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2014.01.18

天地創造-クムリポ

クムリポはこの世の始まりから王族の誕生までをつなげるチャント

  • クムリポは王家の血統を示すチャントだが、むしろハワイの創世記として知られる
  • それは王族の血統を、この世の誕生や神々の出現から説明しているため

王族の神性を物語るチャント
今日、私達が多くのハワイ神話を学ぶ源となっている古代の叙事詩に、「クムリポKumulipo」があります。クムリポはハワイ語で「生命の源」を意味し、ハワイの創世記ともいえるもの。そもそもはハワイの王族の聖なる血統を伝える2000行以上の長いチャント(詠唱)として、王家に伝わってきました
 

創られたのは1700年前後とされていますが、19世紀終盤、ハワイ王国7代目のカラカウア王の命で(詠唱での記録から)ハワイ語に書き起こされ、カラカウア王の妹で8代目のリリウオカラ女王により、英語に翻訳されました。
 

クムリポでは、王族が神々から繋がる高貴な人々とされており、神々の直系子孫としてマウイ島の大酋長ピイラニや、ハワイ島の大酋長ウミが登場。カラカウア王家へと繋がることで、王族の神性を裏付ける形となっています。
 

しかも物語の始まりは神代にとどまりません。そもそもはこの世が日光も射さないドロドロの暗黒から始まり、やがて海、大地に命が誕生し、神や人、王族が生まれるというように、この世の始まりから王族の出現までを語っている点がユニークです。クムリポが王族の血統にまつわるチャントというより、ハワイの創世記として知られる所以でしょう。

クムリポを初めてハワイ語に書き起こしたカラカウア王(左)
リリウオカラニ女王は革命勢力によりイオラニ宮殿に
幽閉されている間に、クムリポを英訳した(右)
Photo Courtesy of Hawai‘i State Archives

ハワイアンとタロイモは兄弟
クムリポでは人類の始まりとして、数種類の物語が紹介されています(カラカウアによってクムリポが編纂された際、いくつか異なる伝承が1本にまとめられたため、とも言われます)。うち1つが、「タロイモはハワイアンの祖の兄にあたる」というもの。父なる空、ワケア神とその娘との第一子は未熟児で、死産でした(赤ん坊はワケア神とその妻、母なる大地のパパ神の子供だった、という説もあります)。
 

子供は家のそばに埋められ、その身体からタロイモの茎(ハロア)が生えてきました。それにちなんで2人の第2子はハロアと名付けられ、健やかに成長し、ハワイアンの始祖となりました。
 

そのほか、ライライという女性と神カネの間に神々が、キイという人間との間に人々が生まれ、ハワイアンの始祖になったという話。また女神ハウメアの脳から次々と子が生まれハワイアンの始祖になった、との話も含まれています。

クムリポによれば、タロイモは
ハワイアンの始祖の兄とか
Photo
Courtesy of Hawai‘i
Tourism Hawai‘i(HTA)/Tor
Johnson

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  • 森出 じゅん
    Jun Moride
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
    森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex

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