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2020.10.20

ハワイの諺 Ōlelo Noʻeau

ハワイの諺や格言のことをʻŌlelo Noʻeau (オレロ ノエアウ)と言います。

ʻŌlelo (オレロ)は言葉という意味、そしてNoʻeau (ノエアウ)は賢い、上手い、器用な、芸術的、才能ある、専門的、技術的というような意味があり、つまり「スキルが詰まった言葉」とでも表現しておきましょう。

 

諺と格言

どの国の文化にも似たような諺や格言があると思いますが、日本の諺や格言とはこのような定義で表現されています;

諺とは、観察と経験、そして知識の共有によって長い時間をかけて形成された物。簡潔で覚えやすい言葉で、言い当て妙であり、真実を鋭く言い当てる。諺は文化に属する者の思考に、意識的あるいは無意識的に影響を及ぼす。

 

格言とは、人生の真実や機微を述べ、万人への戒め、教訓となるような簡潔にした言葉のこと。

 

ハワイアンが残してきた言葉

ハワイの先人たちは生活の中で、どのような言葉を残してきたのでしょう。

1820年代アメリカのニューイングランドから宣教師たちがハワイへ来島するまで、ハワイ語は文字を持たない口頭言語だったので、人々は話し言葉の中にたくさんの知識を蓄えて守り伝えてきました。

話し言葉は、古きハワイ文化的表現の最上級の形と言っても良いでしょう。それらはハワイアンの生活や日々の思考を私たちに身近に感じさせてくれるものであり、伝統的なハワイの価値観を理解させてくれるものなのです。

 

ハワイ語諺・格言集とMary Kawena Pukui

そのような言葉を集めʻŌlelo Noʻeau(オレロ ノエアウ)という一つの本としてまとめたのがMary Kawena Pukui(メリー・カヴェナ・プクイ)女史。

本の中に集められた言葉は、1957年にSamuel H. Elbertと共に作ったハワイ語辞書が出版される以前の1910年から1960年までの間に集められたもので、まだオキナやカハコーの表記が統一されてない部分が見られます。

集められた言葉は「諺」という一言では表現できず、英語の表現を含む格言、教訓的格言、ジョーク、なぞなぞ、預言、チャント(詠唱)の一部などが含まれ、それらを使って比喩、類推、寓話、擬人、風刺、洒落などを表しています。

 

カヴェナは1895年にマサチューセッツ州出身の白人の父とハワイ島カウー出身のハワイアンの母の間に生まれ、ハーナイ(養子)としてハワイアンの祖母に育てられます。

幼少期の祖母との暮らしの中で彼女はハワイ語、習慣、信念、宗教、家族の歴史などの知識をしっかりと埋め込まれることになります。

のちに彼女は翻訳家、系図学者、クムフラ、諺の収集家として活躍するわけですが、彼女は常にハワイの道(ハワイのやり方)を生涯を通して愛し、それらを自ら身につけ、いつもハートの近くに携えるレイのように大切にしました。まさに「人生のレイ」と呼べるように。

彼女が学び愛したハワイの道は輪になったレイのように、ハワイの過去とそして未来をつないだものとなったのです。
 

インデックスごとに言葉の例を見ていきましょう

ʻŌlelo Noʻeauを開くと、言葉がハワイ語のアルファベット順に番号と共に記されています。まずはハワイ語の言葉、英語訳、そして言葉の説明などが書かれています。

本の後ろにはインデックスがあり6つの項目から言葉を探すことができます。

 

ではインデックスの項目ごとにどのような言葉があるか見ていきましょう。

I 一般

 2484  Ola I ka wai a ka ʻōpua. (オラ イ カ ヴァイ ア カ オープア)

「雲からの水には生命がある」

雨は生命を与える

 

インデックスの一般から「生命」という項目で出てきた言葉です。

生命の源は水であり空から与えてもらっていることを示す言葉です。
 

II  地名(実際の地名と伝説の地名)

1663. Ka wana momona o Mokoliʻi.(カ ヴァナ モモナ オ モコリッイ)

「モコリッイの太ったウニ」

オアフ島ウィンドワードの小さな島、モコリイは良質のウニがとれることで知られている

 

このようにどこの地域にどんな産物があるかを知らせる言葉もあります。
 

III  人名(人、神、存在と物の名前)

2052  Mai hoʻomāuna i ka ʻai o huli (マイ ホッオマーウナ イ カ アイ オ フリ

mai auaneʻi o Hāloa e nānā.        マイ アウアネッイ オ ハーロア エ ナーナー)

「食べ物を無駄にしてはいけない

ハーロアがあなたを凝視しないように」

食べ物を無駄にしてはいけません、特にポイを。なぜならタロの神様であるハーロアが怒って、いつかその無駄にした人に飢餓を与えます。

 

この言葉のように食べ物を大切にするための教訓を示し、同時にタロイモの神様がハーロアであることも教えている言葉です。
 

IV  鳥(一般的な名称)

2776 Ua ʻelepaio ia ka hana. (ウア エレパイオ イア カ ハナ)

「エレパイオによって仕事が台無しになった」

完成する前に止めなくてはならない仕事について言っている。

エレパイオという鳥は日の出と共に朝一番に起きて鳴き出す鳥で、例えばメネフネのような夜に働く精霊のような存在に知らせるのです。未完成の仕事はそこで台無しになってしまいます。

 

最後まで仕事を完了しないと、全てが無駄になってしまうよというような教訓を伝える言葉となっています。この言葉によってエレパイオという鳥がどういう性質を持った鳥なのかということも知ることができるのです。

 

2777 Ua ʻelepaio ʻia ka waʻa.(ウア エレパイオ イア カ ヴァッア)

「エレパイオがカヌー(ログ)を見つけた」

失敗の兆候を言っている。昔のカヌーメイカーはカヌーに使うコアの木の周りのエレパイオの動きに注意をしていた。もし鳥がその木をつついていたら、使っても無駄になるだけだ、なぜなら耐航性がないからです。

 

鳥が木をつついているということは、そこに虫がいるからで、そのログを使ってカヌーを作っても失敗するだけという言葉から、失敗の兆候を戒めた言葉。
 

V  魚とその他の海洋生物(一般的な名称)

2333 No kāhi heʻe ʻoe.(ノ カーヒ ヘッエ オエ)

「あなたはタコが住む海に属している」

あなたは嘘つき。heʻe(ヘッエ)という言葉は滑るという意味でwahaheʻe(ヴァハヘッエ)「虚偽」という意味の言葉の一部を取っている。

 

1886 Kūkae uli.(クーカエ ウリ)

「タコの墨」

捕鯨時代の娼婦にまつわる言葉で、タコが墨を吐いて逃げるように、賢く不安定な状況から逃げることを言っている。

 

タコという生物の特徴を使ったり、言葉の意味にかけたりしてできている言葉。

 

VI 植物(一般的な名称)

507 He ʻaʻaliʻi kū makani mai au;(ヘ アッアリッイ クー マカニ マイ アウ

ʻaʻohe makani nana e kulaʻi.  アッオヘ マカニ ナーナ エ クラッイ)

「私は風に抵抗するアッアリッイです。どんな強風も私を倒すことはできない。」

自慢の意味で「どんな困難に直面しても動じない」という意味。アッアリッイの低木は最悪の風の中でも、曲がったりひねったりしても滅多に折れたり倒れたりしない。

 

強風にさらされて生息するアッアリッイの性質から、風にも倒れない強さを示すこのような言葉がある。

 

 

 

2942個のこのような言葉が詰まったʻŌlelo Noʻeauは、様々な側面から日々の生活に必要な知識や知恵を私たちに与えてくれたり、また過去のハワイアンの生活がどのようなものであったかを垣間見せてくれたりします。

現在の私たちがこれらの言葉を読んで、ただ文字通りに翻訳しても、言葉の真意を知ることが出来ないことも多く、ハワイの地形であったり、気候であったり、動植物の性質や特徴、または言葉を細かに分解した意味など、ハワイ文化に根付いた多くを知る必要があります。逆に言えば、ʻŌlelo Noʻeauの言葉を一つ一つ分析していくことで様々な知識を学ぶことができるということでもあります。

私たち外国人がハワイに来て、ハワイアンの方達と関わる時、一番大切なことはハワイの物の考え方、ハワイ文化に潜む価値観を理解し、尊重することではないでしょうか?

彼らがどんなものを信じ、守って来たのかということを理解することで、私たちは日本との共通点を見いだすこともあり、また全く違った信念を見出すかもしれません。

カヴェナが大切に愛し、そして現代の私たちへとレイのように繋いで残してくれた素晴らしい贈り物、ハワイの言霊から新たな気づきや発見がたくさんあると思います。そしてそれに触れることでハワイへの感謝がより深まるのではないでしょうか。

 

 

  • ミイラニ・ヨシコ・クーパー
    Mi'ilani Yoshiko Cooper
    担当講師

    Kahaluʻu在住
    Halau Kīhene Pua Uluwehi (ハラウ キーヘネプアウルヴェヒ オアフ島/神奈川)主宰、クムフラ
    Lamakū Hawaiian Study Education (ラマクーハワイアンスタディーエジュケーション)主宰
    アロハフロウファウンダー
    プランツメディスンメイカー
     

    ハワイ大学ヒロ校ハワイ学科卒業 ハワイアンイマージョンスクールNāwahīokalaniōpuʻu(ナーヴァヒーオカラニオープウ)で教鞭を執る
    ハワイ大学マノア校言語学修士
    2006年正統な伝統儀式のもとクムフラの称号を与えられる
    フラヘブン(雑誌)に2年半連載ページを執筆
    個人、企業向けの様々なハワイ文化講座を指導
    現在ビショップ博物館Lā Kūleʻaプログラムのフラクラスを担当
    アンティ マイキのフラを継承するクムフラ、メイ カママル クラインの元、指導者としてフラを学び2006年8月にウニキを経てクムフラの称号を与えられる
    ジョニー ラム ホー、レイ フォンセカの元よりメリーモナーク フラ フェスティバルに出場経験多数
    カジメロブラザースやハパなど有名ミュージシャンのコンサートの出演経験多数
    また、ダンサーとしての体作りの必要性からヨガを始め、ハワイの文化とヨガを融合させた Alohaflowを独自で考案
    ハワイの価値観をもとにHoʻoponopono的なライフスタイリングや自然と調和できるサステイナブルなライフスタイルを目指している

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