講座詳細
ハパ・ハオレ (1900s)
20世紀初頭にアメリカで起こったハワイ音楽ブームとは?
- 20世紀初頭、ハワイ音楽ブームがハパ・ハオレ・ソングのヒット曲によって作られた。
- ハパ・ハオレとはハワイアンと白人の混血を指す言葉。英語の歌詞のなかにハワイ語やピジン・イングリッシュが挿入されハワイへの郷愁を歌う歌をハパ・ハオレ・ソングという。
- ハパ・ハオレ・ソングに合わせて踊るフラはハパ・ハオレ・フラと呼ばれ、伝統ハワイアンのフラと一線を画すもの。
ハパ・ハオレってなに?
ハパ・ハオレという言葉を聞いたことがありますか?
ハワイ音楽の中にハパ・ハオレ音楽、ハパ・ハオレ・ソングと呼ばれるものがあります。ハパはハワイ語で「(全体の一)部分」「混血」、ハオレはハワイ語で「白人、アメリカ人」という意味です。ハパ・ハオレ・ソングを定義するなら「英語の詞で歌われるハワイ音楽のスタイルをとった楽曲」となります。時代的には1900年代から1960年代までの間に書かれた楽曲を指すのが一般的。今もよく演奏されフラダンサーに踊られる代表的なハパ・ハオレ・ソングのなかには、『ワイキキ』『ブルー・ハワイ』『ラブリー・フラ・ハンズ』『キープ・ユア・アイズ・オン・ザ・ハンズ』などがあります。これらハパ・ハオレ・ソングは、ハワイの地を遠くから想うロマンチックな内容の歌詞で、その時代時代に流行している音楽スタイルを取り入れたポップ・ミュージックとして世に広まりました。
ハパ・ハオレ・ソングを生み出していたのは、ハワイから遠く離れたニューヨークの音楽シーンで活躍するアーティストたちでした。ハワイがまだ上流階級の"バカンス地"だった時代に、楽園を夢見るアメリカ人が南の島への憧れのイメージを歌にして表現したのでした。アメリカ本土で作られるハワイ音楽に、ハワイ・ローカルのアーティストも作曲家、ミュージシャンとして関わっていました。彼らは遠い故郷の島への郷愁を歌に込め、これもハパ・ハオレ・ソングの歌詞の特徴のひとつとなりました。
ハパ・ハオレ・ソングに合わせて踊るフラダンサーの衣装にも特徴がありました。セロファンやラフィアでできたスカートから太ももを覗かせ、ビキニ・トップやココナッツ・ブラをつけただけの上半身というセックス・アピールいっぱいの姿で踊る彼女たちは、南国ロマンスの象徴でした。メディアの露出がそれをさらに助長しました。
「ハパ・ハオレ・フラは、ハワイの文化を冒涜する白人に媚びた踊りだ」と強く批判する人々の存在も無視できません。しかし、ある時代を代表するひとつのスタイルとしてハパ・ハオレ・フラをパフォーマンスに取り入れるフラ・ハーラウも多く存在するのは興味深いところです。
ハパ・ハオレ・ソングはいつ生まれたか?
最初に書かれた、もっとも古いハパ・ハオレ・ソングはどの曲なのか。
"Sonny" Cunhaが書いた1903年の『マイ・ワイキキ・マーメイド』がそれだ、というのが定説です。その数年後、彼が書いたもうひとつの曲は、ハパ・ハオレ・ソングの代表作として今も愛され、歌い踊られているので、知っている人も多いでしょう。『マイ・ハパ・ハオレ・フラ・ガール』というタイトルのその歌はこんな内容です。
トロピカルな気候のあの場所で
彼女たちがフラ・フラ・ダンスを踊ってる
チョコレート色の肌のあの娘に恋してしまった
フラ・フラ・ダンスを習っていたら
いつかあのハパ・ハオレ・フラ・ガールを
僕の彼女にするんだ
夢の彼女は
僕のハパ・ハオレ・フラ・ガール
ハパ・ハオレ・ソングがアメリカの大衆音楽としてブレイクするきっかけになったのは、1912年にブロードウェイで公開された『バード・オブ・パラダイス』でした。後に映画化もされ、ハワイとハワイ音楽とフラを、かなり偏った描き方にせよ、広く大衆に広めることになりました。良きにつけ悪しきにつけ、ヒット曲としてのクオリティーを兼ね備えたハパ・ハオレ・ソングは、虚構のワイキキとフラガールのイメージをアメリカ中に、そして世界に売ることに一役買ったのでした。
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よしみ Nui だいすけDaisuke Yoshimi担当講師
【インタビュー動画あり】 1967年2月9日生まれ、神奈川県横須賀出身。1991 年よりハワイ在住。ハワイ大学卒業。フラ、ハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・コーディネート活動を行う。ハワイのクムフラやミュージシャンとの親交も幅広い。フラダンサーとして、メリー・モナーク、キング・カメハメハの大会出場経験あり。著書に『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ、『LIVE ALOHA~アロハに生きるハワイアンの教え』がある。近年、フラダンサーを対象とした日本での講演・セミナー活動に力を入れている。
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