ハワイ史上指折りの激戦の舞台。14世紀以降のマウイ王族も眠る

• ハワイ島のカメハメハの軍隊はここでマウイ軍と激突。勝利を収めた
   
• マウイ王族の埋葬場でもある

西マウイ山脈に囲まれたイアオ渓谷といえば、マウイ島を代表する景勝地の1つ。その雄大な景観から、｢太平洋のヨセミテ｣とも称されています。自然美を誇るだけでなく、約1000年前からハワイアンの集落ができ王族も好んで暮らしたこの渓谷は、歴史の上で重要な土地でもありました。王族の居住地はつまり、政治の中心地。そのため渓谷は、多くの戦いの舞台となった過去を持ちます。さらには数多くの王族が埋葬された、大変な聖地としても知られています。

イアオ渓谷のシンボルといえるのが、標高360メートルのイアオ･ニードルです。その正式名はクカエモク。伝説ではクカエモクは、海の神カナロアの身体の一部だそう。半神半人マウイの娘を誘惑した青年、プウオカモアがマウイによって岩に変えられたものとの伝説もあります。

渓谷全体を見張らせる位置にあったクカエモクはまた、マウイの戦士により、戦時の見張り台としても使われていました。渓谷はいくつもの戦いの舞台となっていますが、中でも名高いのがケパニヴァイの戦いでしょう。1790年、ハワイ島出身のカメハメハ大王がマウイ島を征服した際の戦いで、ハワイ史上指折りの激戦として後世に名を残しています。

マウイ島カフルイ湾に上陸したカメハメハ大王の大軍団は、イアオ渓谷でマウイ軍と衝突。激しい戦いが勃発しました。マウイ軍を率いていたのはカラニクープレ(その父であるマウイ島の大酋長カへキリは、1783年にオアフ島を征服後、オアフ島で暮らしていました)。父の留守を預かるカラニクープレの戦士とカメハメハ軍は2日にわたり激しく戦い、渓谷には槍で打ち合う音や戦士の叫び声が響きわたったそうです。多数の死者が出て、最終的にはカメハメハ軍が勝利。この戦いでイアオ河が遺体で埋まったために河の流れが逆流したとされ、後世その戦いは｢河を塞き止めた戦い(ケパニヴァイの戦い)｣と呼ばれるようになりました。

この時、マウイの酋長カラニクープレは何とか生き延び、オアフ島に逃亡します。ですがカメハメハ軍がオアフに侵攻した1795年、カメハメハ軍の手により、ついに命を落としたのでした。

イアオ渓谷はまた、14世紀の昔から、王族の埋葬地でもありました。数百人ものマウイの高位の王族が、この渓谷の秘密の洞窟に埋葬されたと信じられています。18世紀のハワイアンで歴史家のカマカウによると、最初に埋葬されたのは14世紀の酋長、カパヴァ。最後は1736年に死去した酋長カラニクイホノイカモクだそうです。渓谷の埋葬場については多くの記録に残されていますが、正確な場所はまだわかっていません。ハワイ王国7代目君主のカラカウア王も、捜索隊を出して渓谷を探したものの、洞窟を発見することはできませんでした。

イアオ渓谷は現在、州立公園として整備されており、1キロにわたる舗道を巡ることによって手軽に渓谷の自然を楽しむことができます。イアオ･ニードルに設けられた展望台へは、133階段をのぼって約20分。また公園の一角にはハワイの植物を集めたガーデンも。森林浴を楽しみながら、タロイモの畑やバナナ、ティーリーフ、レッドジンジャーの花々などを観賞できます。

以上のように、緑濃いだけでなく深い歴史にも彩られたイアオ渓谷は、マウイ島では見逃せない名所のひとつ。午後にはイアオ･ニードルが雲に覆われることが多く、どちらかというと午前中の天候の方が安定しているので、なるべく午前のうちに出かけるのがおすすめです。

位置／‘Īao Valley Road終点　
開園／10月～3月は7時～１７時半、4～9月は7時～18時
入場料／無料。ただし駐車場代$5
http://www.hawaiistateparks.org/parks/maui/index.cfm?park_id=36