります。これを蒸留したものはオーコレハオと呼ばれる酒になります。葉はこの他にも、屋根を葺いたり、サンダルにしたり、雨具などに用いられました。主脈部分は紐代わりに用い、葉を撚ったものは漁網に、料理を携行するときには包み紙の代わりに利用されました。
20世紀以降は観賞用として注目され、さまざまな園芸品種が作られています。なかでも赤葉のものはリリノエと呼ばれ、高い人気があります。
キーの群落
植物情報
ハワイ名:Kī, Lā‘ī
学名:Cordyline fruticosa , C. terminalis リュウゼツラン科コルディリネ属
英名:Ti, Hawaiian Good-luck Plant
和名:センネンボク、コウチク(紅竹)
原産地:ヒマラヤ~東南アジア~オーストラリア北部 / 外来種、伝統植物
特徴:多年草2~3.5m。花のサイズは0.8~1.5cm、樹高は4mほど。地下に巨大な根を発達させる。葉は長さ30~70cm、幅5~12cm。しなやかで光沢がある。茎は無毛で節がある。花はピンク、または青みを帯びた紫で、長い雄しべの先に黄色の葯をつけた、透明感のある花を密生させる。果実は赤く球形。直径は約1.2cm。
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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