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ハワイの地理・地質
- ハワイ諸島は、もっとも近い陸地から3000km以上も離れた絶海の孤島である。この地理的な特徴が、他では見られない自然を造り出した。また、絶えることのない火山活動がつねに新しい大地を生み出すとともに、人間社会を脅かす存在でもあった。そのため、火の女神ペレに代表される火山信仰を生み出した。
- 火山活動は長期的な予測の難しい分野なので、いつ噴煙が上がったり、溶岩が流れるかわかりません。危険を伴うこともあるので、現地情報をしっかり収集してから訊ねるようにしたい。
地理:ハワイの立地と特徴
ハワイ諸島は地理的・地質的にとても興味深い特徴を備えています。周辺の大陸や諸島から3000km以上も離れた絶海の孤島に位置する土地は、地球上ではハワイ諸島しかありません。しかもハワイはこれまで、他のいかなる大陸とも地続きになったことがないため、独自の自然体系が発達してきました。ハワイ諸島は、北西ハワイ諸島を含め、すべての島々を合わせても約1.66万km2。日本の四国の面積(約1.83万km2)に及びません。しかし、この小さな島々には日本の気候分布にも匹敵する変化と、富士山を超える高山の連なり、止むことなく活動を続ける火山があるダイナミックな土地なのです。
しかし、自然の特殊性は変化に対する脆弱性も併せ持ちます。合衆国本土の、500分の1に満たない面積ながら、本土を凌ぐ絶滅種や絶滅危惧種があること、その自然を背景に培われたハワイ文化も多くの試練を浴びています。ハワイで、いや世界でもっとも良く知られる場所と言ってよいワイキキも、わずか200年前には一面の湿原地帯でした。今日の人々にとり、湿原は環境保護の対象と映るでしょうが、伝統的なハワイ社会では彼らの生存を維持する、きわめて重要な土地でした。カメハメハ大王を初めとする歴代の権力者は湿原地帯に住みました。これはハワイ諸島の誕生に関わる特殊な地質と密接に関わります。
多様な自然を抱くハワイ諸島のなかで、もっとも大きな印象を与えるのは火山活動です。今日でもハワイ島では活発に溶岩を流し、その活動は将来新しい島となるだろう海底火山に連なります。ハワイ島はつねに拡張を続け、大地を塗り替えてきました。火の女神ペレに代表されるハワイの宗教と文化は、火山活動に大きな影響を受けてきたのです。
火山の島としてのハワイ諸島にはどのような特徴があるでしょう。なぜこの小さな島々には、地球上に出現する気候のほとんどすべてが存在するのでしょうか。これらの答は、地球規模で流れる貿易風の影響や4000mを超える高山の存在、海流や緯度、さらには地球プレートの移動などの自然現象が、ある約束ごとを持って存在していることを知ることで理解できます。ハワイ固有の自然は、地球上のどの土地とも異なる、独自の自然を背景にしています。「自然」のカテゴリーは、このようなハワイの「特殊性」を背景に展開します。
ハワイ諸島とプレートの移動、貿易風
キラウエア・カルデラ内のハレマウマウ・クレーターから噴き出す噴煙
近藤純夫
深い浸食を受けたカウアイ島のワイメア渓谷
近藤純夫
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近藤 純夫Sumio Kondo担当講師
エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフ。ハワイ州観光局アロハプログラム・キュレーター。ハワイ関連の著書に『フラの花100 』『新ハワイアンガーデン』(平凡社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)、『フラの本』(講談社)、『Dear Maui マウイを巡る12の物語』(共著/ Little Gift Books)、訳書に『イザベラ・バードのハワイ紀行』(平凡社)など。
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