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所用時間5min
2020.06.23
ハウピア
ここがポイント
古代と現代のハウピアの違い、その材料に注目してハワイの食文化を学びます。
伝統的なハワイアンフードは、ホテルや専用施設でのルアウ、レストランやランチワゴンで気軽に試してみることができます。ハワイアンフードの主食がポイ、そして主菜がラウラウやカルアピッグだとすれば、デザートの定番はハウピア。冷やし固めて四角く切り取られた、ミルクゼリーのように見えるものです。それはどのような材料で作られ、古代と現代では、その作り方に違いはあるのかをみてみましょう。
現代のハウピア
まずは、現代のハウピアの作り方を見てみましょう。(『Resource Units in Hawaiian Culture』Donald D. Kilolani Mitchell著より)
材料(4人分):
ココナッツクリーム 1 カップ(約237ml)
砂糖 大さじ1.5杯
コーンスターチ 大さじ1.5杯
バニラエッセンス 数滴(好みで)
作り方:
①ココナッツクリーム(缶詰の状態で売られています)を厚底の鍋で温める。
②沸騰してきたら、砂糖とコーンスターチを入れよく混ぜ合わせ、10分程、よくかき混ぜながら煮る。
③温度が測れるようであれば、摂氏71度(華氏160度)になるまで温め、最後に好みでバニラエッセンスを加える。この時点で、鍋肌から自然にはがれる位の固さになっている。
④冷めてから型に入れて冷蔵庫で冷やし、食べる際には四角く切って出す。
レシピを見ると、家庭で簡単に、調理時間も短時間で作れることが分かります。材料は缶詰で売られていますし、コンロ、冷蔵庫も家に備わっていると思います。それでは、缶詰も、コンロも、冷蔵庫もない古代ハワイでは、一体どのようにハウピアを作っていたのでしょうか。
ハウピアの名の意味は
おそらく、現代のルアウで供されるココナッツクリームを固めたデザートでは、「ハウピア」という名しか耳にしないと思いますが、実は同じようなデザートで、違う呼び名のものがあります。例えば「ハウキー(Haukī)」。Kīは、ハワイでは調理道具やフラダンサーの衣装、レイ、魔除けとしてなどに使われる植物です。この植物の根は、火を通すと甘くなるため、古代ではイムでKīの根を焼き、デザートとして食べていました。この、火を通して甘くなった根の搾り汁を使ったものがハウキーとなります。また、「ハウコー(Haukō)」は、Kō(サトウキビ)の搾り汁を使ったもので、いずれも、ハウピアと同様のものです。このように見ていくと、ハウピアにはピア(Pia)が使われているのではと、ピンと来ると思います。Piaは英語にするとPolynesian Arrowroot(和名:タシロイモ)といい、初期の移民がタロなどと共に、ハワイへ持ち込んだ植物です。その植物の地下の塊茎が持つでんぷん質を使い、液体を固める目的で、また、薬としても使われていました。
ピアの粉、ピアパウダーの作り方
(Polynesian arrowroot (Tacca leontopetaloides) Wikipediaより)
ピアという植物は、地下にできる芋のような塊茎を食用に使います。夏が終わろうとする頃、葉が黄色くなり、枯れた時が収穫のサイン。1.3kg~1.8kg程の大きなものを食用にし、小さいものは、次の年の為に植えられます。掘り出した塊茎はよく洗って皮をむき、目の粗い石の板ですりおろし、水に漬けます。水を、すりおろしたものの苦味がなくなるまで何度も替え、沈んだでんぷん質を取り出して、石の上に広げ、天日干しにします。これで、ピアパウダーのできあがりです。この状態で、古代では下痢止めの薬としても使われていました。
ココナッツクリーム
現代では缶詰で売られているココナッツクリームも、古代で得るには、ココナッツを収穫するところから始めなければなりません。ココナッツは、成長していく段階で、振ってみて水が入っている音がすれば、白い果肉部分が食用に適している状態になっています。まずは、外側の硬い果皮を、地面に固定した先の尖った棒(ʻōniu)に突き刺しながら剥いていきます。
(Wikipediaより)
すると中から、目と口のように見える3点の丸いくぼみのある、種にあたる部分が出てきます。この3点の丸の中心部分や、実に出来ている窪んだラインに沿って石を打ち付けると、固い殻が割れて、中のココナッツウォーター(Wainiu)を取り出すことができます。
(現代では、ナタを使って穴を開けることができます。)
白い果肉は、オピヒという貝の貝殻を使って削り出し*、取り出しておいたココナッツウォーターと混ぜ、手でオイルを揉みだします。出来た液体を、Ahuʻawaという植物の茎を集めたものに通して繊維質を取り除くと、とろっとした白い液体、ココナッツクリーム(Wai o ka niu)の完成です。
ココナッツクリームを使った古代ハワイのデザートは、ハウピア以外にも、削ったタロイモと混ぜてイムで焼いたクーロロ(Kūlolo)や、火を通してつぶしたサツマイモと混ぜて、イムで焼いたコーエレパーラウ(Kōʻelepālau)、パンの実と混ぜてティーの葉で巻いて焼いたピエピエ ウル(Piʻepiʻe ʻulu)といったものがあります。
*近代に入ると、金属の刃がついたイスに座り、効率よく実をかき出すことができるようになりました。
(Hawaii State Archives)
ハウピアの調理法
材料であるピアパウダーとココナッツクリームがそれぞれ出来上がったら、それらを混ぜ合わせ、ティーの葉で包んでイムの中に入れ、蒸し焼きにしました。したがって、現代のように冷たく冷やして、ナイフで切れるようにしっかり固めたものではなく、古代のものはその手前の、鍋で材料を熱した後のトロッとした仕上がりであっただろうことが想像されます。
今と昔では作り方や仕上がりに違いはありますが、ハワイらしいココナッツの香りと共に古代の食文化を伝えてくれているハウピア。現代ではさらに、チョコレートプディングと重ねてチョコレート・ハウピアパイになったり、ハウピアソースとなって、パンケーキの上にかけられたり、マラサダの中に入ったりと、様々な形でハワイのデザートや朝食を飾ってくれています。ハウピアの、これからの進化にも注目したいところです。
現代のハウピア
まずは、現代のハウピアの作り方を見てみましょう。(『Resource Units in Hawaiian Culture』Donald D. Kilolani Mitchell著より)
材料(4人分):
ココナッツクリーム 1 カップ(約237ml)
砂糖 大さじ1.5杯
コーンスターチ 大さじ1.5杯
バニラエッセンス 数滴(好みで)
作り方:
①ココナッツクリーム(缶詰の状態で売られています)を厚底の鍋で温める。
②沸騰してきたら、砂糖とコーンスターチを入れよく混ぜ合わせ、10分程、よくかき混ぜながら煮る。
③温度が測れるようであれば、摂氏71度(華氏160度)になるまで温め、最後に好みでバニラエッセンスを加える。この時点で、鍋肌から自然にはがれる位の固さになっている。
④冷めてから型に入れて冷蔵庫で冷やし、食べる際には四角く切って出す。
レシピを見ると、家庭で簡単に、調理時間も短時間で作れることが分かります。材料は缶詰で売られていますし、コンロ、冷蔵庫も家に備わっていると思います。それでは、缶詰も、コンロも、冷蔵庫もない古代ハワイでは、一体どのようにハウピアを作っていたのでしょうか。
ハウピアの名の意味は
おそらく、現代のルアウで供されるココナッツクリームを固めたデザートでは、「ハウピア」という名しか耳にしないと思いますが、実は同じようなデザートで、違う呼び名のものがあります。例えば「ハウキー(Haukī)」。Kīは、ハワイでは調理道具やフラダンサーの衣装、レイ、魔除けとしてなどに使われる植物です。この植物の根は、火を通すと甘くなるため、古代ではイムでKīの根を焼き、デザートとして食べていました。この、火を通して甘くなった根の搾り汁を使ったものがハウキーとなります。また、「ハウコー(Haukō)」は、Kō(サトウキビ)の搾り汁を使ったもので、いずれも、ハウピアと同様のものです。このように見ていくと、ハウピアにはピア(Pia)が使われているのではと、ピンと来ると思います。Piaは英語にするとPolynesian Arrowroot(和名:タシロイモ)といい、初期の移民がタロなどと共に、ハワイへ持ち込んだ植物です。その植物の地下の塊茎が持つでんぷん質を使い、液体を固める目的で、また、薬としても使われていました。
ピアの粉、ピアパウダーの作り方
(Polynesian arrowroot (Tacca leontopetaloides) Wikipediaより)
ピアという植物は、地下にできる芋のような塊茎を食用に使います。夏が終わろうとする頃、葉が黄色くなり、枯れた時が収穫のサイン。1.3kg~1.8kg程の大きなものを食用にし、小さいものは、次の年の為に植えられます。掘り出した塊茎はよく洗って皮をむき、目の粗い石の板ですりおろし、水に漬けます。水を、すりおろしたものの苦味がなくなるまで何度も替え、沈んだでんぷん質を取り出して、石の上に広げ、天日干しにします。これで、ピアパウダーのできあがりです。この状態で、古代では下痢止めの薬としても使われていました。
ココナッツクリーム
現代では缶詰で売られているココナッツクリームも、古代で得るには、ココナッツを収穫するところから始めなければなりません。ココナッツは、成長していく段階で、振ってみて水が入っている音がすれば、白い果肉部分が食用に適している状態になっています。まずは、外側の硬い果皮を、地面に固定した先の尖った棒(ʻōniu)に突き刺しながら剥いていきます。
(Wikipediaより)
すると中から、目と口のように見える3点の丸いくぼみのある、種にあたる部分が出てきます。この3点の丸の中心部分や、実に出来ている窪んだラインに沿って石を打ち付けると、固い殻が割れて、中のココナッツウォーター(Wainiu)を取り出すことができます。
(現代では、ナタを使って穴を開けることができます。)
白い果肉は、オピヒという貝の貝殻を使って削り出し*、取り出しておいたココナッツウォーターと混ぜ、手でオイルを揉みだします。出来た液体を、Ahuʻawaという植物の茎を集めたものに通して繊維質を取り除くと、とろっとした白い液体、ココナッツクリーム(Wai o ka niu)の完成です。
ココナッツクリームを使った古代ハワイのデザートは、ハウピア以外にも、削ったタロイモと混ぜてイムで焼いたクーロロ(Kūlolo)や、火を通してつぶしたサツマイモと混ぜて、イムで焼いたコーエレパーラウ(Kōʻelepālau)、パンの実と混ぜてティーの葉で巻いて焼いたピエピエ ウル(Piʻepiʻe ʻulu)といったものがあります。
*近代に入ると、金属の刃がついたイスに座り、効率よく実をかき出すことができるようになりました。
(Hawaii State Archives)
ハウピアの調理法
材料であるピアパウダーとココナッツクリームがそれぞれ出来上がったら、それらを混ぜ合わせ、ティーの葉で包んでイムの中に入れ、蒸し焼きにしました。したがって、現代のように冷たく冷やして、ナイフで切れるようにしっかり固めたものではなく、古代のものはその手前の、鍋で材料を熱した後のトロッとした仕上がりであっただろうことが想像されます。
今と昔では作り方や仕上がりに違いはありますが、ハワイらしいココナッツの香りと共に古代の食文化を伝えてくれているハウピア。現代ではさらに、チョコレートプディングと重ねてチョコレート・ハウピアパイになったり、ハウピアソースとなって、パンケーキの上にかけられたり、マラサダの中に入ったりと、様々な形でハワイのデザートや朝食を飾ってくれています。ハウピアの、これからの進化にも注目したいところです。
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ロバーツさゆりSayuri Roberts担当講師
東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。
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