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2018.07.02

アリイオラニ・ハレ

アリイオラニ・ハレ

ハワイ王国の国会議事堂

この章のポイント

  • カメハメハ5世時代に着工し、カラカウア王時代に完成
  • 国会議事堂や裁判所として使われた
  • 現在は司法図書館などがあり、一般公開中

本来は宮殿だったはずが…

イオラニ宮殿やカメハメハ大王像など、ハワイ王国時代の歴史的な見所が集中している、ホノルル・ダウンタウン。カメハメハ大王像の真後ろにさらにもう一つ、見逃せないハワイ王国時代の歴史的建造物があります。王国時代には国会議事堂として使われていた、アリイオラニ・ハレと呼ばれる建物がそれ。

建造は1874年とイオラニ宮殿やカメハメハ大王像より古く、王国時代にはカラカウア王やリリウオカラニ女王が日々、イオラニ宮殿からキングストリートを渡って通っていました。現在はハワイ州最高裁判所や司法歴史博物館などがあり、知名度こそあまり高くありませんが、ハワイの歴史を学ぶ上ではぜひ訪れていただきたいスポットです。

アリイオラニ・ハレは、ハワイ語で「崇高な王族の家」を意味します。実はアリイオラニとはカメハメハ5世のハワイアンネームの1つで、アリイオラニ・ハレはそもそもカメハメハ5世の宮殿として設計されたものでした。当時、イオラニ宮殿が今建っている敷地に木造の宮殿がありましたが、かなり老朽化。そこで新たな宮殿の建設計画が持ち上がり、オーストラリア人建築家による設計図まで完成したのですが、カメハメハ5世の提言で計画が変更されることに。

「今、王国が必要なのは私の家ではなく、王国政府の建物である」とカメハメハ5世が提言し、宮殿用の設計図はそのまま、宮殿の向かいに庁舎を建てることになったのです。着工式が行われたのは1872年。式ではカメハメハ5世自らが礎石を敷地に埋めこむセレモニーを行い、工事が始まりました。

ところが。残念なことにカメハメハ5世は庁舎の完成を待つことなく亡くなり、庁舎はルナリロ王の治世を経てカラカウア王の時代に完成。1874年4月末、カラカウア王は祝砲が鳴り響くなか庁舎の開館を宣言し、カメハメハ5世にちなんでアリイオラニ・ハレと命名したのでした。

アリイオラニ・ハレに飾られているカメハメハ5世の肖像画

激動の歴史の舞台


アリイオラニ・ハレはその後、国会議事堂や裁判所としても使用されたほか、法律図書館や教育、保健、財政関係などの政府機関も設置されていました。王立博物館や、多くの芸術家のアトリエが併設されていた時代も。芸術を愛したカラカウア王がアーティスト達を支援する目的で、アトリエスペースを与えたのだそうです。

しかし時の流れとは残酷なもの。リリウオカラニ女王時代の1893年、白人勢力によりハワイ王国が崩壊し、王国の権威の殿堂だったアリイオラニ・ハレも革命勢力により使用されることになりました。そもそも革命当日の1893年1月17日、革命派が暫定政府の樹立宣言を読み上げたのもアリイオラニ・ハレ。その結果、ハワイで初めてアメリカの国旗が高々と掲げられたのは、アリイオラニ・ハレだったのです。

そしてハワイがアメリカ合衆国に併合された1900年、アリイオラニ・ハレは合衆国連邦政府の裁判所となり、続いてハワイがアメリカ50番目の州となった1959年からはハワイ州の最高裁判所となり、現在に至っています

現在アリイオラニ・ハレは2階にハワイ州最高裁判所があるほか、1階には州の司法歴史センターなどがあり、一般公開されています。歴史センターでは写真やイラストほか立体的な展示物も駆使して、古代からの司法システムの移り変わりをわかりやすく解説。

 

ハワイ王国時代の法廷も再現されている

第2次世界大戦中のハワイに関する展示コーナー

たとえばカメハメハ3世以前のハワイには裁判官のような役職はなく、王族やカフナ(神官)がその役割を担っていました。法律に代わって社会を支配していた古来のタブーやハワイ初の陪審員制度の話など、意外な逸話が満載で、意外に楽しい内容です。ほかに第2次大戦中の戒厳令下のハワイについてのコーナーもあり、見るべきものはたくさん。近くのイオラニ宮殿やカメハメハ大王像と合わせ、ぜひゆっくり訪問していただきたいと思います。

付帯的な情報・発展情報

アリイオラニ・ハレ 住所/417 S. King St. Honolulu 電話/539-4999(司法歴史センター) 開館/8時~16時 休館/土・日曜・祝日 入館料/無料 ※ワイキキから2番、13番バスで約30分
http://www.jhchawaii.net(司法歴史センター)


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  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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