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ハワイの歌3 『カメハメハ一世の歌』
「カメハメハ一世の歌」
ハワイの歌「メレ」には「メレ・イノア」というカテゴリーがある。「イノア」は「名前」の意。「メレ・イノア」は特定の人物に捧げる歌のことをいう。ここではハワイ王国の王族たちに捧げられたメレ(歌)を紹介しよう。
カメハメハ大王をたたえる歌 Hānau Ke Ali'i
カメハメハ一世は、多くの戦を戦い抜いて天下を取った「戦士の王」だ。10年以上の戦乱の時代を駆け抜け、ハワイ島、マウイ島、ラナイ島、マウイ島、オアフ島を制圧した。(カウアイ島は協定に基づいて王国に加わった。)
1795年のハワイ統一から1819年の死に至るまで24年間、孤高(ハワイ語でカメハメハ)の王としてハワイを統治した。そんな彼には、王になるべくしてなったことを証明するように、多くの逸話が残されている。そのひとつが、彼が誕生した日の夜空に彗星が輝いた、というもの。
カメハメハの誕生を祝ったチャントが存在する。そのメレ『Hānau Ke Ali'i』はどんな内容なのか。
歌詞前半の内容を見てみよう。
Hānau ke aliʻi Kekuʻiʻapoiwa.
I nākolo ka lani
I Welehu ka malama
I kūlia i lalapa maloko ʻĀinakea.
Kokōhi ke maloko i laila
Hānau kalani nui mehameha
Ke hoʻoʻeli o ke kapu.
Ke pūlikoliko o ke kapu.
ケクイアポイワが出産する
天が轟く
それは11月
アイナケアの中で命の火がつき燃え上がる
そこでは光は遮られ
偉大なる孤高の王が誕生した
深き禁断なる
高貴な神聖なるもの
ケクイアポイワはカメハメハの母の名前。
Welehuは古代ハワイの暦で11月に相当する。
アイナケアはハワイ島コハラの地名。
カメハメハ大王をたたえる歌 Hole Waimea
カメハメハ一世のメレ・イノアとしてもっとも知られるのは『Hole Waimea』。カメハメハ存命中に書かれたこのチャントが今もフラダンサーに踊られる。チャントの一部は『Waikā』という美しいメロディーのメレとしても歌い継がれている。
Hole Waimea i ka ihe a ka makani
Hao mai nā ʻale a ke Kīpuʻupuʻu
(He) lāʻau kalaʻihi ʻia na ke anu
(I) ʻōʻō i ka nahele aʻo Mahiki
ワイメアの風が削り出す槍
キプウプウ雨の激しいうねりに
はかなく凍える木々が
マヒキの森で槍になる
Kū aku lā ʻoe i ka malanai a ke Kīpuʻupuʻu
Nolu ka maka o ka ʻōhāwai a Uli
Niniau ʻeha ka pua o Koaiʻe
ʻEha i ke anu ka nahele aʻo Waikā
あなたは立つ、キプウプウの風の中
ウリに咲くオハワイの花びらは柔らかく
コアイエの花はくたびれている
ワイカの森の寒さに凍えて
キプウプウはハワイ島ワイメアの戦士隊の名で、ワイメアに吹く刺すような冷たい風と雨の名前が由来。ワイカの森のなかで槍を削り出す作業をしながら歌ったというこの歌には、カオナ(裏の意味)があるという。戦士たちが槍作りをしながら歌っていたのは、戦のことでなく、女性との交わり、愛し合うこと、という説が有力だ。
カメハメハ一世のメレ・イノアとして作られたこの歌を、後にカメハメハ二世が受け継ぎ自身のメレとしたという。
資料動画リンク
Hānau Ke Ali'i
Hole Waimea
Waika
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よしみ Nui だいすけDaisuke Yoshimi担当講師
【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
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