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2020.10.06
ルペ
ここがポイント
日本とも共通の文化であるルペ。そのハワイでの使い方や、様々な場面で登場するルペを詳しくご紹介します。
あやとり、綱引き、腕相撲…これらは日本の遊びかと思いきや、古代ハワイで人々が楽しんでいた遊びでもあります。遠く離れた場所でも、共通する文化があることには驚かされますが、もう一つ、日本も含めて、アジアから世界に広がった文化である「凧」については、ハワイでは遊びの一つだっただけでなく、様々な場面で登場しています。ハワイの凧、ルペ(Lupe)について、詳しく見てみましょう。
凧の種類
古代の人々が、余暇の時間に楽しんだ凧揚げ(Hoʻolele lupe)。『Hawaiian Dictionary』(University of Hawaii Press)では、4種類の凧が存在したとしています。
・Lupe lā(lā-太陽) 丸型
・Lupe mahina(mahina-月) 三日月型
・Lupe manu(manu-鳥) 鳥型
・Lupe maoli(maoli-現地の、本物の) ひし形(ヨーロッパ由来の形。外国人により伝わったとみられています。)
ハワイの凧の材料と作り方
(アウラニ・ディズニー・リゾート&スパ内の展示より。©Disney)
軽くて丈夫なハウ*やウィリウィリの木**、竹がルぺの骨組みに使われていました。骨組みを固定する際に使われたのが、ハワイ固有種の植物、オロナー(Olonā)***の茎から取った繊維を編んだ糸です。オロナーの長い茎を裂いていって繊維を取りましたが、大変強度のある繊維です。
*ハウ
**ウィリウィリ
(Wikimediaより。Forest & Kim Starr)
***オロナ―
(Wikimediaより。茎は2.5m程にまで成長します。)
骨組みの上から、その形に添って切り取られたカパをオロナ―の糸でくくり付け、カパを長細く切った尾と、カパで作った凧糸(aho)を付けて完成です。
カパについての詳しい説明はこちら
出来上がった凧は、古代も現在も同じように遊びますが、二人が凧を同時に揚げ、糸を相手の凧の糸に絡ませて落とすという、日本の「喧嘩凧」のような遊び方もされていました。
情報伝達に使われた凧
凧は空に揚げると、遠くからも多くの人々が目にすることができるため、メッセージを伝える手段として使うことも古代ハワイでは行われていました。サーフィンは、王族のみならず、一般の人々にとっても大切な余暇の過ごし方の一つです。ワイキキには、サーフィンをする人々が訪れたサーフィンのためのヘイアウPapaʻenaʻenaがあり、波の状態がサーフィンに向いているようであれば、カフナがLupe mahina(三日月型)を空に揚げて人々に知らせていました。Papaʻenaʻenaは、ワイキキの海が遠くまで見渡せるダイヤモンドヘッドの裾野にあり、その地は現在、私立の女子高(La Pietra Hawaii School for Girls)となっています。
(黄色い枠がPapaʻenaʻenaがかつてあった場所。)
(Papaʻenaʻenaの内部の様子。National Park Service ウェブサイトより。)
ペトログリフに登場するルぺ
外国人がハワイに上陸する以前から、ルぺはハワイの文化の一つとして行われていたということが分かるのが、古代の人々が生活の様子を石に彫り、絵で伝えてくれているペトログリフです。
ルぺに関するペトログリフは、ハワイ島のKaʻūpūlehu、Puakō、Kaʻū地区で確認されており、鳥型のルぺの形が彫られたものも発見されています。
鳥型のペトログリフのスケッチはこちらのページでご確認ください。
(参考:ハワイ島南西部Puʻu Loaのペトログリフ。National Park Serviceウェブサイトより。)
ルぺという言葉は、凧揚げの凧のみならず、様々な場面で登場しています。
海に登場するルぺ
(Wikipediaより。)
ルぺはハワイ近海に生息するエイのハワイ語名で(hīhīmanuともいいます)、その形、泳ぐ姿が凧と通ずることから同じ名前を持っています。
夜空に登場するルぺ
(Wikipediaより。)
秋の夜空を飾る、ペガサス(ペガスス)座。大きな四角形を持つ星座ですが、この四角形はKa Lupe o Kawelo(カヴェロの凧)と呼ばれており(比較的新しい呼び方です)、その背景には、次のような伝説があります。
幼いカヴェロ(Kaweloleimakua)が、共に育った親戚のカウアホアが凧揚げをしているのを見て、祖父母に頼んで自分にも凧を作ってもらい、さっそくカウアホアの隣で凧を揚げました。カヴェロの凧糸がカウアホアの凧糸と絡んでしまい、ついにカウアホアの凧糸が切れて凧が飛んで行ってしまいました。空に残ったカヴェロの凧が、夜空の星座の名となったというわけです。
Ka Lupe o Kaweloの詳しい図については、こちらのサイトの“Star Line 4 Ka Lupe o Kawelo”をご覧ください。
神話に登場するルぺ
ハワイの神話にもルぺは登場しています。
その名にもルぺが入っているロールぺ(Lōlupe)というマウイ島の神は、悪人には死を、善人には庇護を与える神。例えば、王の悪口を言うような人や、戦争時には敵の王の死を祈った人物を発見し、死をもたらすということで、戦士が恐れていた神です。Lōlupeは、エイのや凧の姿で表されます。
よく知られている半神Māuiもルぺを操った神の一人で、カヌーをルぺの力で引っ張り、島から島へと素早く移動できるようにしました。
ハワイで凧揚げを楽しむ
アメリカでは、4月はいわゆる「凧月間(National Kite Month)」とされており、各地で凧に関するイベントが行われています。ハワイでも、4月の終わり頃に、マウイ島のラハイナで中国風の凧に関するフェスティバル、「チャイニーズ・カイト・フェスティバル」が開催されています。
「チャイニーズ・カイト・フェスティバル」詳細はこちら
ハワイは、貿易風がいつも吹き付けていますので、風がとても気持ちのいい所です。この風を捕まえて遊ぶホオレレ・ルぺ(凧揚げ)は、ハワイの文化を体験するという意味でも、魅力的な遊びかもしれません。凧揚げをする際には、他の人々に凧が当たったり、紐を足に絡ませてしまうような事故のないように、公園などでも特に広い場所が必要です。
凧揚げをしてはいけない場所には、凧揚げ禁止の掲示がありますので、遊ぶ前にはよく確認してから楽しんでみてください。
凧の種類
古代の人々が、余暇の時間に楽しんだ凧揚げ(Hoʻolele lupe)。『Hawaiian Dictionary』(University of Hawaii Press)では、4種類の凧が存在したとしています。
・Lupe lā(lā-太陽) 丸型
・Lupe mahina(mahina-月) 三日月型
・Lupe manu(manu-鳥) 鳥型
・Lupe maoli(maoli-現地の、本物の) ひし形(ヨーロッパ由来の形。外国人により伝わったとみられています。)
ハワイの凧の材料と作り方
(アウラニ・ディズニー・リゾート&スパ内の展示より。©Disney)
軽くて丈夫なハウ*やウィリウィリの木**、竹がルぺの骨組みに使われていました。骨組みを固定する際に使われたのが、ハワイ固有種の植物、オロナー(Olonā)***の茎から取った繊維を編んだ糸です。オロナーの長い茎を裂いていって繊維を取りましたが、大変強度のある繊維です。
*ハウ
**ウィリウィリ
(Wikimediaより。Forest & Kim Starr)
***オロナ―
(Wikimediaより。茎は2.5m程にまで成長します。)
骨組みの上から、その形に添って切り取られたカパをオロナ―の糸でくくり付け、カパを長細く切った尾と、カパで作った凧糸(aho)を付けて完成です。
カパについての詳しい説明はこちら
出来上がった凧は、古代も現在も同じように遊びますが、二人が凧を同時に揚げ、糸を相手の凧の糸に絡ませて落とすという、日本の「喧嘩凧」のような遊び方もされていました。
情報伝達に使われた凧
凧は空に揚げると、遠くからも多くの人々が目にすることができるため、メッセージを伝える手段として使うことも古代ハワイでは行われていました。サーフィンは、王族のみならず、一般の人々にとっても大切な余暇の過ごし方の一つです。ワイキキには、サーフィンをする人々が訪れたサーフィンのためのヘイアウPapaʻenaʻenaがあり、波の状態がサーフィンに向いているようであれば、カフナがLupe mahina(三日月型)を空に揚げて人々に知らせていました。Papaʻenaʻenaは、ワイキキの海が遠くまで見渡せるダイヤモンドヘッドの裾野にあり、その地は現在、私立の女子高(La Pietra Hawaii School for Girls)となっています。
(黄色い枠がPapaʻenaʻenaがかつてあった場所。)
(Papaʻenaʻenaの内部の様子。National Park Service ウェブサイトより。)
ペトログリフに登場するルぺ
外国人がハワイに上陸する以前から、ルぺはハワイの文化の一つとして行われていたということが分かるのが、古代の人々が生活の様子を石に彫り、絵で伝えてくれているペトログリフです。
ルぺに関するペトログリフは、ハワイ島のKaʻūpūlehu、Puakō、Kaʻū地区で確認されており、鳥型のルぺの形が彫られたものも発見されています。
鳥型のペトログリフのスケッチはこちらのページでご確認ください。
(参考:ハワイ島南西部Puʻu Loaのペトログリフ。National Park Serviceウェブサイトより。)
ルぺという言葉は、凧揚げの凧のみならず、様々な場面で登場しています。
海に登場するルぺ
(Wikipediaより。)
ルぺはハワイ近海に生息するエイのハワイ語名で(hīhīmanuともいいます)、その形、泳ぐ姿が凧と通ずることから同じ名前を持っています。
夜空に登場するルぺ
(Wikipediaより。)
秋の夜空を飾る、ペガサス(ペガスス)座。大きな四角形を持つ星座ですが、この四角形はKa Lupe o Kawelo(カヴェロの凧)と呼ばれており(比較的新しい呼び方です)、その背景には、次のような伝説があります。
幼いカヴェロ(Kaweloleimakua)が、共に育った親戚のカウアホアが凧揚げをしているのを見て、祖父母に頼んで自分にも凧を作ってもらい、さっそくカウアホアの隣で凧を揚げました。カヴェロの凧糸がカウアホアの凧糸と絡んでしまい、ついにカウアホアの凧糸が切れて凧が飛んで行ってしまいました。空に残ったカヴェロの凧が、夜空の星座の名となったというわけです。
Ka Lupe o Kaweloの詳しい図については、こちらのサイトの“Star Line 4 Ka Lupe o Kawelo”をご覧ください。
神話に登場するルぺ
ハワイの神話にもルぺは登場しています。
その名にもルぺが入っているロールぺ(Lōlupe)というマウイ島の神は、悪人には死を、善人には庇護を与える神。例えば、王の悪口を言うような人や、戦争時には敵の王の死を祈った人物を発見し、死をもたらすということで、戦士が恐れていた神です。Lōlupeは、エイのや凧の姿で表されます。
よく知られている半神Māuiもルぺを操った神の一人で、カヌーをルぺの力で引っ張り、島から島へと素早く移動できるようにしました。
ハワイで凧揚げを楽しむ
アメリカでは、4月はいわゆる「凧月間(National Kite Month)」とされており、各地で凧に関するイベントが行われています。ハワイでも、4月の終わり頃に、マウイ島のラハイナで中国風の凧に関するフェスティバル、「チャイニーズ・カイト・フェスティバル」が開催されています。
「チャイニーズ・カイト・フェスティバル」詳細はこちら
ハワイは、貿易風がいつも吹き付けていますので、風がとても気持ちのいい所です。この風を捕まえて遊ぶホオレレ・ルぺ(凧揚げ)は、ハワイの文化を体験するという意味でも、魅力的な遊びかもしれません。凧揚げをする際には、他の人々に凧が当たったり、紐を足に絡ませてしまうような事故のないように、公園などでも特に広い場所が必要です。
凧揚げをしてはいけない場所には、凧揚げ禁止の掲示がありますので、遊ぶ前にはよく確認してから楽しんでみてください。
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ロバーツさゆりSayuri Roberts担当講師
東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。
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