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所用時間5min
2020.07.21
ハワイの塩
ここがポイント
ハワイにおける塩の作り方や使い方などを詳しく学びます。
人間が生きていく上で欠かせない、塩。世界の塩の過半数は岩塩から得られており、巨大な岩塩の採掘場がアメリカ大陸をはじめ、ヨーロッパ、中東、アフリカに広がっています。一方で、岩塩を持たないハワイは、塩を海水から得ていました。これは日本も同じで、しかも、塩の作り方や使い方まで、ハワイと日本はよく似ています。それでは、古代ハワイにおける塩の作り方、その使い方などを詳しくみてみましょう。
塩の「採集」
海に囲まれ、太陽の光にも恵まれたハワイでは、塩は海辺に行けば採集できるものでした。海辺の岩のくぼみに海水が溜まり、日光によって水が蒸発して塩の結晶が残ります。これを古代ハワイでは集めていました。この塩の採集は、女性の仕事とされていました。
後に、海岸近くに塩田を作るようになります。1.8mから2.4m四方、深さ20㎝ほどの囲いをいくつも作り、底には粘土質の赤土、あるいは葉が敷き詰められ、その上に海水が注ぎこまれました。日光で海水が蒸発し、塩の結晶が残る仕組みです。塩造りが始まるのは夏。順調にいけば、10日程で海水から塩を取ることができます。水の蒸発が進み、塩分濃度が濃くなった海水を持ち帰り、上部を削って底の浅い器の形にした石に注ぎ、さらに蒸発させて、家で塩の結晶を取るということもされていました。さらに、出来た塩の結晶を、石のすり鉢とすりこぎで細かくしていました。
カウアイ島のハナペペでは、昔ながらの塩田が残されています。ハワイの塩造りについての映像がありますので、ご覧下さい。
こちらの塩田では、地下から湧き上がる海水を使っています。26家族が共同で代々使っている塩田で、地下から湧き上がった水を汲みだし、蒸発池で塩分を濃縮させ、そこから別の蒸発池に移してさらに水分を蒸発させて塩の結晶を取っています。一番底に近い部分の塩には、赤土が混ざって色が付いており、これは主に儀式で用いられる塩。その上の部分のものは、バーベキューや料理に使われる塩、一番上部のものは白く、食卓塩として使われるものと映像内で説明されています。
塩のハワイ語訳は
ハワイ語で塩のことをPaʻakaiといいます。paʻaは固まる、kaiは海を表します。塩の結晶が大きいままの状態の塩をPaʻakai puʻupuʻu(puʻupuʻu ゴツゴツした、塊のある)、結晶をすり潰して細かくし、乾いた塩をPaʻakai lele wai(lele 蒸発する、乾く wai 水)、赤土が混ぜられた塩をPaʻakai ʻulaʻula(ʻulaʻula 赤)といい、これは主に儀式など場や人を清める場面で使われます。赤土はʻAlaeaといい、現在売られている赤い色のついた塩は、アラエア・シーソルトと呼ばれています。
塩の用途
塩が豊富に採れるハワイでは、生活の様々な場面で塩が使われています。古代ハワイにおける塩の使い方についてみてみましょう。
食べ物の味付け・保存
古代ハワイにおいて、調味料として使われていたものは塩、ククイナッツ、海藻と非常にシンプルであったため、塩が料理に果たす役割は大きいものでした。調理前に食材に塩をすりこんだり、揉みこんでから火を通すため、完成した料理には、既にしっかりと塩味が付けられています。生魚を食べる際も、さばいてすぐに塩が軽く揉みこまれました。野菜については、味付けをせずに蒸したり茹でたりしていたため、よく炒ったククイナッツの殻の中身を潰し、塩をまぜたʻInamonaが、調味料として食卓に出されました。
食べ物の保存については、塩は暖かい気候のハワイにおいて、大きな役割を果たしました。例えば、魚を獲った後、悪天候等に備えて保存するために、魚を開いて内臓を取りだし、しっかりと塩を塗りこんで、石の上で乾かし干物を作りました。まぐろなど、大きな魚については、骨付きの状態で大き目に切り、塩水に3日ほど漬けてから乾かしました。乾いたら蓋のついたボウル(ʻUmeke)に入れておけば、2~3年経っても食べられる状態だったといいます。かつて外国船がカウアイ島に到着し、本国に帰るために塩漬けにした豚肉を鉄製品と交換に手に入れたそうですが、12か月後でも、その肉は腐敗していなかったという記録があります。
医療
古代ハワイにおける医師、Kahuna lapaʻauは、300種類もの植物、貝、魚を医療に使える知識を持っていました。症状により、植物などと塩、医療用に使われる土などを混ぜ、薬を作っていました。塩の殺菌作用にも気づいており、植物の葉などを潰して塩を混ぜたものを、傷口に塗るなどしていました。
清め
儀式の際、亡くなった人の処置に携わった後など、清めの意味でも塩が使われていました。塩とターメリックを入れた水にティーリーフ(Kī)を浸し、その水をティーリーフを使って振りかけることで、その地やその人の身を清めていました。また、家族の中で、誓いや約束を破った者には、その反動(影響)を取り除くために、ターメリックとʻAwaの根を浸した塩水が振りかけられました。体に付いた水滴が汚れを吸収し、体を清めるとされていました。
その他、塩と炭を混ぜて歯磨き粉として使ったり、染色の際に、色をより長持ちさせるために塩が染料に混ぜられたりと、古代の人々は塩の持つ様々な力をしっかり理解し、様々な場面で上手く使っていたことが分かります。
ハワイを取り囲む海からの恵み、塩。古代ハワイの人々にとって、塩は生きる上で必要な物であるのと同時に、その後はハワイからの輸出品として、ハワイの経済を支える存在にもなりました。現在では、ハワイ土産としても様々な商品が店頭に並びます。ハワイの塩の使い方と、日本その他の国々での使い方を比べてみて、似ている点、違う点を探してみるのも面白いかもしれません。
塩の「採集」
海に囲まれ、太陽の光にも恵まれたハワイでは、塩は海辺に行けば採集できるものでした。海辺の岩のくぼみに海水が溜まり、日光によって水が蒸発して塩の結晶が残ります。これを古代ハワイでは集めていました。この塩の採集は、女性の仕事とされていました。
後に、海岸近くに塩田を作るようになります。1.8mから2.4m四方、深さ20㎝ほどの囲いをいくつも作り、底には粘土質の赤土、あるいは葉が敷き詰められ、その上に海水が注ぎこまれました。日光で海水が蒸発し、塩の結晶が残る仕組みです。塩造りが始まるのは夏。順調にいけば、10日程で海水から塩を取ることができます。水の蒸発が進み、塩分濃度が濃くなった海水を持ち帰り、上部を削って底の浅い器の形にした石に注ぎ、さらに蒸発させて、家で塩の結晶を取るということもされていました。さらに、出来た塩の結晶を、石のすり鉢とすりこぎで細かくしていました。
カウアイ島のハナペペでは、昔ながらの塩田が残されています。ハワイの塩造りについての映像がありますので、ご覧下さい。
こちらの塩田では、地下から湧き上がる海水を使っています。26家族が共同で代々使っている塩田で、地下から湧き上がった水を汲みだし、蒸発池で塩分を濃縮させ、そこから別の蒸発池に移してさらに水分を蒸発させて塩の結晶を取っています。一番底に近い部分の塩には、赤土が混ざって色が付いており、これは主に儀式で用いられる塩。その上の部分のものは、バーベキューや料理に使われる塩、一番上部のものは白く、食卓塩として使われるものと映像内で説明されています。
塩のハワイ語訳は
ハワイ語で塩のことをPaʻakaiといいます。paʻaは固まる、kaiは海を表します。塩の結晶が大きいままの状態の塩をPaʻakai puʻupuʻu(puʻupuʻu ゴツゴツした、塊のある)、結晶をすり潰して細かくし、乾いた塩をPaʻakai lele wai(lele 蒸発する、乾く wai 水)、赤土が混ぜられた塩をPaʻakai ʻulaʻula(ʻulaʻula 赤)といい、これは主に儀式など場や人を清める場面で使われます。赤土はʻAlaeaといい、現在売られている赤い色のついた塩は、アラエア・シーソルトと呼ばれています。
塩の用途
塩が豊富に採れるハワイでは、生活の様々な場面で塩が使われています。古代ハワイにおける塩の使い方についてみてみましょう。
食べ物の味付け・保存
古代ハワイにおいて、調味料として使われていたものは塩、ククイナッツ、海藻と非常にシンプルであったため、塩が料理に果たす役割は大きいものでした。調理前に食材に塩をすりこんだり、揉みこんでから火を通すため、完成した料理には、既にしっかりと塩味が付けられています。生魚を食べる際も、さばいてすぐに塩が軽く揉みこまれました。野菜については、味付けをせずに蒸したり茹でたりしていたため、よく炒ったククイナッツの殻の中身を潰し、塩をまぜたʻInamonaが、調味料として食卓に出されました。
食べ物の保存については、塩は暖かい気候のハワイにおいて、大きな役割を果たしました。例えば、魚を獲った後、悪天候等に備えて保存するために、魚を開いて内臓を取りだし、しっかりと塩を塗りこんで、石の上で乾かし干物を作りました。まぐろなど、大きな魚については、骨付きの状態で大き目に切り、塩水に3日ほど漬けてから乾かしました。乾いたら蓋のついたボウル(ʻUmeke)に入れておけば、2~3年経っても食べられる状態だったといいます。かつて外国船がカウアイ島に到着し、本国に帰るために塩漬けにした豚肉を鉄製品と交換に手に入れたそうですが、12か月後でも、その肉は腐敗していなかったという記録があります。
医療
古代ハワイにおける医師、Kahuna lapaʻauは、300種類もの植物、貝、魚を医療に使える知識を持っていました。症状により、植物などと塩、医療用に使われる土などを混ぜ、薬を作っていました。塩の殺菌作用にも気づいており、植物の葉などを潰して塩を混ぜたものを、傷口に塗るなどしていました。
清め
儀式の際、亡くなった人の処置に携わった後など、清めの意味でも塩が使われていました。塩とターメリックを入れた水にティーリーフ(Kī)を浸し、その水をティーリーフを使って振りかけることで、その地やその人の身を清めていました。また、家族の中で、誓いや約束を破った者には、その反動(影響)を取り除くために、ターメリックとʻAwaの根を浸した塩水が振りかけられました。体に付いた水滴が汚れを吸収し、体を清めるとされていました。
その他、塩と炭を混ぜて歯磨き粉として使ったり、染色の際に、色をより長持ちさせるために塩が染料に混ぜられたりと、古代の人々は塩の持つ様々な力をしっかり理解し、様々な場面で上手く使っていたことが分かります。
ハワイを取り囲む海からの恵み、塩。古代ハワイの人々にとって、塩は生きる上で必要な物であるのと同時に、その後はハワイからの輸出品として、ハワイの経済を支える存在にもなりました。現在では、ハワイ土産としても様々な商品が店頭に並びます。ハワイの塩の使い方と、日本その他の国々での使い方を比べてみて、似ている点、違う点を探してみるのも面白いかもしれません。
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ロバーツさゆりSayuri Roberts担当講師
東京生まれ。筑波大学・比較文化学類にて北米の歴史・文化を学び、英会話スクールの講師等を経て、結婚を機にハワイへ移住。Native Hawaiian Hospitality Association主催の歴史ツアー「Queen's Tour(当時)」に参加し、ツアーガイドの方に、日本語の通訳を頼まれたことから、2004年、ガイドとして登録、研修の上、日本語の歴史ツアーを始める。2006年、「Queen's Tour」の終了を機に、ツアーの継続について主催者の了承を得て、Hawaii Historic Tour LLCを発足、「ワイキキ歴史街道日本語ツアー(当時)」(その後「ワイキキ歴史街道ツアー」に改称)を開始。2007年、「ダウンタウン歴史街道ツアー」もスタート。テレビ、ラジオ、雑誌等、メディア出演多数。 『お母さんが教える子供の英語』(はまの出版)著者。
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