ハワイのソウルフード、ポイ

ハワイアンの主食といえばタロイモ(ハワイ語でカロ)。
ポリネシア全体でタロイモは珍重されてきましたが、ハワイにおけるタロイモの重要性は、他の島々のそれを遥かに凌ぐもの。一時は300種以上のタロイモがハワイで作られ、今も80種が栽培されています。

中でもタロイモを蒸してペースト状にしたポイが、古来ハワイアンの大好物でした。18世紀末に生まれたハワイアン歴史家のデビッド･マロも、ポイについて次のように力説しています。｢ハワイで一番好まれる主食は、タロイモである。ポイにすると美味しい食物だ｣｢ポイはものすごく好まれる食物なので、タロイモの需要は大変高い｣

日本人の食卓が米抜きで成り立たないように、古代ハワイの食生活もまた、ポイなしでは語れません。サツマイモやパンの実のポイもありましたが、タロイモで作るポイこそが、ハワイのソウルフードといえるでしょう。以下、簡単に古代ハワイにおけるポイの作り方を説明していきます。

タロイモ畑（Photo Courtesy of HTA, Tor Johnson）

ポイ作りは男性の仕事

タロイモはまず、イム(地中に掘った穴に石を敷きつめて造る釜土)で蒸し焼きに。次いで皮を除いたタロイモを木製のボード(パパ･クイアイ)にのせ、石製の打ち器(ポハク･クイアイ)で潰していきます。この段階の固めのペーストがパイアイ、さらに少しづつ水を混ぜながら伸ばしたものがポイです。

タロイモは大きく、蒸し焼きにするにも時間がかかります。それをペースト状にまで練りつぶしていく作業はなかなかの力仕事。なので古代ハワイでは、男性がポイ作りを担当していました。ポイは1週間ほど保管でき、少しづつ発酵して日を経つごとに酸っぱ味を増していきます。どちらかというとハワイアンはクセのない作りたての風味より、やや酸っぱいポイを好むようです。

一方、遠出をする際にはパイアイをティーリーフで包んで持ち歩き、食べる際に水を加えてさらに練り、食べるごとにポイに仕立てたものでした。

Photo Courtesy of Hawaii State Archive

ポイはヘルシーなスーパーフード！

ちなみに、体格のいいハワイアンの好物ということで、ポイを高カロリー食物と思ったら大間違い。ポイは時にスーパーフードとも呼ばれ、滋養豊かな一方、ごくヘルシーな食物でもあることが知られています。

たとえば脂肪分ゼロなのはもちろん、植物繊維やビタミン類、カルシウムが豊富で、意外にローカロリー。そのため、ホノルルでテリー新谷博士が提案したワイアナエダイエット(伝統的なハワイの食生活に立ち戻ることで薬を使わずに肥満や高血圧、高コレステロール、心臓病など現代病を克服しようという食事療法)でも、ポイは大いに推奨されています。しかもグルテンをはじめいかなるアレルゲンも含まないので、ごく安全なベビーフードとしても知られているのです。

ポイとロミサーモンを組み合わせたランチパックもスーパーで買える。二つ合わせてカロリーはたったの170カロリー

ポイ作りの伝統が近年、復興中

また近年は、健康上の利点とはまた違った観点で、ポイが脚光を浴びています。タロイモ栽培やポイ作りはハワイアンのアイデンティティの大切の一部であるという意識が広がり、ポイ作りを試みる若い世代が増えているのです。

そのため最近では、ハワイアナのクラスで伝統的なポイ作りを教える学校や、イベントでポイ作りを披露する団体も。ポイ作りの用具、前述のパパ･クイアイやポハク･クイアイを作るワークショップも登場しています。いわばポイ作りは、ハワイの伝統生活への回帰の象徴といえるでしょう。

ハワイ州議会の開会イベントでポイ作りを実演するカメハメハスクールの生徒達

ハワイアンの愛するポイはハワイ料理店で食べられるほか、各スーパーでも簡単に買えます。そのままで食べるではなく、御飯同様、ロミサーモンやカルアピッグなど塩味の強いものと一緒に食べるのがハワイ流。ぜひ体験してみてください。