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Lōkahi ー神と人と土地の調和
ハワイアンバリューと呼ばれるようなハワイの人々が大切にしてきた価値観を知る上で、欠かすことが出来ない考え方Lōkahi(ローカヒ)についてお話ししたいと思います。
Lōkahi(ローカヒ)の言葉の意味
ローカヒとは日本語に訳すと「団結」「合意」「協心」「調和」などという言葉で表現することができると思います。
Lo-は「手に入れる、入手する」という意味合いの接語で、Kahiは「ひとつ」「一人で」という意味と「仲間」「誰か」という意味があります。
直訳すれば「仲間を確保する」という意味合いになり、調和や団結などという意味になるのでしょう。あるいは「個」が集まり「調和」を作るとも考えられます。
ローカヒを作る3つの要素
ローカヒ(調和)とは何の調和を表しているのでしょう?
ハワイアンが大切にする3つの調和とはAkua(アクア)「神」、Kanaka(カナカ)「人」、そしてʻĀina(アーイナ)「土地」の調和です。
この3つの要素が常にバランスよく保たれている、つまりPono(ポノ)の状態にあることがより良い生活ができる第一条件と考えられて来たのです。
ハワイアンと神との関係
ハワイ語のAkuaに含まれるものは、神、女神、精霊、時には超現象であったり超現象の力を持つ人間などです。時には復讐的であったり、助けてくれるものであったり、破壊的であったり、賢く、気まぐれなものだったりします。そして西洋の神話にも通じるようなKino lau(キノラウ)と呼ばれるたくさんのフォーム(体)を持っています。時には魚やサメ、石や植物などの体を持ち、時には死者とつがい人間を生み出すこともあり、Moʻo(モッオ)と呼ばれるトカゲの怪獣であったり、水のスピリッツを持つ魚や石のような子を産むことができたのです。それらはKupua(クプア)と呼ばれるデミゴッドです。例えば火山の女神ペレが懐で温めていた卵が妹のヒイアカであったようにです。このように神は人の中、時には人の一部分に住むことができました。
ハワイでの人と神の関係性がとても深いのは、亡くなった先祖たちはAumakua(アウマクア)として家族の守り神となり、そして先祖を辿っていくと神に繋がるような考え方があったからではないでしょうか。
ハワイの人々の生活の中にはいたるところに祈りがあり、それらはチャントとなり記憶されて日常の様々な場面で祈りが使われていた事も、神と人との関係を深く繋いでいたと言えるでしょう。
人々は祈りで「導き」や「許可」などを求め、そして「感謝」し「敬意」を表すということを繰り返していたと思います。そして神との良い関係性(バランス)を保つことが重要なことであると信じられて来たのです。
ハワイアンと土地の関係
創造主、神から作られた人と土地(ここでは海も含め自然界全て)ですが、この関係はこのようなハワイの諺で知ることができます。
He aliʻi ka ʻāina; (ヘ アリッイ カ アーイナ)
he kauā ke kanaka (ヘ カウアー ケ カナカ)
「土地はアリイ(チーフ)、人はその従者である」
土地は人を必要としないが、人は土地が生活のために必要であるという意味です。
ハワイアンが今でもMālama ʻāina(マーラマ アイナ)と言って土地を守る活動が盛んなのは、土地が私達の生活に必要なものを供給してくれていることを知っているからなのです。
ハワイアンの主食であるタロ芋畑の作業をすると、このコンセプトがよく理解できます。
まずLoʻī(ロッイー)と呼ばれるタロ畑には綺麗な水が必要なので、灌漑用水を作ります。近くの川から水を引くわけですが、この用水路がきちんと整備されていないと良いタロ芋は育たないのです。大雨で用水路が崩れたり、また落ち葉や石などが水路に詰まったりして流れをせき止めてしまう場合は多々あるわけで、常に川と水路を綺麗に保つことが必要となります。
ロッイーはローテーションしながら使い、数回の収穫が終わったものは休憩させます。この間作物は植えず、周りにある落ち葉などを集めて泥の中に踏み入れる作業をします。そうすることで土地に新たな栄養が与えられ肥沃になるわけです。
ロッイーを循環した水は再び水路を通って川へと流れて行きます。ロッイーから流れた水はたくさんの微生物を含み川へと流れ、そこより低い土地を肥沃にして行き、最後は海に流れ出て行きます。海にはLoko iʻa(ロコ イッア)と呼ばれる猟漁場があり、土地が潤っていればいるほど魚たちは大きく育つわけです。
今でこそサステイナブルということが見直されていますが、ハワイアンたちは太古の昔からこのようなサステイナブルな生活を送っていたのです。
海へ出て漁をするフィッシャーマン、鳥の羽を集めるバードキャッチャー、薬草を扱うカフナラーアウラパアウ、などなど様々な職業を持った人々は皆、大自然からの恩恵で生活していたので、その土地とのバランスを崩さないことが必要不可欠だったのです。ですからハワイの様々な作業をする時一番最初に言われることは「必要な分だけ」という言葉。レイを作るために植物を採取する時には自分が必要な分だけとる、魚を獲る際には食べる分だけとる、というように決して取りすぎない、無駄にしないということが大前提でした。古代のカプ(法律)で一定の季節にある種の魚などを捕獲しないような法律があったのも、このように循環システムを壊さないための政策でした。
先に示したハワイの諺は、このように人と土地との関係性をうまく表現し、私たちがそのような生活のスタイルを忘れないように戒めてくれているのです。
土地をケアすることは人の責任でもあるけれど、ケアをすれば自然は多大なる恩恵を与えてくれる、そして人はその恩恵を受け取る特権を持っているのだということです。
神と土地と人とが常にバランスと調和を持って繋がっている状態がまさにLōkahi(ローカヒ)ということなのです。
そしてそのコンセプトは個人から家族、そして社会へと広がり、バランスのとれた社会を作ることができるのです。
最後に一つ、ローカヒとは「調和」であって「同調」ではない事を付け加えておきたいと思います。「同調」とは他のあるものに調子を合わせる事、他と同じ意見や態度になる事という定義があります。日本社会にいるとついこの「同調」をしてしまうことが多いかと思います。それは「事なかれ主義」なのか、「和を乱さない」為なのか、或いは「多数意見に安心する」という気質を持っているからなのか、時として自分の意見や主義主張を出さないことがあると思います。同調することで調和を保つのではなく、ここでいう調和とは個々人の本質がポノ(あるがままの存在)であること、つまり物事を「善と悪」や「良い悪い」という判断基準で見ないということなのです。ポノである個人が神と土地との調和を保てていれば、その個人が集まった社会も自ずと調和が取れる、つまりはローカヒの状態になると言うことですね。
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ミイラニ・ヨシコ・クーパーMi'ilani Yoshiko Cooper担当講師
Kahaluʻu在住
Halau Kīhene Pua Uluwehi (ハラウ キーヘネプアウルヴェヒ オアフ島/神奈川)主宰、クムフラ
Lamakū Hawaiian Study Education (ラマクーハワイアンスタディーエジュケーション)主宰
アロハフロウファウンダー
プランツメディスンメイカー
ハワイ大学ヒロ校ハワイ学科卒業 ハワイアンイマージョンスクールNāwahīokalaniōpuʻu(ナーヴァヒーオカラニオープウ)で教鞭を執る
ハワイ大学マノア校言語学修士
2006年正統な伝統儀式のもとクムフラの称号を与えられる
フラヘブン(雑誌)に2年半連載ページを執筆
個人、企業向けの様々なハワイ文化講座を指導
現在ビショップ博物館Lā Kūleʻaプログラムのフラクラスを担当
アンティ マイキのフラを継承するクムフラ、メイ カママル クラインの元、指導者としてフラを学び2006年8月にウニキを経てクムフラの称号を与えられる
ジョニー ラム ホー、レイ フォンセカの元よりメリーモナーク フラ フェスティバルに出場経験多数
カジメロブラザースやハパなど有名ミュージシャンのコンサートの出演経験多数
また、ダンサーとしての体作りの必要性からヨガを始め、ハワイの文化とヨガを融合させた Alohaflowを独自で考案
ハワイの価値観をもとにHoʻoponopono的なライフスタイリングや自然と調和できるサステイナブルなライフスタイルを目指している