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2020.10.09
カラカウア王の銅像
ここがポイント
ワイキキに建つカラカウア王像は、オアフ島の日系団体が建立したもの。日本からの官約移民100周年だった1985年、日本からの大規模移民が始まるきっかけを作ったカラカウア王を記念し、建立が決定した。
カラカウア王の銅像
日系団体が建立
ワイキキの西端、カラカウア通りとクヒオ通りの交差する地点に、三角形の小さな公園があります。公園はワイキキ・ゲートウェイパーク、またはキング・カラカウアパークと呼ばれ、そこで目を引くのがハワイ王国7代目の君主、カラカウア王の銅像です。
カメハメハ大王像をはじめハワイには王族の銅像がいくつもありますが、この銅像がユニークなのは、日系団体により建立された銅像という点でしょう。日本からの官約移民100年祭（後述）が祝われた1985年に建立が決まり、6年後、完成しました。日本からの旅行者にも、ぜひ見ていただきたい銅像です。
官約移民100年祭とカラカウア王の関係
そもそもハワイの官約移民とは、日本政府とハワイ王国政府の正式な条約によって日本からやって来た移民を指します。始まったのは1885年。カメハメハ5世の治世だった1868年にも小規模な移民団がハワイ入りしましたが、それは日本政府が認可した移民ではありませんでした。明治元年である1868年にやって来たその150人の移民は、「元年者」と呼ばれ、官約移民とは区別されています。
そして1885年、ハワイと日本両国の合意に基づいて始まった官約移民は、実はカラカウア王が明治天皇に直接働きかけて実現したものなのです。カラカウア王は世界で初めて世界周遊の旅をした君主と知られていますが、1881年に日本を訪問。明治天皇に謁見し、人出不足に陥っていた砂糖きび畑への労働力を日本から送ってほしいと要請しました。その申し出を明治天皇が受け入れ、4年後に始まったのが官約移民です。
〔日本でのカラカウア王。Photo Courtesy of Hawaii State Archives〕その結果、1885年から（ハワイ王国崩壊直後の）1894年まで官約移民としてハワイにやって来た日本人は約3万人。その後も自由移民などと時代によって呼称を変えながら移民の波は続き、1924年に東洋人移民禁止法がアメリカで成立するまで、約22万人の日本人がハワイにやって来ることとなりました。カラカウア王が、ハワイで「日系移民の父」と仰がれる由縁です。そんな歴史的背景から、オアフ官約移民100年祭委員会がカラカウア王像を建立することになったわけです。
銅像は「カラカウア王への感謝とアロハのシンボル」
ワイキキに建つ威風堂々としたカラカウア王像は、10万ドルをかけ、ハワイアン彫刻家のショーン・ブラウンが制作。細部にも工夫が凝らされ、まずカラカウア王が手にしているのは、明治天皇との間に交わした移民に関する契約書とか。
台座の正面には王のイニシャルのKを2つ組み合わせた王のモノグラム（シンボル）も飾られているほか、背面には、カラカウア王も会員になっていたヨーロッパ発祥の友愛結社、フリーメイソンのハワイ支部から贈られた銘板も。
背面にはさらに、カラカウア王と日本の関係、オアフ官約移民100年祭委員会が銅像を建てた経緯などが日英両語で刻まれており、碑文の最後には、以下のような感動的な一文が見られます。
「現在、日本人移民の子孫である日系アメリカ市民はあらゆる分野に於いて成功繁栄している。カラカウア王は『日本人移民の父』として日系社会では崇められている。この銅像は日系人の先祖をハワイに移民として招待したカラカウア王に対する感謝とアロハのシンボルである」
いわばこのカラカウア王像は、19世紀のハワイ王国と現代のハワイ日系社会、ひいては私たち日本人をアロハの心と愛で結び、その象徴として建てられたもの。オアフ島を訪れたら、ぜひ出かけてみてください。
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森出 じゅんJun Moride担当講師【インタビュー動画あり】
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞･雑誌･広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話･伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニー・マガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社刊)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」（パイインターナショナル）がある。
森出じゅんのハワイ不思議生活 http://blog.goo.ne.jp/moridealex
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