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所用時間5min
2021.01.12

ハワイ州庁舎

ここがポイント

ハワイ州誕生から生まれたハワイ州のシンボル

ハワイ州の政治の中心がハワイ州庁舎です。ハワイ州会議事堂とも言えるかもしれませんが、ここではハワイ州庁舎でご紹介させていただきます。
ホノルルのダウンタウンのベレタニア通りにある州庁舎は、イオラニ宮殿の山側に位置しています。この建物は1969年に建てられました。それまでハワイの政治はすべてイオラニ宮殿で行われていました。ハワイ王国が崩壊したのが1893年。それからハワイ共和国、アメリカ合衆国の準州、そして1959年には正式にアメリカ合衆国の50番目の州に認定されました。

ハワイ州に認定された1959年8月21 日からほどなくして、サンフランシスコのジョン・カール・ワーネッケ&アソシエイツとホノルルのベルト、レモン&ローという会社が新しい州庁舎の建築に携わることになりました。その後、詳しく建築が構想され、1965年11月10日に地震祭が執り行われ、4年後の1969年3月15日に当時のハワイ州知事ジョン・A・バーンズ氏の元にオープンしました。

ハワイ州庁舎外観

州庁舎の建物全体は、ハワイ諸島を象徴しモダンで多機能、美しく威厳のある民主主義を全うする場所でならないといけないという理念から設計されています。海から島が誕生した様子、太平洋で囲まれた島々、まだまだ火山活動を続けているボルケーノ、空に抜ける大胆な中抜けの構造などユニークな建物となっています。建物を囲む40本の柱(高さは約18m)は、1片の8本の柱はハワイ主要8島を示し、古代からハワイでは重要な食物であり、宗教などに使う材料も作られた椰子の木を表現しています。池(リフレクティングプール)は太平洋、スロープの部分はハワイ諸島を成形し、今も尚且つアクティブなハワイ島のボルケーノを表現しています。池に流れる水の噴き出し口はハワイ州の花であるハイビスカスのデザインが施されています。
オープンエアーで開放感のある建物は、世界中の誰をも差別せずに呼び寄せるハワイアンの心を示し、太陽の光、風、雨が自然に入るようになっています。海から山への解放された空間はドアがなく、オープンハートを意味しています。そして空に向かう吹き抜けは天へ抜ける道で、ポリネシアンが航海カヌーで星を使いハワイまでたどり着いたことも表現しています。
 

建物中央の吹き抜け Courtesy The Hawaii State Capitol


椰子の木を表現している柱



ボルケーノを表しているスロープととハイビスカスの噴き出し口

通常、議会が行われる場所は閉鎖された空間の中で執り行われることが多いですが、この建物1階のオープンエアの部分は21,000 ft2(約1,950㎡)の広さがあり、オープンな空間は何人もウェルカムするという意味も込められています。中央部分には「アクエリアス」という直径10mの丸いオプジェがあります。タダシ・サイトウ氏作のモザイクは600,000のイタリアン・スマルティ・タイルが使用され、マウイ島西部のナカレレ・ポイントを描き、ハワイの海と岩、水が織りなす影を表現しています。モザイクの外側の4角の位置には、ハワイを照らすククイナッツの木が4本置かれています。ククイナッツはキャンドルナッツツリーと呼ばれる伝統植物ですが、昔はオイルをキャンドル代わりに使っていました。現在はハワイ州の木に指定されています。また、この4本はハワイ諸島メインの4島と意味し、ハワイ古代の4人の神をも意味しています。

アクエリアス  Courtesy The Hawaii State Capitol


建物の地下にはハワイ州議会があり、海に向かって左側には上院会議場、右側は下院会議場になっています。1階からこの会議場の傍聴席に行けるギャラリーがあります。1階からはガラス越しに誰でも会議場の様子を見ることができるようになっています。

この両議会は色分けもされています。ブルーは上院、赤は下院になっています。どちらの議会場も大きなタペストリーと天井からの抽象的なオブジェ(ライト)が飾られています。タペストリーはアメリカのテキスタイル・アーティストのルーサデル・アンダーソン氏によって作られたものであり、40フィート(約12m)の高さがあります。上院のタペストリーは海、砂、空を意味したブルーのタペストリー。天井からのオブジェはキネティック・アートで有名なオットー・ピエネ氏の作で月を意味し、アルミニウムの軸と630個のオウムガイの殻で作られ、ライトの色の変化が楽しめるようになっています。
下院のタペストリーは茶色、ゴールド、赤とオレンジのトーンで作られ、溶岩を表しています。そしてオブジェは太陽を意味し、132個のゴールドのメッキ銅と真鍮のオーブで作られ、天井には虹のプリズムを描き出します。


上院のタペストリーとオブジェ 
Courtesy The Hawaii State Capitol


下院のタペストリーとオブジェ Courtesy The Hawaii State Capitol

建物の2階には上院25名中24名の議員室があります。3階には下院51名中24人の議員室があります。4階は上院議長室、下院議長室、下院議員室26人の議員室、知事のスタッフルーム、パブリック・アクセスルームがあります。5階にはハワイのパノラマビューが見られる知事執務室、副知事執務室があります。執行部に行くドアは8枚のパネルで作られ、ハワイ諸島の8島を示しています。また、歴代8名の肖像画が壁に飾ってあります。

知事の執務室の一部 歴代のハワイ州知事の肖像画がある Courtesy The Hawaii State Capitol


ハワイ州知事と副知事の執務室がある5階

建物の外にも歴史的なオブジェを見ることができます。州庁舎の北側、ベレタニア通り側には1950年7月4日アメリカ合衆国財務省よりアメリカ準州の記念にオリジナルと全く同じに作られ贈られたリバティ・ベルが設置されています。最初の設置場所は現在、建物の海側、リリウオカラニ女王の像が置かれている位置だったと言います。女王像が重たく、地下の駐車場に水が漏れてしまう恐れがあったため、今の位置に収まったそうです。

リバティベル

州庁舎の南側、イオラニ宮殿の塀の手前にハワイ王国第8代リリウオカラニ女王の像が置かれています。これは1982年4月10日にアーティスト、マリアンア・ピネダにより作られ、高さは6フィート(約1.8m)あります。左手には女王が作詞作曲した「アロハ・オエ」、「クムリポ(ハワイ創世記)」「1893年ハワイ王国を取り戻す新憲法」の3冊の本を持っています。首にはハワイ王の象徴である「レイ・ニホ・パラオア」によりハワイアンの血を、そして頭のティアラはクリスチャンと西洋の世界感の受け入れを強調しています。


リリウオカラニ女王像


州庁舎の北側、ベレタニア通りにはマリソル・エスコバー氏デザインのブロンズ製のダミアン神父像があります。ダミアン神父はベルギー出身のローマカトリックの宣教師であり、ハワイに布教にきました。そしてモロカイ島にハンセン病の患者が隔離され、世の中から見捨てられていたことを知り、1873年に自らモロカイ島のカラウパパに移り住みました。そして16年間ハンセン病の患者の世話をしながら、チャペル、学校やコーラス部なども作り献身的に働きました。その後自らもこの病に倒れこの世を去りました。モロカイの英雄と呼ばれ、後2009年に聖人となり、現在でも世界中の人々から愛されています。


ダミアン神父像


大きなブロンズ製のハワイ州のモットー「コート・オブ・アーム」は建物の北側と南側どちらにも掲げられています。オリジナルのコート・オブ・アームはハワイ王国カメハメハ3世によって作られました。その後1895年ハワイ共和国が誕生したときにヴィゴ・ジェイコブセンによりデザインされ、1959年に合衆国の50番目の州に認定されたとき、新たにこの紋章が作られました。ハワイ王国の時代に使われたプウロウロウ(タブースティック)は政府の権威都権力を指し、上の部分の太陽と下の部分のフェニックス鳥はハワイ王国から民主主義の国に新たに生まれ変わったことを象徴。左にはハワイ王国創立者のカメハメハ大王、右には自由の女神がハワイ州の旗を手にしています。ハワイアンの祖先としても考えられるタロの葉、バナナの葉、シダもデザインされ、その下にはハワイ州のモットーである「Ua Mau Ke Ea O Ka Aina Ika Pono」(大地の生命は正義によって守られる)が大きく刻まれています。
 
ハワイ州のモットー、コート・オブ・アーム


The Hawaii State Capitol
415 S. Beretania St.
Honolulu HI  96813
電話:808-586-0178(英語のみ)
サイト:https://www.capitol.hawaii.gov(英語のみ)
時間:7時から18時(土日祝日は休館)
セルフガイドツアー:Room415で館内の案内パンフレットをもらい見学できる
 
補足事項

https://www.capitol.hawaii.gov

  • 藤原 小百合 アン
    Anne Sayuri Fujiwara
    担当講師

    【インタビュー動画あり】
    アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。メリーランド大学学士号取得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。ハワイ、日本でのレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。15年以上、パシフィックリゾートの「キルトパラダイス」(http://www.holoholo.world/kawaraban/category/quilt/)を連載中。 日本でハワイアンキルト本を数冊出版。2006年よりホノルルフェスティバルにおける伝統的ハワイアンキルト展を毎年開催。2013年よりイオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを始め、現在ハワイ在住31年目。

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