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タロ芋と家族の関係
ハワイ語で家族という意味の言葉 ʻOhana(オハナ)はタロ芋のパーツ ʻOhā から出来ていると言われています。
ハワイアンとタロ芋の関係を知ることによって、どうしてそのような言葉になったのかが理解できると思いますので、まずはハワイの神話を簡単にご紹介します。
Hāloa(ハーロア)の伝説;
天を司る父なる神Wākea(ワーケア)とHoʻohōkūkalani(ホッオホークーカラニ)の間に授かった子供は残念ながら死産で、家の東側に埋葬されました。そこから間も無く芽が出てハート型の葉をつけた植物が育ち、その風にはためく大きな葉を持つ植物にHāloanakalaukapalili(ハーロアナカラウカパリリ)と名付けました。
その後間も無く二人の間には2番目の子供が生まれ元気な男の子と育ちます。この子供には最初の子供の名前の一部をとってHāloa(ハーロア)と名付けました。
このハーロアが人類の最初で、ハワイアンはこのハーロアの子孫であると考えられています。そしてそのハーロアの兄ハーロアナカラウカパリリはタロ芋だったのでタロ芋とハワイアンは兄弟であるという事になります。
ʻOhana (オハナ)の関係性;
昔のハワイアンの家族の構成は年長者であるクプナがいて、親の世代のマクア、そして子供たちケイキと孫の世代のモッオプナで成り立っていましたが、家族の中でもそれぞれの役割があり、やるべき仕事の責任がありました。
子供達の間でも年長の子供は年少の子供たちの面倒を見るというように、常に年上のものが年下のものをケアするような役割があったのです。
親の世代は外に出て仕事で忙しく、子供たちといつも近くにいたのはクプナ達。クプナは子供達に歴史や伝統文化を教え伝える役割を持っていました。
そして年老いたクプナ達を助けるのは若者の責任、というようにそれぞれの年代がそれぞれできることを互いに協力しあって生きて行くのが家族の形だったのです。
タロ芋のパーツの名称;
ハワイアンはタロ芋のそれぞれのパーツに細かな名称をつけていました。
まずは芋の部分Kalo(カロ)には ʻohā(オハー)と呼ばれる球根の蕾のようなものがあります。そして芋の周りには huluhulu(フルフル)と呼ばれる根があります。芋の皮の部分は ʻili kalo(イリカロ)カロの皮膚という意味、ʻiʻo kalo(イッオカロ)カロの肉、そして ʻaʻaʻa(アッアッア)カロの繊維というように細かな名称があります。
次に茎の部分はHā(ハー)と呼ばれ、茎の中心部をmāwae(マーヴァエ)、茎のエッジ部分を lihi māwae(リヒマーヴァエ)と呼びます。
カロとハーの間はkōhina(コーヒナ)と呼び、ハーの中間部分からコーヒナの部分をHuli(フリ)と呼び、次のタロ芋を植える時の苗になります。
葉はlau(ラウ)または lūʻau(ルーアウ)と呼び、葉の先端はkaʻe lau(カッエラウ)そしてハートの切り込みの部分を mahae(マハエ)と呼びます。葉柄の中心をpiko(ピコ)お臍の意味、葉脈をaʻa lau(アッアラウ)。まだ開いていない丸まった葉をʻao lūʻau (アオルーアウ)或いはmohola(マホラ)と呼びます。
ʻohā(オハー)の部分はkeiki(ケイキ)「子供」と呼ばれることもあり、それに対して育った kalo(カロ)の部分は makua(マクア)「親」と呼ばれることもあります。
ピコは「臍」、イリは「肌」、イッオは「肉」、フルフルは「体毛」、そしてハーは「呼吸」、このようにいくつかのタロ芋のパーツの名称は人間と共通するものがあることも興味深いのです。
息吹が広がること;
厳密にはここに記載していない言葉もあと少しあるのですが、タロ芋のパーツの名称がたくさんある事に驚かれたのではないでしょうか?
私は最初にタロイモ畑での作業を体験した時にフリと呼ばれる茎の部分に少しだけ芋の部分が付いたものが苗になるという事に驚きました。感覚的には芋の一部を切って埋めておくのかと思ったからです。
もうお気づきかもしれませんが、茎の部分はHā(ハー)呼吸という意味です。なぜタロ芋の茎の部分に呼吸という意味の名称が付いているのか?ハーの部分を植える事によって次の世代が育つのです、まさに呼吸が増して行くわけです。それはハワイアン民族が繁栄して行くことでもあるわけです。
芋に付いた小さな球根の蕾 ʻohā(オハー)は「呼吸のようなもの」という意味で、そこに-naがついてʻohana(オハナ)「呼吸をするもの達」のような意味が「家族」へとなっていったのでしょうか。ちなみにoha(オハ)だけだと生い茂る、繁殖するなどの意味があるので、どちらにしてもタロイモの成長と人類の繁栄は深い関わりがあるのだと思います。
大地から育まれ育ったカロは人類となり、祖先であるカロを食べる事で人は生きることができる、これは人類が自然界の一部であることを示しているのです。
家族の中でクプナをいたわり助ける事と同様に、人は自然を敬い助けることをタロ芋を育て、いただく事で忘れないでおく、そんな理由もあってタロ芋がハワイアンの主食とされてきたのかも知れませんね。
古代ハワイアン達は人間は自然界の一部、或いは宇宙の一部であり、自然界や神々の恩恵をいただいてのみここに存在することができるということを熟知していたのだと思います。
それゆえに常に循環するライフスタイル、サステイナブルな暮らし方ができていたのでしょう。
時代が変わってもハワイアン達が大切にする文化は、クプナ達から伝えられてきた大切な生きる知恵を守り実践し、次の世代へとバトンを渡すこと。
それは現代を生きる私たち全てにとっても大切な生きる知恵となり、大事な何かに気づかせてくれるのではないかと思います。
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ミイラニ・ヨシコ・クーパーMi'ilani Yoshiko Cooper担当講師
Kahaluʻu在住
Halau Kīhene Pua Uluwehi (ハラウ キーヘネプアウルヴェヒ オアフ島/神奈川)主宰、クムフラ
Lamakū Hawaiian Study Education (ラマクーハワイアンスタディーエジュケーション)主宰
アロハフロウファウンダー
プランツメディスンメイカー
ハワイ大学ヒロ校ハワイ学科卒業 ハワイアンイマージョンスクールNāwahīokalaniōpuʻu(ナーヴァヒーオカラニオープウ)で教鞭を執る
ハワイ大学マノア校言語学修士
2006年正統な伝統儀式のもとクムフラの称号を与えられる
フラヘブン(雑誌)に2年半連載ページを執筆
個人、企業向けの様々なハワイ文化講座を指導
現在ビショップ博物館Lā Kūleʻaプログラムのフラクラスを担当
アンティ マイキのフラを継承するクムフラ、メイ カママル クラインの元、指導者としてフラを学び2006年8月にウニキを経てクムフラの称号を与えられる
ジョニー ラム ホー、レイ フォンセカの元よりメリーモナーク フラ フェスティバルに出場経験多数
カジメロブラザースやハパなど有名ミュージシャンのコンサートの出演経験多数
また、ダンサーとしての体作りの必要性からヨガを始め、ハワイの文化とヨガを融合させた Alohaflowを独自で考案
ハワイの価値観をもとにHoʻoponopono的なライフスタイリングや自然と調和できるサステイナブルなライフスタイルを目指している