講座詳細
ハワイアン・ミッションハウス史跡史料館
1820年、ハワイを初めて訪れたキリスト教宣教師の住居跡。
ハワイにやって来た初のキリスト教宣教師の伝道本部。
1821年から1863年まで宣教師が暮らしたほか、印刷所など作業部もあった。
オラニ宮殿近くに建つハワイアン・ミッションハウス史跡史料館は、1821年~1863年の間、ハワイで布教したアメリカ人プロテスタント宣教師達の伝道本部として使用されていた施設です。宣教師の生活スペースや作業所などを、当時そのままの様子で見ることができます(注:以前はミッションハウス博物館として知られていましたが、2012年に改名されました)。
ボストンから初めて宣教師の一団がやって来たのは、1820年4月。ハワイがまだサンドイッチ諸島と呼ばれていた時代のことでした。ハワイ島カイルア・コナで一行を迎えたカメハメハ2世は彼らにハワイでの布教を許可し、宣教師団にホノルル・ダウンタウンの土地を与えました。宣教師達はさっそくそこに住居や事務所を設置。それが、ハワイアン・ミッションハウス史跡史料館(以下ミッションハウス)の歴史の始まりです。
以降、プロテスタントの教えはこの地を中心にハワイ中に広まっていき、1863年までにハワイ5島に17の宣教支部が設立されました。ちなみに通りを挟んで隣の敷地には、一団が創設したオアフ島最古の教会、カワイアハオ教会があります。
ミッションハウスは現在、一般公開されており、19世紀のアメリカ人宣教師達の質素な生活の様子を垣間見ることができます。緑の芝生のなかに19世紀からの建物が3棟あり、うち「フレームハウス」は1821年建造。ハワイで現存する木造建築では最古の館として知られます。フレームハウスは宣教師達がニューイングランドで加工した木材をはるばるハワイまで運び、組み立てたもので、その大部分が200年近く昔のオリジナルの木材となっています。
左奥がフレームハウス、手前がチェンバーレインハウス
このフレームハウスは、1820年にハワイにやって来た宣教師でカワイアハオ教会の初代牧師のハイラム・ビンガムらの住居として、永らく使われていた建物です。宣教師夫妻の寝室、また孤児を収容したという寝室、食堂などが復元されていますが、当時そのままの調度品も。ビンガムがボストンから、南アフリカ南端のケープホーン経由で約6ヶ月かけて運んできた大きなトランクなどもその1つです。
またごく素朴な台所には当時の食材や調理器具なども再現されており、19世紀の宣教師の生活を臨場感とともに知ることができます。ほかに、カメハメハ大王の妃でキリスト教の強力な推進者だったカアフマヌ王妃も滞在した客室、1828年に宣教師団の一員としてハワイ入りした医師ゲリット・ジャッド医師の診察室などがあります。
「チェンバーレインハウス」は、住居、かつ貯蔵庫として使われていた1831年建造の館。お隣のカワイアハオ教会と同様、珊瑚のブロックで造られています。当時のダウンタウンの街のミニチュアモデルをはじめジャッド医師の薬瓶などのコレクションが展示されているほか、不定期の展示会などもここで開催。3つめの「カ・ハレ・パイ」は1841年に設置された印刷所跡です。初期のハワイ語―英語の本が印刷された機械(複製)などが、展示されています。
よい意味も悪い意味も含め、キリスト教宣教師の到来がハワイを変えた…とはよく言われることですが、ハワイにやってきた宣教師団には宣教師だけでなく医師や印刷技師、農業の専門家が含まれていたことなどを知り、初期の宣教師団がハワイにもたらしたものを多角的・全体的に学べることが、ミッションハウス見学の大きな意義の1つでしょう。19世紀の西洋世界とハワイの接点として、ミッションハウスを訪れてみるのも一興です。
なお、これら3棟の建物はふだんは施錠されており、見学ツアーに参加してガイドと一緒に内部を見るシステムです。見学ツアーは1時間ごとに始まり、1時間弱。ミッションハウスを知り尽くしたガイドの案内で、19世紀の宣教師の生活を覗き見るのもいい体験になるでしょう。一方、庭やカフェ、ギフトショップは自由に回ることができます。
印刷所跡のカ・ハレ・パイ。19世紀当時の印刷機の複製がある
ハワイアン・ミッションハウス史跡史料館
所在地:553 South King Street, Honolulu
電話番号:808-447-3910
見学時間:10時~16時。ツアーは11時~15時、1時間ごとに出発(休館:日曜・月曜)
入館料:$10(学生証を持つ学生は$6。5歳以下は無料)。ツアー参加費を含む
ホームページ:http://www.missionhouses.org/
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森出 じゅんJun Moride担当講師
【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(パイインターナショナル)がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex