講座詳細
ハワイ日本文化センター
砂糖キビ農園に入植した日系一世。日本と同じ教育を受けながらも、米国人として第二次世界大戦に出兵して行った二世。そして現在は五世、六世の日系米国人が生まれてくる時代。日本からは常夏の観光地として見られがちなハワイですが、同胞の中に異文化を知る歴史と文化が残されています。
ハワイ日本文化センター Japanese Cultural Center of Hawaiʻi は、ハワイ大学のキャンパスが在るマノアの谷の南側、モイリイリと云う日系人も多く住む地区の一画に在ります。
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ハワイ日本文化センター
元々この場所にはホノルル日本人商工会議所の平屋の建物がありました。つい三十年ほど前のことです。二世や三世の日系人の間で以前から考えられていた、日本から移民してきた自分達の父母や祖父母から受け継いできた文化と歴史を後世に残そうとする活動が活発になり、1987年5月に商工会議所を母体としてJCCHが非営利財団として設立されました。
そして、1994年に新しく建てられたビルの一階に、日系人の歴史と文化的遺産を残す目的で、「おかげさまで」“I am what I am, because of you” と云う名の展示場が開設されました。
ハワイ日本文化センター
ホノルル日本商工会議所の旧ビル
展示場の入口には、ハワイの日系人が日常生活の中で家族や日本語学校から学んでいた大切な言葉が、石碑のような形にして並べられています。「感謝」や「責任」のように、今でも人々の生活にとって重要な教えばかりでなく、「忠義」「犠牲」「義理」のような戦前の日本で教えられていた事柄が、そのまま日系の親から若者に伝えられていたことが分かります。「頑張れ」や「仕方がない」と云う言葉にも当時の日系人のご苦労がうかがえます。
JCCH展示場入口
展示は、後に元年者と呼ばれるようになる1868年の日本からの初移民、1885年に開始された官約移民の紹介から始まり、入植した砂糖キビ農園での労働、当時の家の様子へと続きます。
時代は二十世紀になり、明治の終わり頃になると砂糖農園での待遇改善を求めたストライキが起きます。展示は更に、ストライキのもようから当時の街中や日系商店の光景へと移り、第二次世界大戦の時代へと入っていきます。1941年12月の日本帝国海軍による真珠湾攻撃を受け、米国人としてのアイデンティティーを求めて、ハワイ生まれの二世の人々は、次々と志願兵として戦場に出ていきました。生きて家族の許に帰った日系兵士は、GIビル(退役軍人に与えられた援助)を利用して高学歴を得、その後、政治家、弁護士、医者、教育者、事業家として、五十番目の州になるハワイを支えていく様子も、この展示から理解出来ます。
日本文化センターには資料室が併設されており、ハワイの日系人に関する貴重な本や書類が保存されています。ここでボランティアが調査していた中から、1998年に画期的な事業が生まれました。それはオアフ島の真珠湾の西「ホノウリウリ」と呼ばれる地区の谷間に、日系人の間でも忘れ去られていた戦中の強制収容所が存在したことが分かり、その調査活動が始まったのです。その結果、2002年に雑木林と化していた場所から収容所跡が発見され、現在、保存運動が進んでいます。真珠湾攻撃の後、ハワイや米本土の日系米国人が、敵国者のごとき扱いを受けて収容所に送られたことは皆さんもご存知だと思いますが、ハワイでは日系人の人口が大きな割合を占めていたこともあり、強制収容された人達は、領事館や政府関係者、日本語学校教師、商工会議所や県人会、宗教関係者などの、一部の人に限られました。その中で米本土の収容所に送られた人もいましたが、ハワイに用意された幾つかの施設にも収容されていました。
ホノウリウリ強制収容所を描いた図
ホノウリウリの収容所跡は、ハワイ大学西オアフ校の協力を得て、現在発掘が続けられています。JCCHでは、将来、ホノウリウリ強制収容所跡を真珠湾の米合衆国国立公園の一部に編入すべく、運動を続けています。
JCCHに在るホノウリウリの説明
ホノウリウリ発掘の様子
ホノウリウリ発掘の様子
現在、ハワイの日系人社会は、六世が成人する時代を迎えています。2010年の国勢調査では、ハワイ州におけるフィリピン系の人口が日系の数を追い越し、一位になりました。JCCHは、個人メンバー五千人、ボランティアは五百人により運営されており、日系人や日本人が交わるところに留まらず、日系米国人の歴史と文化的遺産を、他国や他地域から移住してきた人達を含む、米国人全体の間に、どう残していくかを考えて活動しています。
日本からの修学旅行生にとっても、日系移民の歴史の勉強に最適な訪問箇所の一つです。
日本文化センター
所在地: ワイキキから北へ約10分。ベレタニア通り沿い。
電話番号: 808-945-7633
見学時間等はサイト内でご確認ください。
ホームページ:https://www.jcchawaii.org/(英語のみ)
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浅沼 正和Masakazu Asanuma担当講師
【インタビュー動画あり】
ハワイ在住通算27年目を迎える。2001年からビショップ博物館で日本語ドーセントのボランティアを始め、2003年に同博物館の会員組織を代表する Bishop Museum Association Council のメンバーに選出され、21年間務めた。他に、ハワイ日米協会理事やハワイ日本文化センターのBoard of Governor 等を務め、日布間の文化交流活動に従事している。海外の訪問国と地域の数は95箇所に及ぶ。