講座詳細
聖地モクオラ(ココナッツアイランド)
ハワイ島指折りの聖地
モクオラには、ヒロ・ハワイアンホテルの裏から橋でつながっている
ハワイ島ヒロの主だったホテルが集まる、バニヤンドライブ(バニヤンの大樹の並木道)。ヒロのダウンタウンに近く、ヒロに滞在した人にはお馴染みのエリアではないでしょうか。
ところがバニヤンドライブのすぐ海側に、ハワイ島屈指の聖地があることは、意外に知られていません。ヒロ・ハワイアン・ホテルの裏から橋でつながるココナッツアイランドが、くだんの聖地。古来、さまざまな意味で神聖視されてきた島で、ハワイ島の紋章にも登場するほどの、大変特別な場所なのです。
ハワイ島の紋章。下のヤシの木が生えた島がモクオラ
なぜなら、モクオラにはかつて癒しを司るカフナ(神官)が常駐。病人に癒しの儀式を授けていました。島のすぐ先の岩の横に淡水が湧き出るスポットがあり、その小さな岩を、病人または付き添いの人間が一周。その間、カフナは病気からの快復を求めて神に祈りを捧げたそうです。古来、ハワイでは淡水と海水の混じるスポットに癒しのマナが宿るとの信条があり、モクオラも、そんなスポットの一つと信じられていたのです。
古代の避難所でもあったモクオラ
モクオラはまた、ハワイ語でプウホヌアと称される避難所的な聖地でもありました。プウホヌアとは、ハワイ各地にかつて存在した駆け込み寺のような聖域のこと。罪人でも敗残兵でも、そこに逃げ込んでカフナの儀式を受ければ王族も手が出せず、命が助かるという特別な地域でした。モクオラ、そしてその対岸にあたるヒロ・ハワイアン・ホテル裏の岸全体がプウホヌアとされ、神聖視されていたのです。
そういった理由から、ヒロの王族やカフナは、昔、モクオラに子供の臍の緒を隠したとか。日本と同じように、臍の緒を重要視する文化があったハワイ。臍の緒は子供や母、先祖との繋がりの象徴であり、加えて臍の緒の行方が子供の未来を暗示するとの信条もあったため、ハワイアンは特別な聖域だったモクオラに臍の緒を隠したのでした。
半神マウイとモクオラの関係
さらにモクオラは、半神マウイにちなんだ神話の舞台としても知られています。なんとモクオラは、元はマウイ島の一部だったのだそうです。
昔々の大昔。人間想いの半神マウイは、人間たちがいつも一生懸命にカヌーを漕ぎ、島から島へと移動しているのを見て、気の毒に思っていました。自分はどこにもアッという間に行ける魔法のカヌーを持っていましたが、人間はそうもいきません。
そこである日、半神マウイは、島々をくっつけることを画策します。力自慢の男を集めて、まずはマウイ島をハワイ島まで引っ張ってくることにしました。大きな魔法の釣り針をマウイ島に引っかけ、カヌーに乗った男たちにハワイ島まで引っ張ってくるよう命じたのですが…。
その際、カヌーを漕ぎながら絶対に振り返ってはいけない、釣り針の魔法が解けてしまうから、と厳命したはずが、一人が振り返ってしまったから大変! 魔法が解け、ハワイ島のすぐそこまで近づいていたマウイ島は、するすると元の場所に戻っていってしまいました。
しかし、幸いというべきでしょうか。その時、魔法の釣り針がかけられていたマウイ島の先端だけは、ポツリとヒロ湾に残りました。それが、今もヒロ湾に浮かぶモクオラなのだそうです。
最後に余談ですが、モクオラを訪れたなら、下の写真のヤシの木もぜひ探してみてください。その幹にはヒロを襲った過去の津波の高さが年代とともに記されており、津波の規模が実感できるはずです。
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森出 じゅんJun Moride担当講師
【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex