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所用時間5min
2020.06.05
ポケ
ここがポイント
世界各国で食べられるようになった人気の料理、ポケ。その原型から、外国人、移民がもたらした変化などを学びます。
今や世界各地に広まり、手軽に買えるようになったPoke(ポケ)。古代ハワイの食生活を伝える、大事な食べ物です。その素材や調理法は、時が経つにつれ、様々な文化の影響を受けて種類も豊富になっていますが、基本的に生魚を食べる料理。生魚を食べる習慣のなかった地域にも輸送技術の発達で新鮮な魚介類が届くようになり、ポケを扱う店舗も増え、人気の料理となっています。
言葉の意味
現在は完成した料理そのものをポケと呼んでいますが、ハワイ語でPokeとは「(横方向に)切り分ける、スライスする」という意味になります。料理としてのポケという呼び方は、マグロやカツオなど、材料として使える魚の供給が安定することで、料理としてのポケが広く普及し始めた60年代から70年代以降と、意外にも新しい呼び名になります。しかし、その料理法の基本となるものは、古代ハワイから受け継がれているものです。
古代ハワイにおけるポケの材料と調理法
古代ハワイにおいて、魚介類は主食のポイに並び、毎日の食生活を支える大切な食糧でした。老若男女を問わず、海岸沿いの浅瀬や川などで、誰もが魚を捕ることができ、また、位の髙い人々が専用で持つ養魚場(Loko iʻa ロコ イア)も各地にあり、悪天候の場合に備えて、漁で捕ってきた魚を養魚場に保管しておいたり、稚魚から魚を育てて、常に手の届く所に食糧がある状態にしていました。
特に専業で漁業に従事する人々(Lawaiʻa ラヴァイア)は、先祖代々から伝わる技術や道具を使い、水深の深い遠洋にカヌーを出して、マグロやカツオといった群れで泳ぐ大型の魚をも捕獲していました。
魚の調理法には、ティーリーフに包んで焼く、蒸し焼きにする、茹でるといった方法がありましたが、生のまま食べる際は、骨、皮、内臓を取り除き、食べやすい大きさに切り分けた魚に、塩、海藻(Limu リム)、よく炒ったククイナッツの殻を割り、その中身を潰したもの(ʻInamona イナモナ)を混ぜて食べていました。塩が使われていたのは、味付けに加え、鮮度を保つという大事な役割もありました。これが現代のポケの原型となっています。
外国人の食文化がもたらしたポケの変化
外国人の上陸以前のハワイでは、生魚は塩、海藻、ククイナッツのみで味付けされていましたが、現在、ポケの材料としてよく使われているのが、玉ねぎ、醤油、ごま油といった、古代ハワイには無かった野菜や調味料です。こういった新しい食材が、ポケの材料としていつ頃使われるようになったのかについては、ポケのレシピ自体が世の中に登場するのが1970年代中頃以降ということで明らかになってはいませんが、特にプランテーション時代に移住した世界各地からの移民の食文化が、ポケの材料に変化を加えていった可能性は大いにあるでしょう。
日本人・中国人移民により醤油やゴマ油がハワイでも使われるようになりますが、特に日本人の場合、刺身に醤油を付けて食べるという食習慣があるため、ハワイで獲れる魚の味付けに醤油を使うというのも、自然の成り行きと言えるかもしれません。
ちなみに玉ねぎは、1778年に西欧人として初めてハワイに到達したとされるキャプテン・クックがハワイにもたらしたもので、1849年から1851年のカリフォルニアのゴールドラッシュの時代には、ハワイからアメリカ西海岸に向けて、玉ねぎは輸出できる程の量が栽培されていました。
進化するポケ
シンプルな味付けから始まり、外国の食文化の影響で味付けも多彩になっていったポケは、さらに進化しつづけています。その代表とも言えるのが、丼形式で出されるようになった「ポケ・ボウル」でしょう。
ご飯の上にポケを乗せるスタイルは、米を主食とするアジア人移民が多く、ご飯が主食の一つとして根付いているハワイでは急速に広がり、レストランのみならずスーパーマーケットなどでも、手軽に食べられるようになりました。その勢いはアメリカ本土や世界の国々にも広がり、ファストフードの一つとしても数えられています。ハワイでも、メキシコ料理のタコスやナチョスの上にポケが乗せられたり、ベジタリアンの方のために豆腐が使われたり、さらには韓国風のキムチ味のポケや、マヨネーズとソースでお好み焼き風の味付けなど、ポケを提供するお店が、それぞれ趣向を凝らした新しいポケを作り続けています。アイデア次第で、際限なく多彩に進化できるポケ。ハワイの食文化の中でも最も多くの人々に知られ、受け入れられ、最も勢いのある食べ物と言えるのではないでしょうか。
言葉の意味
現在は完成した料理そのものをポケと呼んでいますが、ハワイ語でPokeとは「(横方向に)切り分ける、スライスする」という意味になります。料理としてのポケという呼び方は、マグロやカツオなど、材料として使える魚の供給が安定することで、料理としてのポケが広く普及し始めた60年代から70年代以降と、意外にも新しい呼び名になります。しかし、その料理法の基本となるものは、古代ハワイから受け継がれているものです。
古代ハワイにおけるポケの材料と調理法
古代ハワイにおいて、魚介類は主食のポイに並び、毎日の食生活を支える大切な食糧でした。老若男女を問わず、海岸沿いの浅瀬や川などで、誰もが魚を捕ることができ、また、位の髙い人々が専用で持つ養魚場(Loko iʻa ロコ イア)も各地にあり、悪天候の場合に備えて、漁で捕ってきた魚を養魚場に保管しておいたり、稚魚から魚を育てて、常に手の届く所に食糧がある状態にしていました。
特に専業で漁業に従事する人々(Lawaiʻa ラヴァイア)は、先祖代々から伝わる技術や道具を使い、水深の深い遠洋にカヌーを出して、マグロやカツオといった群れで泳ぐ大型の魚をも捕獲していました。
魚の調理法には、ティーリーフに包んで焼く、蒸し焼きにする、茹でるといった方法がありましたが、生のまま食べる際は、骨、皮、内臓を取り除き、食べやすい大きさに切り分けた魚に、塩、海藻(Limu リム)、よく炒ったククイナッツの殻を割り、その中身を潰したもの(ʻInamona イナモナ)を混ぜて食べていました。塩が使われていたのは、味付けに加え、鮮度を保つという大事な役割もありました。これが現代のポケの原型となっています。
外国人の食文化がもたらしたポケの変化
外国人の上陸以前のハワイでは、生魚は塩、海藻、ククイナッツのみで味付けされていましたが、現在、ポケの材料としてよく使われているのが、玉ねぎ、醤油、ごま油といった、古代ハワイには無かった野菜や調味料です。こういった新しい食材が、ポケの材料としていつ頃使われるようになったのかについては、ポケのレシピ自体が世の中に登場するのが1970年代中頃以降ということで明らかになってはいませんが、特にプランテーション時代に移住した世界各地からの移民の食文化が、ポケの材料に変化を加えていった可能性は大いにあるでしょう。
日本人・中国人移民により醤油やゴマ油がハワイでも使われるようになりますが、特に日本人の場合、刺身に醤油を付けて食べるという食習慣があるため、ハワイで獲れる魚の味付けに醤油を使うというのも、自然の成り行きと言えるかもしれません。
ちなみに玉ねぎは、1778年に西欧人として初めてハワイに到達したとされるキャプテン・クックがハワイにもたらしたもので、1849年から1851年のカリフォルニアのゴールドラッシュの時代には、ハワイからアメリカ西海岸に向けて、玉ねぎは輸出できる程の量が栽培されていました。
進化するポケ
シンプルな味付けから始まり、外国の食文化の影響で味付けも多彩になっていったポケは、さらに進化しつづけています。その代表とも言えるのが、丼形式で出されるようになった「ポケ・ボウル」でしょう。
ご飯の上にポケを乗せるスタイルは、米を主食とするアジア人移民が多く、ご飯が主食の一つとして根付いているハワイでは急速に広がり、レストランのみならずスーパーマーケットなどでも、手軽に食べられるようになりました。その勢いはアメリカ本土や世界の国々にも広がり、ファストフードの一つとしても数えられています。ハワイでも、メキシコ料理のタコスやナチョスの上にポケが乗せられたり、ベジタリアンの方のために豆腐が使われたり、さらには韓国風のキムチ味のポケや、マヨネーズとソースでお好み焼き風の味付けなど、ポケを提供するお店が、それぞれ趣向を凝らした新しいポケを作り続けています。アイデア次第で、際限なく多彩に進化できるポケ。ハワイの食文化の中でも最も多くの人々に知られ、受け入れられ、最も勢いのある食べ物と言えるのではないでしょうか。
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ロバーツさゆりSayuri Roberts担当講師
東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。
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